擬態するカナリア ~担当になった男子高校生の患者が、女を絶対にイかせる系の人気イケボ配信者でした~

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前編:啼くのはだぁれ? (主人公攻め)

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「私の子の担当……ですか?」

 ここは戦場と化した午後のナースステーション。
 今日のチームリーダーの剛田ごうだ先輩から、個室に入院している患者さんの担当になるように指示が飛んできた。

「そうなのよ~。ゴメンね、本当は私が担当だったんだけど……八神やがみさん、お願いできないかしら?」

 後輩である私に、拝むように手を合わせて「どうか~」とお願いをしてくる剛田先輩。
 その日のシフトで部屋の担当が変わることなんてよくあるし、別にいいんだけど……こうあらたまって先輩が言ってくるってことは、何か特別な理由があるのかなぁ?

「いいですけど、これからですか? ずいぶんと急ですね?」
「実は患者さんのご家族からクレームがきちゃったのよぉ。『ちゃんとした看護師を寄越せ』って」
「あ、あははは……」

 私は頬に手を当ててクネクネと困り顔をしている筋骨隆々の先輩を見上げる。
 まだお昼を過ぎたばっかりだというのに、ジョリジョリとヒゲの擦れる音が聞こえてきた。

 見た目はゴリゴリマッチョなイケメンなのに、中身はガッツリ(?)乙女な剛田パイセン。
 最初は普通のお兄さんだったのに、殆ど女性の職場に居るうちに目覚めてしまったという……なんというか、まぁ色々と濃ゆい人だ。

 心の中でそういうとこやぞ!と思うが、そんなことはもちろん言えない。普段はキビキビと仕事をするし、患者さんの前ではオネェを出さない。
 私たち若手を師長の理不尽な怒りから守ってくれる尊敬する先輩なのだ……。だから少なくとも私は好き。たぶんクレームも彼の外面の一部しか見てなかったのだろうね。


「分かりました。ええっと、たしか五○一号室の九条くじょうさんですよね」
「そうそう! それじゃあ恋枝りえちゃん。悪いけど、彼の心のケアはよろしくね~!」

 去り際に若い男の子だから扱いに気を付けて~とさり気なく捨て台詞を吐いていった先輩。
「心のケア!?」と返す間もなく、ルンルン気分で手をフリフリしながら自分の持ち場へと戻っていってしまった。浮かれすぎて仕事中なのに私のことを下の名前で呼んでるし。

「心のケアって……面倒だって言ってるようなものじゃないですかぁ……」




 五階フロアの一番角にある、個室の五○一号室。
 入り口には『九条 満月みつき』というネームプレートが嵌まっている。

 この子は右手を骨折した、高校三年生の男の子だ。
 先輩も言っていたけど、多感な時期だから子ども扱いをしないように気を付けよう。
 ……よし。気合を入れて、ノックをトントントン。


「失礼しまーす。昼のバイタル(血圧や脈)チェックをさせてくださいね~」

 そういって堂々と入室する。
 ここは大部屋ほどでは無いけれど、個室にしてはかなり広いVIP用の部屋だ。

 たしかカルテにはお父さんがどこかの大学で教授をやっていて、中々にお金持ちらしい。
 うーん、我が儘なボンボンじゃないことを祈ろう。


 だけど、その肝心の満月君がどこにも居ない。
 ソファーの上にも、ベッドサイドの椅子にも見当たらない。シャワー室にもトイレにも居ないみたいだ。

「……まぁこの布団の膨らみを見れば、どこに居るかなんて想像がつくんだけど。いったいこの子は何をしているのかしら?」


 私の視線の先には、ベッドの上でもっこりと膨らんだ掛布団が見える。
 もぞもぞと動いているし、そこに誰かが居るのは確実だろう。

 ははーん? もしかしたら満月君、ベッドの中で隠れてオナニーでもしちゃっていたのかな?
 そりゃそっか。十八歳じゃ、一番溜まる時期だもんね。


 なーんて、お姉さんぶってはいるけれど。自分は性に関して、経験が多いわけではない。

 大学時代に友達に誘われて行った合コンで知り合った男と、飲みの後で行ったラブホテル抱かれたっきり。向こうはかなり自信満々だったから任せたのに、自分本位であんまり気持ち良くなかった。

 結局その後も付き合うなんてこともなく、良い人もいない。愛なんて当然無かったし、処女なんて重たいものを学生のうちにさっさと捨てたかっただけなのかもしれない。
 今は憧れていた看護師になれたんだし、仕事を頑張ろうって思っているところ。


