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第2章 とあるメイドの入学
第15話 そのメイド、魔法を語る。
しおりを挟む私の能力がメモ魔法だと発言した途端、教室内がシンと静まり返った。
そうよね、普通は驚くでしょう。でも私が神様から授かったのはこの魔法だったのよ……。
「メモって……あのメモよね?」
「えっ、それって魔法にする必要あるの?」
「知らないわよ……何だかちょっとあの子が可哀想ね」
お、おう……。嘲笑よりも哀れみの意見が多いのは、ちょっと予想外だったわ。
いっそのこと馬鹿にしてくれた方が、この後のショーがやりやすかったのだけれど。
「今日はお近づきの印に、こんな魔法でも使いようだってことを、皆さんにも披露して差し上げるわ」
先生に目配せをすると、私の意図を察してくれたのかニッコリと微笑んで頷いてくれた。
よし、先生のお墨付きは得られたわね。
「披露って……」
「え? メモを見せるってこと?」
「私たちも別にメモぐらいは取れるけど……」
ふふふ、そうでしょう! 普通はそう思うわよね?
だけど私の魔法はただメモを取るだけじゃないのよ?
「先生、この学校の生徒名簿をお借りできますか?」
「名簿ですか? まぁ事務で公開されているものですし、いいでしょう」
私は先生から出席を取るために使っている名簿を受け取った。
名簿には百人分の名前と寮の部屋番号、使える魔法や所属するクラスなどが書かれている。名前の横には魔法を使ったのか、精巧な顔の絵が描かれていた。
うん、これくらいなら大丈夫そう。
「誰か、この教室で時間を測るのが得意な方は?」
「それなら私が魔法で出来るわよ」
「ありがとう。それなら一分間キッカリで計測してもらえる?」
さっきコソッとルーシーの事を教えてくれた、前の席の子が手を上げてくれた。
よしよし、これで準備はできたわね。
「ね、ねぇ。アカーシャさんは、いったい何をするつもりなの?」
「まぁまぁ、ルーシーもちゃんと私の魔法を見ていてよ。それじゃあお願いしていい?」
「了解よ。……時刻魔法、発動!」
タイマー係の女の子が手を上に掲げ、魔法を発動した。
手の先から空中に複雑な紋様の魔法陣が浮かび上がる。
「一分間ね……準備は良い?」
「いいわ、始めて!」
「スタート!」
私の合図で魔法陣が六〇を表す数字になり、それが一秒ごとに変化していく。
カウントダウンは六十秒。これがゼロになる前に……
「メモ魔法、発動……!!」
魔法を発動すると、私の手にも魔法陣が出現し――魔法の万年筆が現れた。
虹色に光る金属でできていて、それなりの重さがある。だけど不思議と私の手に馴染むお気に入りのペンだ。
――さぁ、始めるわよ!
「す、すごい……!!」
「アレってキチンと見えてるの……??」
名簿を片手に、私は記載されている内容を自分のメモ帳に超高速で写していく。
右手は目にもとまらぬ速さでシャカシャカと動き、傍目からは残像しか見えていない。
「……イチ、ゼロ!! そこまでよ!」
「出来たっ!!」
カウントダウンが終わる瞬間、私はメモを書き終えた。
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