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第4話 自宅(廃墟)にて
しおりを挟む「ん、んんっ……」
「おっ、気がついたみたいだな」
スラム街にある自宅のリビング(野ざらし)で寛いでいると、床に寝かせていた金髪の美人聖騎士が目を覚ました。
「なんだここは……ダンジョンか?」
「たしかにボロボロに荒れてはいるが、ここはれっきとした俺の家だ」
彼女はぼんやりとした表情で辺りを見回しながら、随分と失礼なことを呟いた。思いっきり殴られたせいか、まだ頭が覚醒していないらしい。
というか人の家をダンジョンはないだろ!? ここに何年も住んでいる人だっているんだぞ!
「私は助かったのか……うっ!?」
「あぁ、あんまり無理しない方が良いぞ? まだ痛むだろう」
身体を起き上がらせると、苦しそうなうめき声を上げた。
さっき身体の傷を確認した時、いくつかアザができていたからな。俺が助ける前に相当痛めつけられていたようだ。
「うぅ、そうだな……って、私の身体に貼ってあるこれは何だ……?」
「それか? 俺は回復魔法が使えないから、微弱な回復作用のある草を貼っといた。ま、気休め程度にはなるだろ」
申し訳ないが、落ちこぼれな俺は回復魔法を覚えていない。なので自然治癒に任せるしかなかった。
(あ、しまった。勝手に鎧を脱がしちまったことを気にしていたのか?)
自分がインナー姿であることに気付いたのか、騎士様は自分の胸元を手で隠している。まぁ大きすぎて、手じゃ隠しきれていないんだけどな……っと失礼。ジロジロ見ていたら睨まれちまった。
「ありがとう。貴殿は私を見捨てずに助けてくれたのだな」
「気にするな。俺だってあのまま見過ごせなかっただけだし」
「ふふ、貴殿は見た目の割に紳士なのだな。それに免じて、私の裸を見たことは許そう」
「……そうしてくれると助かるよ」
俺は苦笑しつつ、彼女に背を向けた。一瞬、殺意の篭もった目をされたからだ。乙女の柔肌を無断で見たのは、かなりマズかったらしい。
「そういえばまだ名乗っていなかったな。私はエステル。王都で太陽の聖騎士をやっている」
「俺はガイだ。この街で冒険者をやっている」
スッと右手が出され、俺は握り返す。その握られた手は、女性のモノとは思えないほど強かった。皮も厚く、傷だらけ。俺だって仮にも冒険者だ。戦う者の手は見てすぐに分かる。彼女はホンモノだ。
挨拶を交わしたところで、エステルと名乗った彼女は不思議そうに首を傾げた。
「ところで、ガイ殿はどうやってあの場を切り抜けたのだ? 私はヒキョンに捕まり、連れていかれるところだった気がするのだが」
「あー、そのことか」
たしかに気を失って目覚めたらヒキョンたちはおらず、スラムで目覚めたら混乱もするよな。
俺は頭をポリポリと掻きながら、あの時の顛末を話すことにした。
◆
「なっ……貴殿が!? そ、それは本当なのか!?」
「ああ、金も俺が立て替えておいた。だからもう大丈夫だと思うぜ」
俺がそう言うと、彼女は目を大きく見開いた。おぉ、美人はビックリした顔も綺麗なんだな。
「まぁ、こんなスラムに住んでいるような人間だもんな。50万もの大金をポンっと出したなんて言われても、普通は信じられないか」
「い、いや……信じないわけじゃない。ただ驚いてしまっただけだ」
エステルは驚きながらも「助かった、ありがとう」と頭を下げた。
ふふ、なんだか美人に礼を言われるって気分が良いぜ。
「まぁ俺も一筋縄じゃいかなかったけどな! アイツら、闇ギルドの連中みたいに恐ろしい奴だったし……」
「な、なぜ奴が闇ギルドと関係があることを知っているのだ!?」
「――え?」
「ん? いや、アイツは闇ギルドとも裏で取引をしているらしくてな……ガイ殿はその事を言っているのではなかったのか?」
うわぁ、マジで関係があったのかよ……あとで暗殺者送り込まれたりしないよな? 助けたのは早まったかもしれねぇ……。
今さらなことを考えていると、エステルは腕を組んで難しい顔で黙り込んでしまった。
「助けた礼のことなら心配はいらないぜ。あのお金はたまたま手に入れたようなモンだしな」
大金を失っちまったのは残念だが、命には代えられない。生きている限り、金はまた稼げばいいしな。
「あぁいや、そうじゃないんだ」
「違うのか?」
「今回の件に関しては必ず礼をさせてもらうが……実のところ、私は他にも問題を抱えていてな」
問題? 一体なんだろう。
俺が首を傾げていると、エステルは少し気まずそうに口を開いた。
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