奴隷にされた美人聖騎士を助けたら、なぜか落ちこぼれ魔術師から賢者(笑)に成り上がっちゃいました~俺の奇声はルール無用のチート呪文~

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第7話 うっかり魔術師

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「しかし、ガイ殿。いったいどうやってヒキョンを捕らえるのだ?」

 ひびの入ったカップに口を付けながら、エステルは俺に訊ねてきた。

 共同戦線を張ることになった俺たちは今、我が家の庭(廃墟)で優雅にお茶会中をしていた。
 エステルが飲んでいるお茶は、俺が雑草で煮出した特製の雑草茶である。彼女は「慣れてくると意外と美味い」と言って、もう何杯もお代わりしている。……何年も飲んでいる俺は、未だにクソ不味いとしか思えないのだが。


「あぁ、エステルの武器か? それなら任せておけ」

 彼女はヒキョンに大事な剣を奪われちまった。魔術師が杖を奪われるのと同じように、剣士が剣を奪われちゃ戦えないもんな。

 俺は一度立ち上がると、腰元に差してあった深紅の宝剣を抜いた。するとエステルの目が大きく見開いていく。


「そ、その剣はもしや、ガイ殿の得物なのか!?」
「まぁな。これは初級ダンジョンでドラゴンを倒した時にゲットしたんだ。燃える炎みたいで綺麗だろ? これを貸してやるよ」
「ダンジョンで!? いや、そんなまさか……」

 エステルはゴクリと唾を呑み込んだ後、恐る恐るといった感じで俺の顔を見上げた。


「ガイ殿、貴殿は自身でそのドラゴンを倒したのか……?」
「え? そうだけど……ファイアドラゴンぐらい、聖騎士のエステルなら楽勝で倒せるだろ!?」
「……ッ!? い、いや。たしかにファイアドラゴンなら素手でも倒せるが……」

 信じられないものを見るような目つきが俺に向けられた。いや、あの恐ろしいドラゴンを素手で倒せるっていうアンタの方が信じられないんだけど。

 んー、まぁたしかに? 俺自身も、どうしてファイアドラゴンが爆散したのかは分からない。俺が使ったのは、初級魔法のグロウシャワーだったし。


「ガイ殿……その剣を、私に良く見せてくれないだろうか」
「え? あ、あぁ。別にいいけど……ほら」

 剣の扱いはサッパリだが、使い心地を試したいだろうしな。俺はクルリと持ち手を変えると、エステルに手渡した。


「……この燃えるような輝き。やはり、間違いない」

 彼女はそれをマジマジと見つめた後。まるで宝石にでも触れるかのように、指先で刀身を優しくなぞった。

「この武器は『緋炎ひえん』と呼ばれる宝剣だ。そしてガイ殿が倒したと言うドラゴンはおそらく、ただのファイアドラゴンではない。上級ダンジョンの奥地に棲む、ブレイズドラゴンだ」
「へぇー、そうなのか。上級ダンジョンのドラゴンが……って、えぇえぇえっ!?」

 俺は思わず飛び上がった。上級ダンジョンといえば、A級以上の冒険者だけが入れる高難度ダンジョンだ。そんなところに棲んでいるモンスターを、俺が倒しただって!?


「なんてこった。俺にそんな力が隠されていたのか……!?」

 そう思うと手が震えてくる。いわゆる武者震いってやつだ。何がキッカケかは分からないが、俺の初級魔法は随分と進化しちまったらしい。

 くうっ、長年F級で努力してきた甲斐があったぜ……。


「ははは。見掛けで私を騙すなんて、ガイ殿も人が悪いな。ブレイズドラゴンを単身で倒せるほどの冒険者となれば、ヒキョンなんぞ敵にもならないだろうよ」
「そ、そうか? たしかにあのドラゴンに比べりゃ、ヒキョンなんて雑魚だよな!」
「いやはや、心配は杞憂であったな。聖騎士と魔術師がタッグを組めば、ヒキョンも打ち倒せるに違いない!!」

 すっかり笑顔になったエステルは、楽しそうに俺の肩をバシバシと叩く。


「ははは! なに、俺に任せておけば心配は無用だ! はははは!!」

 こうして、俺とエステルはヒキョンの元へ意気揚々と殴り込みに行くことになったのだった。

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