 ……真っ赤な嘘です、ごめんなさい。
 実際はメチャクチャ男が欲しいです、はい。
 社会人になったばかりの頃なんかは、看護師の先輩が色んな街コンやありとあらゆるコネを使って男を漁りまくっているのを冷めた目でみていたけど……今となってはその気持ちもめっちゃ分かる。

 今の私は、メチャクチャ欲求不満なのだ。
 看護師って、ストレスが半端ないんだよ?
 私はタバコは吸わないけれど、禁煙家だった同期はみんなヘビースモーカーになったし、酒もめっちゃ飲む。
 要するに、なにかストレスのはけ口が欲しいのだ。

 私の仕事のストレスの発散と言えば、三食のご飯と、晩酌をしながら動画を観ることぐらい。休みが不定期過ぎて一緒に遊べる友達も少ないし、彼氏なんてもってのほか。
 あー、今すぐにでもイケメンの彼氏欲しい。


 というわけで、目の前で男の子が精を吐き出していると思うと、ちょっと悪戯心が出ちやうよね。本当はいけない事なんだとは分かってはいるけれど……うん。ノックも挨拶もしたのに返事が無いのが悪い。

 それに、もし具合が悪くなっていたとか、何か異変があっては困るのだ。
 だからこれは正当な業務の内……だよね?


「九条さん~どうしたんですかぁ~? 布団、めくりますねぇ~?」

 ニヤニヤしながら山になった掛布団を一気にめくり上げる。
 そこで私が見たものとは――




 ◆


「はい、血圧と脈を測りますねぇ~」

 私はここへ来た当初の目的である、満月君のバイタルを測っていた。

 満月君の骨折していない方の左腕に血圧計を巻いて、その隙間に聴診器を入れる。こうして脈を測るんだけど……異常なほどに脈が早い。


 いや、こうなってしまったのは私が悪いんだけどさ。当の本人である彼は目の前でベッドの背もたれに寄りかかりながら、涙目でそっぽを見ている。

 ちょっと眺めの黒髪で、私よりも長い睫毛をしている男の子。目もちょっとキツい印象はあるけれど、態度は大人しそうであまり人とのコミュニケーションが得意そうには見えない。

 ちなみに右手は包帯と挿し木の固定具でグルグル巻きになっている。だけど、ちょっと包帯がほつれ気味になっていた。
 バイタルの確認が終わらせて、包帯を巻き直してあげた。その間も相変わらず、私の方へは顔を向けてくれない。


 この少年、九条 満月くんは先ほど私がことを相当恥ずかしがっているようだ。

 厚い布団をかぶり、イヤホンをつけてスマホの動画を観ていたせいで、ノックや声掛けに気が付かなかったらしい。だけど私だって仕事があるし、少年のオナニーぐらいでいちいち目くじらを立てたりなんてしないよ。


「あの……お姉さん」
「ん? なにかな、満月君」

 おっといけない。つい彼の仕草が可愛くて、下の名前で呼んじゃった。
 だって、お姉さんとか言ってくれる患者さんなんて滅多にいないし、そんな潤んだ眼で見つめられたら私だって母性本能をくすぐられちゃうよ。

「僕、パソコンが使いたいんです。どうしても、今夜までに」
「うーん、パソコンかぁ。スマホじゃダメなの?」

 コクン、と頷く満月君。
 どうやらスマホでは出来ないことをしたいらしい。
 なんだろう、秘蔵のエッチな画像でも入っているのかな?
 だけど、病院でパソコンは貸し出してなんていないし、ご家族に持って来てもらうしかない。

「そうだなぁ、ご両親に許可を貰ったらね。今度お見舞いに来た時にお願いしてみたら?」
「無理だよ! お父さんもお母さんも、僕たちのことなんて放ったらかしでお見舞いなんて入院した時にしか来なかった。妹だって、殆ど僕が面倒見たりしてたんだよ? 子どもを勝手に産んでおいて……親なんて勝手過ぎる!」
「……そんなことないよ。きっと、満月君たちのために一生懸命に働いてくれているんだから」
「ふん! どうせ看護師さんには分からないよ!! ほら、もう用事は済んだでしょ? 終わったならさっさと出てってよ!」


 もう話なんて聞きたくない、とばかりに満月君はまた布団をかぶってしまった。
 今度は、すすり泣くような声も聞こえる。
 これ以上、他人である私が言っても逆効果だろう。

