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3話/12話

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「ウォーレスの副官相棒になるって話なら、私には無理だと言ったじゃないか」
「そんなに教会警備の仕事が大事なのかい? でも昼間にキミの姿を見た者は居ないって聞くけどなぁ」
「うっ、それは……」

 痛いところを突かれ、気まずくなった私は空のコップに口を付けて誤魔化した。

 そんなやり取りをしているうちに、今度は周りの客が辺境伯を讃える歌を歌い始めた。赤ら顔のオッサン連中が肩を組んでの大合唱だ。
 いい加減止めてこようかと席を立とうとすると、ウォーレスは人懐っこい笑みを浮かべながら人差し指を唇に添えた。


「ウォーレスは、その顔を普段から民に見せてあげたらどう?」
「……本当はそれができたら良いんですけどね。怖がられていた方が何かと便利なんで。特に物騒なこの辺境では」
「それで溜めた気苦労を、酒場で発散させているわけか」
「そういうことです。だから付き合ってくれるキミのような人は貴重なんですよ」

 彼はそう言って、私のコップに酒を継ぎ足してくれた。

 私はそれをぐいっと一気に飲み干し、まだ中身の入った彼のコップにも注ぎ返す。

「じゃぁ今度は私が注ぐよ」
「ふふ、では遠慮なく」

 それからは二人で延々と酒を飲み交わし続けていた。

 ウォーレスは酔っぱらうと饒舌になり、普段は見せないような本性をさらけ出していく。そんな彼をさかなにしながら飲む酒は、とても美味しいものだった。


「それでその商人がですね、『この品物は金貨一枚でも安すぎる!』ってわめくんですよ。王都では入手困難で、このチャンスを逃せば二年先になると」
「まさかそれで購入したのか?」
「当然です。俺は欲しいものは必ず手に入れる。その商人が持っていた商品すべてを、言い値で買い取ってやりました」

 ま、税金もしっかり引いてやったけどね。と得意気な顔で続けるウォーレス。

 私も酔いが再び回ってきたのか、普段よりも砕けた口調で会話を交わしていた。


「しかしどんな商品だったんだ? キミがそこまで執着するなんて珍しいじゃないか」

 私がそう尋ねると、彼は朗らかな笑顔から一転、真面目な顔になる。
 彼のこんな表情は初めて見た。表で見せる凛々しい顔つきともどこか違う。それはまるで恋する乙女のようで……ってそんなわけないか。

 私は頭を振って変な考えを追い払うと、彼の話に耳を傾ける。彼は酒で口を潤すと、ゆっくりと口を開いた。

「……聖女の姿絵ですよ」
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