34 / 57
第34話 金ぴか豆男と再び出逢った話
しおりを挟む「よう、ミカ。お前もこの新ダンジョンに挑むつもりなのか?」
そう言ってダンジョンの入り口に並ぶ俺たちに話し掛けてきたのは、以前ミカとレクションの街にある酒場で会った冒険者の男、ビーンだった。
奴は相変わらず金ぴかの装備を身に纏い、隣りには3人の美女を侍らせている。
いや、前とは女の顔ぶれが違うな。それに斧や剣といった装備をしていることから、彼女たちも冒険者なのだろう。佇まいからそれなりの腕を持っているのが分かる。……ビーンの影響なのか、防具が金色なのはだいぶ違和感があるが。
「えぇ。この日の為に準備も整えてきたのよ?」
「準備……ねぇ?」
自信満々に、ミカは自然な笑顔でそう答えた。奴の馬鹿にしきった態度なんて、まるで気にした様子もない。
対するビーンは彼女の大きく張った胸を舐めるように見た後、後ろに居た俺を冷めた目で流し見た。
まったく、すがすがしいほどのスルーっぷりである。コイツはミカ意外に興味はないんだろうか。
いや、キュプロに関しては興味深げに見ていたから、おそらく男に興味が無いんだろうな。……まぁ、俺に興味を持たれても困ってしまうが。
「ふん。相変わらず人を見るセンスは最悪だな」
コイツ、俺のことを舐めやがって!!
性懲りもなく、また眠らされたいのか……!?
「そんな事はないですよぉ? キュプロさんは天才的な研究者なだけでなく、ちゃんと戦闘面でもお強いですし」
「ほぉ? なぁ、眼鏡のお前。今からミカと二人で俺のチームに入らないか? 俺様ならその軟弱男よりも満足させてやれるぜ?」
「なっ!? てめぇいい加減に……」
「きひひっ。残念だが、ボクは強さにはあんまり興味が無いんだよねぇ~。キミの性器を解剖させてくれるっていうなら、ちょっとは考えてみてもいいよぉ?」
「「かっ、解剖!?」」
おっと、思わず俺とビーンの声が被っちまった。
とんでもないことを口走ったキュプロは腰元のポシェットからナイフを取り出し、舌なめずりをしながらニヤリと笑っている。
なんだろう。俺に言われたわけじゃないのに、メチャクチャ怖いぞこの女……!!
狂った研究者による、得体の知れない圧力に気圧されてしまったのだろう。屈強なモンスターにもビビらなさそうなビーンも顔が真っ青になり、ジリッと後退っていた。
「それにジャトレさんだって、すっごく強いんですよ? 夜の方だってあんなに……ねぇ、キュプロさん?」
「あぁ。ジャトレ君の黒くて大きいアレは、初心なボクを狂わせるかと思ったよ……」
「お、おい!?」
まるでビーンに見せつけるかのように、ミカとキュプロは俺の両サイドで腕を抱きしめ始める。大きさは違うものの、俺の両腕が二人の胸に包まれてふわふわな感触が伝わってきた。
って二人とも何を言ってるんだよ!?
夜のアレって、お前らが頼むからマッサージをしてやっただけだろうが!
黒いアレだって、キュプロが『闇魔法を纏った手はリラックス効果があるから是非に』とリクエストしただけであって、別にイヤラシイことなんて一切していないからな!?
「な、なんだと……!? ミカがこんな男に……!?」
「ねぇ、ジャトレさん。今夜もお願いしたいなぁ……」
「は? ダンジョンの中でか!? ……って言い方ぁ!!」
すっかり話に乗せられてしまい、墓穴を更に深く掘っていく俺。列の前後に居た他の冒険者たちも顔を赤くしながら、チラチラとこちらの様子を窺っている。
やめろお前ら……俺をそんな変態みたいな目で見るんじゃない……!!
「ねえ、ビーンさん? そろそろ私達も行きましょうよ~」
「え? あ、あぁ……」
唯一平常心で、こちらに興味も無さげだった金色の美女達。暇に耐えきれなくなったのか、ビーンを急かし始めた。
あぁ、いや助かったわ。
お陰で変な空気がようやく晴れたぜ。
「そ、そうだ。俺様だってあれから上級の冒険者の仲間入りしたんだぜ? それに教会専属のコイツらを借りることができた。どうだ、羨ましいだろう!?」
おぉー、上級になったのか。そりゃおめでとう。お祝いの拍手をしてやるぜ。
酒場で会った時は、中級ダンジョンを幾つも制覇したとか言っていたしな。
「教会専属の冒険者……ですか?」
「あぁ。なんでも最近、教会が大量の冒険者を引き入れたらしくってよ。高い金を払えばこうして貸し出してくれるっつーわけ。クククッ。これで新ダンジョンさえ踏破しちまえば、俺も国選への道がグッと近付くって寸法よ」
「教会が……いったい何故冒険者を……」
ビーンは美女たちの肩を抱きながら、自慢げに語っている。もはや国選になる気で満々みたいだな。
しかしミカはそれよりも教会の動向が気になるようだ。奴の話をまるで聞いていない。
「ま、まぁ。そういうこった。もう俺様に頼ろうとしたって遅いからな?」
「ふふっ。いいでしょう。こうなったらどちらが先に踏破するか競争ですよ、ビーン」
「はんっ。堕ちた国選なんざ、相手にすらならねぇよ。精々ポンコツ共と仲良く、冒険者ゴッコでもしているがいいさ」
ビーンは金の差し歯を剥き出しにしてミカに捨て台詞を吐く。
そして美女たちと共に冒険者たちの列を無視して割り込み、そのままダンジョンの中へと消えていってしまった。
うーん、これ以上なく分かりやすい男なんだけどなぁ。なんとなく小者臭が拭いきれない残念な奴だ。
うーん、何となくあぁいうタイプはこの後も妨害してきそうな予感がするなぁ。まぁその時は商売敵として対応させてもらうが。
「それじゃあ、私達はゆっくり順番を待ちますか!」
「あぁ。屋台で串焼きでも食べながらな」
本番はダンジョンに入ってからだ。
進化した俺たちの実力を存分に見せてやるぜ……!!
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる