世界最強アンデッドだけど引き篭もりたい!なのに聖女が俺を昇天させようと狙ってくるんだが!?

ぽんぽこ@書籍発売中!!

文字の大きさ
上 下
15 / 57

第15話 街の墓場ダンジョンを亡者と聖女が探索する話

しおりを挟む

 新しく出現したダンジョンの奥地を目指し、俺とミカは順調に探索を進めていた。

 ここで出現するのは主にノーマルゾンビ。そして偶に俺と同じ種族のリーダーゾンビが襲ってきている。


「うーん、何だか複雑な気分になってくるな」
「どうしてですか!! ジャトレさんは見ているだけなんだから、楽でいいでしょうっ!?」
「いや、それはそうなんだが。でも何て言うかさぁ……」

 そんなことを言っている間に新たな敵だ。
 前方の崩壊した教会の物陰から、ゾンビが3体現れた。

「――浄化魔法、聖光のカーテン!」
『ぐぐげげげっ……!!』
『ごげぇええっ』
『ひえっ!?』

 ミカの浄化魔法が天より降り注ぎ、ゾンビ達を一瞬で葬り去っていく。

 隣りに居るだけで、俺の肌までビリビリと焼けそうだ。
 それぐらい強大な魔力の奔流だった。


 ……うん。完全に出オチだわ。

 一瞬過ぎて、アイツらがどんなゾンビだったかも見えなかった。

 圧倒的な過剰戦力。
 まさにオーバーキルだ。


「これでも私、魔法の出力を下げているんですよ~?」
「え、アレでか?」
「雑魚相手に手加減なんてできません。ほどよく殺すなんて、そんな都合のいい魔法はこの世にないんですよぅ」

 うぅん、そういうもんなのか。
 なんだか強過ぎるってのも考え物だよなぁ。

 国選ともあろう実力者だと、一番弱い浄化魔法でもこうなってしまうとは。


「だから岩窟ダンジョンでやりたくないって言ったんです。これじゃあ、ただの弱い者いじめですよ!」

 宝玉付きの杖を振り回し、俺に抗議するミカ。
 いや、そういうのは危ないから止めて欲しいんだが。ついうっかり魔法を発動して、俺を浄化させてしまいそうだ。

 しかし……ふーむ、アレはそう言う理由だったのか。てっきり俺は、単に戦うのが面倒なだけかと思っていたぜ。


「でも俺は楽だからさ。是非ともこのまま、頑張って浄化しまくってくれ」
「もう! ジャトレさんの馬鹿!!」

 ミカは文句を言いつつも、再び現れたゾンビを光の柱で華麗に消し飛ばす。
 うんうん、聖女って本当に役に立つなぁ。

「ていうか何でジャトレさんの方には襲ってこないんですか! こんなの不公平ですよっ!」
「さぁ~? 仲間だと思われてるんじゃないか? ほら、俺アンデッドだし」

 ここへ来るまではあれだけダンジョン攻略に張り切っていた俺が、何故こんなにも気が抜けてしまっているのか。
 その理由がまさにコレだった。

 このダンジョンへと足を踏み入れてから、もう半日が経過している。
 しかしただの一度も、あのアンデッド共は俺に向かってこないのだ。
 どういうわけか、決まってミカの前にしか現れない。

「もしかしたら、アンデッドも美少女が好きなのかもな~」
「そんなわけ無いでしょう!? もう、誤魔化さないでくださいよぉ!」

 だから俺はまるで散歩をするかのように、ただ廃墟の中を歩いているだけ。
 所詮俺みたいな中途半端な剣士なんて要らなかったんだ。
 あまりに無双過ぎて、向こうサイドに加勢したくなっちまうぜ。


