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9話/12話

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「さて、今日も夜遊びに行きますか」

 気軽に外へ出れないのは、ちょっとだけ不便。
 その代わり、夜になるとイケオジの姿で辺境の街をふらついていた。さすがに療養中(という設定の)聖女がイケオジになって夜中徘徊しているとは誰にも思うまい。

 いっそのこと勇者のように、この姿で女を買って男の姿を楽しんでみても良いかもしれない。

「なーんてね。同性には興味ないし、こうして酒場でチビチビとお酒でも呑んでいる方が性に合うのよね」

 こうして夜の街で独り寂しくお酒を飲んでいる方が気楽でいい。
 誰にも迷惑を掛けないし、誰も私のことを知らないし。

 だけどそんな私の平穏な生活は、ある男との出逢いによって終わりを迎えることになって――。


 §

「はぁ……ウォーレスと気まずくなっちゃった」

 ウォーレスとケンカした次の日の朝。
 余計なことを言わなきゃ良かったなぁと、私は客のいない懺悔室で独り反省会をしていた。

 いっそこの時間からお酒でも呑みに行きたいくらいの憂鬱さだ。でももし彼と顔を合わせてしまったら。正直、何を言ったら良いか分からない。

「いや、謝るべきなんだってのは分かるんだけど……私のバカ、バカ、バカ……」

 時間が解決してくれるかしら。いや、そんなわけがない。このまま何も言わなければきっと、疎遠になってしまうだろう。

 ……だけどそれは嫌だ。
 私に残された、唯一の楽しみだったのだ。この地で骨を埋めても良いと思えるぐらいに、彼と過ごす酒場でのひと時が気に入っていた。


「私、もしかして彼のことが……」

 勇者にさえ抱かなかった感情の種が、心に生まれるのを自覚する。

 でも怖い。
 それを認めてしまったら、私はもう後戻りできなくなってしまいそうだから。


「それに今の私、ケンカ中だし」

 嫌われたくない。
 仲直りがしたい。
 ならば私がまず行動に移さなければ始まらない。だけど踏ん切りがつかないのだ。

 そんなことをウダウダと考えていると、なんだか教会の中が騒がしくなってきた。


「誰か! 教会に治療ができる人はいないか!」
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