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第2章 とあるメイドの入学
第11話 そのメイド、同情される。
しおりを挟む「ここが私たちが使える食堂よ。指定の時間にここへ来れば、食事にありつけるわ。時間は朝の五時と夜の八時の三十分間だけど、一分でも遅れたら食事は無しだからね」
私はルーシーの案内で、居住棟の中にある食堂へと来ていた。
今の時刻は夜の八時を過ぎたあたり。フロアに設置されている席で、寮生たちがそれぞれ思い思いに食事を摂っている。
食堂は私たち生徒が当番制で調理をするみたいだけど、タダで食べられるのはとても有り難い仕組みね。毎日空腹との戦いだった孤児院時代に比べたら、まるで天国みたいな環境だわ。
「アカーシャさん? 私の話をキチンと聞いているのですか?」
「うん、聞いてるわ。ただちょっと感動していただけよ」
ルーシーは未だに素っ気ない態度を続けている。
それでもしつこく話し掛けていたら、さすがの彼女も根負けしたみたいで、こうして寮内を案内してくれるようになった。
ふふふ、孤児院の悪ガキたちで鍛えられた私の粘り勝ちね!!
「こんなにもメンタルが強い人に出逢ったの、生まれて初めてだわ。私もう、心が折れそう……」
ルーシーは呆れを通して白目を剥いているけど、私のせいじゃないわよね?
最初っからそうやって普通に接してくれていれば、こんな事にはならなかったのよ?
「部屋を交換してくれないか、あとで事務に相談してこようかしら……」
「何を言ってるのよ!! 今まで散々ルームメイトを追い出しておいて、自分だけ都合のいいこと言わないの。それに今さら貴女を受け入れてくれるような、優しいお方がいるのかしら?」
私のセリフが図星だったのか、ルーシーは「うっ……」と言って顔を手で覆ってしまった。
ほら、みなさい。他人に迷惑を掛けたら、そうやっていつか自分に返ってくるんだからね!!
でもルーシーさん。ああ見えて、面倒見は良いのよね。言葉ではツンツンとしていても、案内自体はとても丁寧で分かりやすかったし。
貴族の御令嬢だったっていうだけあって、所作に気品が溢れている気がする。
何より服の上からでも分かる、あのスタイルの良さは……ぐぬぬ!!
「ど、どうしていきなり胸に手を当ててしょんぼりしているのよ?」
「うぅ、自分の身体が憎い……どうして私の身体はこんなにも貧相なの……」
腕組みしている彼女の腕には、重量級の袋が乗っている。
ふん、いいもんね。私は栄養が足りていなかっただけで、これから成長するんだから。たぶん、きっと……そうだといいなぁ……。
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