孤児メイドの下剋上。偽聖女に全てを奪われましたが、女嫌いの王子様に溺愛されまして。

ぽんぽこ@書籍発売中!!

文字の大きさ
上 下
20 / 56
第2章 とあるメイドの入学

第14話 そのメイド、仲裁する。

しおりを挟む

「だって……ルーシーさんの魔法って、人を殺す魔法なんですもの!」

 魔法を使ったメイド術の講義中に、人を殺すなんて物騒なセリフが響き渡った。


「ハイドラさん!! 今すぐその言葉を撤回しなさい!!」
「だって、事実なんですもの。ねぇ、ルーシーさん?」

 ……へぇ? あの子、ハイドラさんって言うんだ。

 っていうか、あの優しそうな先生が本気で怒っている。

 そりゃそうか。この世界で他人の魔法を馬鹿にすることは、単に喧嘩を売るってレベルを遥かに超えた侮辱だ。プライドの高い貴族だから、沸点も低い。

 
「ルーシー、大丈夫?」
「……」

 あんな態度をとられて、ルーシーはブチ切れて反論するかと思いきや。なぜか彼女は机に向かってずっと俯いていた。どうやら彼女にも、なにか身に覚えがあるみたい。あの勝気な彼女が青褪めて震えてしまっている。

 可哀想に……。
 過去に何があったのかは知らないけれど、だからってあんなに酷いことを言うことはないじゃない。

 私は彼女の肩に手を置いた。ビクッとして振り返る彼女と目が合う。

 心配しないでいいよ、と微笑んであげた。

 安心してね、あなたを助けてあげるから。

 だけどルーシーの様子を見て彼女がショックを受けたと喜ぶハイドラさんはさらに追撃を放った。


「ほら、新しいお友達にもちゃんと教えてあげなさいよ。貴女がその鎖魔法で私にやったことを!」
「私は……違う……違うわ……」

 鎖魔法?

 鎖ってあの、金属の輪で作られたひも状のアレよね?

 私が首をかしげていると、前の席の女の子がコソコソと教えてくれた。

 
「ルーシーさん、以前にハイドラさんと喧嘩しちゃって……でもハイドラさんが先に彼女へ手をあげたのよ。そうしたらルーシーさんの鎖魔法が無意識に発動しちゃって……」
「彼女を縛り上げて、痛めつけたと?」
「そうなのよ……」

 なによ、それ。そのハイドラさんだかハイカラさんだか知らないけれど、その子が勝手に自爆したようなものじゃないの!!

 確かに、場合によっては勝手に発動する魔法もこの世に存在している。

 だけどそういうのは大抵、自分が危ない目に遭った時に自己防衛する場合がほとんどだ。

 そういう仕方のない場合は罪には大きな問われないって、この国の法律でキチンと決められているのに……。


 それにルーシーは普段、冷たくてツンツンしているけど、それは彼女の本質じゃないのは私も分かっている。本当は優しくて、誰も傷つけたくないって思っているはず。

 私に対して初対面から冷たく当たっていたのも、自分と仲良くすれば他の生徒たちから私がイジメられてしまうとでも思ったのだろう。

 まったく。不器用な人なんだから……。


 そんな事を考えている間にも、ハイドラさんはどんどんヒートアップしていた。彼女は今にもルーシーに飛びかかりそうな雰囲気である。

 ルーシーの方も完全に怯えきっていて、今にも泣き出してしまいそうだ。

 こんな状況じゃ、いくら何でもあの子が悪いとは言い切れない。

 私は意を決して立ち上がると、そのまま二人の間に割って入った。


「いくら魔法は使いようっていっても、鎖の魔法なんて「そうかしら?」使え……えっ?」

 もう、いいでしょう。

 そろそろ私のルームメイトを虐めるのは止めて貰おうかしら?


「聞いて驚きなさいっ! 私の魔法は……メモ魔法よ!!」
「「「メモ……魔法……?」」」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。 十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。 そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり────── ※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。 ※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。

鷹凪きら
恋愛
「力を失いかけた聖女を、いつまでも生かしておくと思ったか?」 聖女の力を使い果たしたヴェータ国の王女シェラは、王となった兄から廃棄宣告を受ける。 死を覚悟したが、一人の男によって強引に連れ去られたことにより、命を繋ぎとめた。 シェラをさらったのは、敵国であるアレストリアの王太子ルディオ。 「君が生きたいと願うなら、ひとつだけ方法がある」 それは彼と結婚し、敵国アレストリアの王太子妃となること。 生き延びるために、シェラは提案を受け入れる。 これは互いの利益のための契約結婚。 初めから分かっていたはずなのに、彼の優しさに惹かれていってしまう。 しかしある事件をきっかけに、ルディオはシェラと距離をとり始めて……? ……分かりました。 この際ですから、いっそあたって砕けてみましょう。 夫を好きになったっていいですよね? シェラはひっそりと決意を固める。 彼が恐ろしい呪いを抱えているとも知らずに…… ※『ネコ科王子の手なずけ方』シリーズの三作目、王太子編となります。 主人公が変わっているので、単体で読めます。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

処理中です...