 ……でも、私には分かるんだけどなぁ。
 彼の快適な入院生活の為にも、なにか手助けできることはないかなぁと思いながら、私は大人しく個室から出て行くのであった。




 ◆


 その後、私は夕方の検温のために再び満月君の病室へと訪れていた。

「満月君……ちょっと、布団から出てきて話をしよう?」

 やっぱりさっきと同じように布団の中に引き篭もってしまっていた。
 相当、ご家族の事がこたえているらしい。
 きっと、入院生活で一人だという事も余計に寂しさを助長させているんだろうね。


 だけど、私だって引き下がるわけにはいかない。
 それに今回は強力な助っ人を連れてきたのだから。


「お兄ちゃん……右手を怪我しているのに、布団の中で篭もってたら良くならないよ……?」
「カエデ? お前、どうしてここに……!?」

 そう、満月君の妹であるカエデちゃんを召喚……もとい、お見舞いに来てもらったのだ。

「あの後ね、満月君のお母さんから電話が来たんだよ。……あのね、満月君。今はまだ分からないかもしれないけど、働くってすっごい大変なの。その忙しい時間の合間に、自分の休みたい大事な時間を削って、満月君を心配して電話を掛けてきてくれたんだよ?」
「そんな……お母さんが……」

 目を真ん丸にして驚く満月君。
 ふだん家で家族とどうやって接しているかは分からないけれど、話してみる限りお母さんはちゃんと満月君を愛していた。

 私もお母さんもシングルマザーで仕事詰めだったけど、ちゃんと私のことを見ていてくれていた。だから、それを満月君にも早く知ってもらいたかった。

「それでね、さっきのことを相談したの。そうしたら、妹さんが持って来てくれるように連絡しておきますからって。満月君に寂しい思いさせているから、出来ることはって……やっぱりみんな、満月君のこと心配してるんだよ」
「そうだよ、お兄ちゃん! お父さんだって家に帰ってきたら落ち着かないし、授業があるから休めないのに無理やり有給取ろうとしたりして、お母さんと一緒に引き留めるの大変だったんだから!」

 カエデちゃんは必死に家族がどれだけ心配していたのかを伝えようとしてくれている。満月君とは違って、ちゃんとこの子は分かっていたみたいだ。

 でもこうして実の妹の訴えによって真実を知った満月君は、ようやく親の愛情を理解してくれたようだ。

「カエデ……ごめん、お兄ちゃんが間違ってたよ。それを教えてくれて、ありがとう」
「お兄ちゃん……!!」

 うんうん、美しきかな家族愛。
 カエデちゃんは満月君に抱き着いて、頭を優しく撫でて貰っていた。
 これで、めでたしめでたしかな?

 ……と思ったんだけど。
 抱き着いたまま大人しく頭を撫でられていたカエデちゃんが、不意に顔を上げて満月君にこう言った。

「お兄ちゃん、くさい……」
「「え……?」」



 ◆


「ほら~、いつまでも落ち込んでないで、ちゃっちゃと洗っちゃおうよ~」
「ううぅ……だ、だって……こんな……」

 実の妹であるカエデちゃんに思いっきり臭いと言われてしまった満月君。
 たしかにお風呂の許可は出ていなかったので、入院してからずっと簡単に身体を拭いていただけだった。

 ドクターから入浴の許可を貰えたので、カエデちゃんを見送った後、こうして私が個室のシャワー室で入浴補助に入ることになったのだ。


 だけど、満月君は相当恥ずかしがって中々正直に洗わせてくれない。かと言って臭いままなのも嫌なのか、十分ほどかけてやっと恐る恐る私に身体を預けるようになった。


「おおっ? 満月君、意外にしっかりした身体つきをしているんだね?」

 正面からちゃんと彼の裸を見てみると、高校生の割にガッチリとした筋肉がついている。部活はやっていないとかいっていたけど、これは相当鍛えているはず。

「うん。コミュ障を直すには鍛えろって、カエデが。だから朝とかトレーニングしていたんだけど……それで事故で……」

 あ~、なるほどねぇ。
 満月君はカエデちゃんの面倒を見ていたって言っていたけど、これは結構彼女にプロデュースされていたな?
 お兄ちゃんがオクテで友達や彼女が居ないのを心配していたのかもしれない。


