世界最強アンデッドだけど引き篭もりたい!なのに聖女が俺を昇天させようと狙ってくるんだが!?

ぽんぽこ@書籍発売中!!

文字の大きさ
上 下
8 / 57

第8話 大敗を喫した亡者は撤退し、聖女と何故か同棲することになる話

しおりを挟む

 ……あぁ、気分は最悪だ。

 自宅のリビングにあるソファー。俺はその上で小さくうずくまりながら、心の中で深い溜め息を吐く。
 隣りに座っているミカはそんな俺を見て、ニヤニヤと嘲笑あざわらっていた。

「だから言ったじゃないですか。撤退しましょうよ~って」
「……うるさいな。勝てると思ったんだよ、あの吸血女王に」
「ふふっ。アレをまさに、手も足も出ないって言うんでしょうね。実際に手も足も無くなっていましたし」
「うぐっ……まさかあそこまで、実力に差があるとは思わなかったんだよ」


 イキってあの吸血女王に挑んだ俺は、文字通りボロボロにされた。
 ミカの揶揄からかいも全部事実だ。全く言い返すことができない。

 はぁ、情けなさすぎてマジで泣きたくなってくるぜ。

 ……アンデッドだから涙は出ないけど。


 クソ、あのクソ吸血女王め……!!
 あんなに強いなんて、どう考えたって反則だろうがよ!

 だいたい、何なんだよあの鎖は。
 自信のあった剣技も銀の鎖に弾かれるわ、フェイントや目くらましも簡単にかわされちまった。

 リーダーゾンビに進化したお陰で使えるようになった闇魔法だってそうだ。
 アイツの前じゃ、時間稼ぎ程度にしかならなかった。小手先のワザなんて、一切効きやしねぇ。


「凄かったですよねぇ。吸血鬼になったとはいえ、流石は国選の称号を持つ冒険者でした」
「悔しいが、ミカの言う通りだ。少なくとも正面から戦ったんじゃ、一般人の俺なんかが敵うわけがねぇ」
「ジャトレさんは一般人じゃないでしょう」
「……戦闘はちょっとかじった程度だ」
「ふふ。まぁ、今はそういうことにしておきましょうか」

 ――チッ。
 コイツ、何かを薄々と勘付いてやがるな。


「しかし、どうしてあそこまで差があったんだ? 俺と同じく、宝玉でモンスター化したはずだろ?」
「……そうなんですよねぇ。元々のスペックのお陰でしょうか。あの方は素晴らしい実力の持ち主でしたから。だけど、ちょっとおかしいんですよねぇ」


 うーん、とあごを抑えながら首をかしげるミカ。
 同じ国選同士、それも戦闘狂であるコイツが認めるっていうぐらいなんだから、相当強かったんだろう。

 だが、ミカが疑問に思うってなんだ?

「あくまでも私の記憶ですが。ヴァニラさんはあんな鎖なんて本来、使っていなかったはずなんですよ。だって彼女が愛用していたのは、普通の剣でしたから」

 ――はぁ!?

「剣だと? いやいや……アイツ、そんなもの一度も使ってなんかいなかったぞ? じゃあ、なんだ。あの時は手を抜いていたってことか?」

 あの幼女が剣士だって?
 その話が本当なら、あれでも全力じゃなかったってことじゃねぇか。

「いえ、それは無いと思います。彼女は孤高の存在であり、剣に対しては非常に誠実なお方でしたから。この国では剣聖として、魔天と双璧を成していたぐらいですし」
「あの女が剣聖……王が重用している二人の冒険者か。その話は俺も聞いたことがあるな」

 この国における、最強の冒険者は誰か。
 その答えは、魔法使いの魔天と剣士である剣聖の二人だ。

 剣技に誇りを持つ人間が、敢えて違う武器を使っていた、か。
 だからミカが“おかしい”って言い出したんだな。

 たしかにミカの言う通り、謎ではある。


 ……いや、違うな。
 おそらくアレは宝玉が関係しているんだ。

 俺やミカと同じく、呪いで何かがあったとみていいだろう。
 それが何なのかはまだ不明だが……。


「ふん。あの吸血女王が何者かなんて、この際どうでもいい。アイツは俺が倒し、宝玉を手に入れてやるんだからな……っておい、何をしているんだ?」

 決意を新たにソファーから起き上がると、ミカが床で何かをしているのが見えた。
 持って来ていた自分の荷物を、床に広げ始めているようだが……?

「今日はもう、日が暮れてしまいましたし。そろそろ休もうかと思いまして」
「ん? あぁ、一度教会に戻るのか? 連絡手段はどうする? またウチに来るのか?」

 できれば天敵である教会には、極力自分からは出向きたくはない。
 連絡するなら、直接俺のところへ来てもらうのがベストなのだが。

「はい? 何をおっしゃっているんです?」
「ん? なんか変なことを言ったか? おいおい……まさか、今さら俺とは組めないって言うんじゃないよな!?」

 せっかく呪いを解除する希望が見えたんだ。ミカにも協力してもらわなきゃ困るぜ!?

「何を言っているんですか、ジャトレさん。私はもう相棒ですよ? 当然、このお屋敷に住むに決まってるじゃないですか~?」
「……は?」
「あ、どうぞお構いなく。部屋は適当に空いている所を使いますので。では、おやすみなさい」

 革袋に荷物を詰め直したミカは「では良い夜を!」と言ってリビングから去っていった。

 取り残された俺はポカンとしたまま、彼女を見送るしかできなかった。


「……なんでさも当然のように、同居することになった?」


 残念ながら、その答えが返ってくることは無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...