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4話/12話

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「え?」
「魔王を討伐し、そのあと行方不明になった聖女様の姿絵。……彼女は、俺の憧れの人なんです」

 思わず、時が止まる。
 無言で固まる私と、真剣な眼差しを向ける彼で視線が交わったままで。

「可憐なお姿にもかかわらず、自分の身を盾にしてまで民を守る心優しい女性。……俺はそんな聖女様に、心を奪われてしまったんです」

 彼は私の目を見つめたまま、照れくさそうに、それでいて心底嬉しそうに語り続ける。

「でもさ、それはあくまで憧れだろう? 子供が勇者に憧れるみたいな」
「いや。私が適齢期を過ぎても伴侶を作らない理由のひとつは、彼女に惚れているからというのも大きいんです」
「……そ、そうなのか」

 あまりの衝撃に言葉が出てこない。

 まさかウォーレスがそんなことを考えていたなんて、思いもしなかったから。


「はぁ、レイが羨ましいですよ。教会と繋がりがあるんだし、聖女様と実際にお会いしたこともあるんじゃないんですか?」
「え? い、いや会ったことは……ないかな?」
「そうですか。では中々姿を見ることはできないと。やはり姿絵を買っておいて良かった。ほら、見てください。小さい姿絵をロケットに入れてもらったんです」

 そう言って彼は胸に掛けていたネックレスを外し、ロケットペンダントを私に向けて開いた。

「どうだ、可憐でしょう? お姿は初めて見ましたが、ほとんど俺の想像通りです」
「う、うーん」
「お淑やかで、穢れを一切知らないような美しい黒の髪と瞳。それでいて天使の様な白い肌……間違いない、神が彼女を遣わせたんでしょうね……!」

 そこには彼の言ったとおり、長い髪をした少女の絵が描かれていた。

 でもこれは……だいぶ美化されていると思う。聖女と会ったことが無いって彼には言ってしまったけれど、実際は何度も顔を見たことがあるし。性格だって、誰よりも理解しているかもしれない。


「どうしたんですか、レイ。なんだか微妙な反応ですね」
「ウォーレス、あまり彼女に憧れを抱くのは……」
「む、それはいったいどうしてですか?」
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