「そもそもさぁ。このゾンビ達って何も装備してなくないか? 情報屋が言ってたような武器を本当にドロップするのかね?」

 残念ながら、浄化されたゾンビの跡はちりすら残っていない。
 もしかしたら武器も持っていたのかもしれないが、こうも跡形もないと無意味である。


「知りませんよそんなこと! そもそもここはまだ旧ダンジョン区域なんですし、どうせロクなアイテムなんて出てこないんじゃないんですか?」

 やっぱり、そうかぁ。
 お宝は出てこないと分かり、俺のテンションは更に急降下していく。


「ちょっとジャトレさん!? こっちを手伝ってくださいよぉ~」

 だって金にならないことはしたくねーよ。
 あ~、早く新ダンジョンに着かないかな。


 ◇

「お、ここじゃないか? 旧ダンジョンの最深部」
「はぁ、やっと着いたぁ~。もう私、ヘトヘトですよぅ」

 あの後すぐに、街の中心部にあった広場へと着いた。
 ここには地下へ繋がる遺跡が生まれており、先へ行けるようになっている。

 相変わらず出現してくるアンデッドをミカの浄化魔法で消滅させながら探索を進めること、更に半日。
 ようやく俺たちは、最終フロアだったと思われる場所へと辿り着いた。


「祭壇も壊れてしまっていますね……」
「そうだな。きっとこの先が出来たことで、その役目も終えたんだろうな」

 フロアの中央には祭壇の名残りなのか、折れた神像と台座だけが放置されていた。
 もちろん触れてみても、報酬やボスも出てくることはない。

「この奥に続いている下のフロアが新しくできた部分か」
「階段の下にも、まだまだダンジョンがありそうですね。いったい、どれくらいまで奥があるんでしょうか……」

 崩れた祭壇の隣りには、ぽっかりと穴が空いていた。
 その穴には石畳で造られた階段があり、下へと続いているみたいだ。


「暗いですね」
「あぁ、暗いな。どうする? 魔法で明かりも作れるか?」
「ふふふ。まっかせてください!」

 壁に明かりとなる魔法石があったこれまでの道とは違い、真っ暗闇で先が見えない。
 松明でもないと、危な過ぎて進むことは出来ないだろう。
 
 ミカはブツブツと呪文を唱えると、ポンッという音と共に光球を生み出した。


「さすが元国選。何でもできるな」
「でしょ~? もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
「その魔法でお宝でも見つけてくれれば、感謝のキスで顔面ベチャベチャにしてやるぜ」
「……本気で嫌なので、その前にジャトレさんを浄化させますね」

 ふよふよと自身の周りに光球を浮かせながら、俺たちはそんな冗談を言い合う。
 ここまで時間が掛かったが、まだお互いに余裕はありそうだ。


「中級ダンジョンで必要なクリア日数が3日ぐらいだしな。それぐらいの深さは覚悟してほいた方がいいだろう」

 おおよその目安として。
 初心者のダンジョンを攻略するのが1日。
 中級が2日から4日で、上級だと1週間以上掛かることなんてザラだ。

 国選が挑むようなハイレベルな場所なら、1か月も掛かることがあるらしいが……。


 まぁいきなり初心者ダンジョンが上級以上になることは無いだろう。
 そんなことが起きたら、まず普通の冒険者は全滅する。

 今までそんな災害レベルの事が起きたなんて話は、少なくとも俺は聞いたことが無い。


「しかしまぁ、俺たちなら余裕だろう。特にミカの浄化魔法があるし」
「ジャトレさんはまたそうやって……あれ?」

 ん、なんだ?
 ミカが何かに気付いたみたいだ……っておいおい。


「……はぁ。なんでこう、上手くいきそうな時に限って邪魔が入るんだ?」

 これからようやくお楽しみの時間だと思ったのに。
 階段の下から、何かの気配がしやがる。


「……なんでしょうね」
「なんだろうな。もしかしたら……」


 ――新手のモンスターかもしれない。


 俺もミカは無言で武器を構える。

 改めて気を引き締めねばならないだろう。
 なにしろ、この先は新ダンジョン。未知の危険区域なのだから。


 階下から近づいて来るモノに対し、最大限の警戒態勢を取る。

 こちらに気付いていないのか?
 向かってくるスピードに変化はない。


「気を付けろ。また不意打ちを喰らって首を飛ばされたくはない」
「はい……!!」

 俺は宝剣の柄を握りしめ、ミカが照明となる光球を下方へ飛ばした。


「あれは……」

 魔法の明かりに照らされ、遂にその正体が見えてきた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...