 ふふふ、なら私もちょっとその苦手意識を払拭して差し上げようじゃない。

「ほら、隠してたら洗えないよ?」
「だ、だって……恋枝お姉さん……ああっ」

 ふはは、問答無用じゃ。
 左手で隠していたおちんちんを御開帳。
 私はそのまま、持っていたスポンジで優しく洗ってあげる。

 ちなみに彼は仲直りした後、私のことを名前付きでお姉さんと呼んでくれるようになった。心を開いたら従順に懐いてくれる仔犬みたいで、とても可愛い。


 もちろん、私は直接では無く専用の手袋をしている。
 だけど自分の手とは違う感触に、彼のおちんちんはピクピクと可愛い反応をしてくれていた。普段私たち看護師がやる入浴補助はご老人ばかりなので何とも思っていなかったけど、若い子だと悪戯心がどうしても芽生えてしまう。

 それに、もし弟が居たらこんな感じに一緒にお風呂に入ったりしていたのかな、なんて思ったりなんかして。

 そう考えると、このおちんちんも可愛く……とか思っていたら、メチャクチャでかくなった。
 私が処女を散らすことになったあの男は、行為の前に自分のアレは平均より大きいとか自慢げに言っていた気がするけど、これはそんなちゃちなもんじゃない。

 なんていうかもう、すごく洗い甲斐があるのだ。
 まるで三本目の足を洗うような感覚で、自分にはない器官を観察するように擦り上げる。彼の敏感な場所が触れる度に、カチカチになった肉棒がビクビクと反応する。

 それが楽しくて、他の部分よりも丹念にねちっこくやってしまった。


「こ、恋枝お姉さん……も、もう……僕っ!!」
「え? あっ……!!」


 ――ドピュッ!!


「うああっ……はあっ……!!」

 相当溜まっていたのか、止め処なく吐き出される白濁液。
 私の手や腕にも飛び散ってしまった。シャワー室の壁にも、べったりと。

 男の人の射精なんて初めてみたけど、本当に爆発するみたいで私の胸はドキドキしてしまっていた。
 そして当の本人は、私の腕にもたれ掛かりながら荒い息を吐きながら私に抗議の目線を送ってきている。


「ひ、ひどいよ恋枝お姉さん……」
「ご、ごめんっ」

 でも……切なそうに果ててしまった満月君。
 あの表情はとっても可愛かった。
 おちんちんから手を離すのが、なんとなく惜しくなるくらいに。

「女の人としたことないのに……そういうのは好きな人に……!!」
「ふふふ、別に私、満月君のことは嫌いじゃないよ?」

 だって、可愛いし。
 弟か、それに近い後輩みたいなんだよね。
 仕事を越えて面倒を見てあげたいくらいに、私はこの少年の事が好きになっていた。

 だから謝罪と、からかいついでに唇にフレンチな方のキスをしてあげる。


 ――ちゅっ。


「えっ……ええっ!?」


 フリーズ状態だった満月君。
 ふふふ、やっぱりキスも初めてだったかな?
 よいよい、良きにはからうがよい。

「これは私からのお詫びのしるし。あ、あとさっき言っていたパソコンの件、アレもいいよ」
「ホントっ!? やったぁあ!!!!」

 と思ったら、パソコンというワードを出した瞬間に飛び上がるほどに喜び出した。
 ちぇっ、なんだよもう。私のキスよりもパソコンの方が嬉しいっていうの?

 ちなみに満月君は、パソコンで配信がしたかったらしい。最近の高校生は動画配信サイトで生放送もするんだね~。
 私もよく家では有名配信者の放送を視聴していたし、満月君がどんな配信をするのか楽しみだ。


「夜、私が仕事休憩の時に配信させてあげるから。だからそれまで、ちゃんと良い子にして待っていてね?」
「うれしい!! でも、本当に良いの!?」
「うん。でも、三十分くらいだけだよ?」
「分かった! ありがとう、お姉ちゃん!」

 お姉ちゃん!? お姉ちゃん……うふふっ、なんて素敵な響きなの……。
 年下の男の子魅力にメロメロになっちゃいそう。
 いや、もうこれはなっているわね。

「じゃあまた他の仕事終わらせて来るからね! たぶん十時ごろなら行けると思う!」
「うん、待ってるから……ちゃんと来てね!!」

 濡れた髪をした可愛い顔で、私を見つめる仔犬系イケメン。思わず今度は本気のキスをしたくなる衝動を抑えて、私たちはお風呂から上がった。

 すっかりご機嫌になった彼は、射精させられてしまったことなど忘れてしまったかのようだ。私もそんな満月君を見て、この後の仕事も頑張ろうと思えた。


 ――この時、私は思い出しておくべきだった。
 夜のあの時間帯にやっている配信、その中にある女性に人気のジャンル。

 そのジャンルで有名な配信者にミツキ、という名前があったということを。





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