世界最強アンデッドだけど引き篭もりたい!なのに聖女が俺を昇天させようと狙ってくるんだが!?

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第43話 サリアと再会した話

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 俺とヴァニラがミカを追い掛けていくと、人々が行き交う大通りで言い合いをする2人組が目に入った。


「ご、ごめんなさい。誰かとの見間違いでは……?」

 片方は自分とは姉妹であると主張していたミカ。
 そしてもうひとりは困惑した表情を浮かべる、ミカによく似た容姿の女だった。


「――これはいったい、どういうことなんだ?」

 せっかくミカが久しぶりの再会を喜んでいるというのに、姉であるサリアの反応はあまりにも素っ気ない。これじゃあまるで、赤の他人のような態度だ。

 もしかして、本当に他人の空似なのか……?


「そ、そんなはずはないですよ!! 何故か口調はだいぶ丁寧に変わっていますが、この人は間違いなく私のお姉ちゃんです!」
わたくしにそう言われましても……」

 ミカとは対照的に、彼女は本当に覚えが無いみたいだ。
 彼女はどこかへ行く途中だったのだろう。荷物の入った革袋を背負った、典型的な旅人の恰好をしていた。その道中でミカに引き止められたものだから、眉を下げてちょっと迷惑そうな表情をしている。

 そんな2人の様子は、人通りが多いことも相まってかなり目立っていた。
 可哀想なモノを見るような目をミカに向けたり、クスクスと笑ったりする通行人がチラホラと現れている。


「うーん。俺からすれば姉妹にしか見えないんだがなぁ。顔立ちなんかもそっくりだぜ?」
「わたしもそう思う。アレは絶対にサリア」
「でもなぁ……当の本人がこうも否定しているとなると……」

 俺の隣りに居るヴァニラも、あの女が魔天のサリアで間違いないと言う。
 それは同じ国選としてお互いを認め合った仲ゆえなのか。冒険者でもない俺にはその理由なんてちっとも分からないが、ヴァニラにもなにか確信めいたものがあるみたいだ。

 ミカもミカで、ここで諦めるわけにはいかない。周りの目なんて気にもせず、必死に説得を続けている。


「そ、そうだ……その耳にしている赤いピアス! ほら、私とお揃いじゃないですか! そのピアスがまぎれも無い証拠ですよっ!」
「え……」

 ミカは「我が意を得たり」とばかりに喜色満面になると、サリア似の人物の耳元を指差した。

 あぁ、たしかに。
 ミカの言う通りだ。

 2人とも、右耳に同じ猫の意匠をしたピアスを身に付けている。猫の目の部分についている赤色の宝石だって同じものだ。


「それは私が初めてダンジョンを到達した報酬で、お姉ちゃんにプレゼントしたピアスなんです! お姉ちゃんの好きな赤眼猫ブラッドキャットの宝石をって私が選んで、それでっ……」
「たしかに、これはお気に入りのピアスですが……」

 否定しようのない証拠を前にしても、肝心のサリアには響かない。

 かえって気まずくなったのか、彼女は下を向いて黙り込んでしまった。


「大事な思い出のピアスなのに……貴女はちっとも記憶に……ないんですね……」

 ここまで言ってもかたくなに認めようとはしない。そんな姉を前に、ミカのセリフはどんどん尻すぼみになっていく。


「(これは……外野で見ていても心が苦しくなるな)」

 チラチラと覗いていた通行人たちも、さすがに居たたまれなくなったに違いない。さっと目を逸らして、この場からそそくさと去っていった。


「……貴女のお姉様じゃなくてごめんなさい。それにわたくし、教会にあるじを待たせているので……失礼します」

 しばらく沈黙の時間が流れていたが、サリアの方から先に言葉が出た。
 そのセリフこそ柔らかい言葉だったが……彼女のそれは、明確な拒絶だ。

 これ以上自分にかかわるのは止めて欲しい。つまりはそういうことなのだろう。

 サリア似の女性は俺達にぺこりと頭を下げると、人混みの中へと走り去っていってしまった。


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