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第38話 らしくない王様
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「なっ、なんでコルテ様がここに!?」
「それはこちらのセリフだ! 国中を探し回ったんだぞ!! ヴェルデが急に出て行ったから、何かあったのかと思って……」
コルテ様は心から安心した様子ではぁと溜め息を吐いた。どうしよう、本当に迷惑を掛けちゃったみたい……。
「……ご、ごめんなさい」
「いや、謝罪をするのはこちらの方だ。ちゃんとお礼をしなくてはいけなかったのに、僕は……フィオレを助けてくれて本当にありがとう」
コルテ様は私に深々と頭を下げた。
どうしてそこまで私のことを気に掛けてくれるのだろう。私、迷惑しか掛けていないのに……。
私が困惑して立ち尽くしていると、顔を上げたコルテ様と目が合った。
「いえ、そんな……。私が勝手にしたことですし」
「いや、それでもだ。……さあ、城に帰ろう」
「え?」
帰るって、どこに帰るのだろう。私はもう戻る場所はないはずだけど。
「……どうした? まだ森に何か用事でもあるのか?」
「あの、どこにですか? ……私、もうここに住むことに決めましたから」
「……なにを言っているんだ?」
だって私は、変な能力を持っている出来損ないの聖女なのだ。
「あの能力のせいで、私はラッコルタでは十年も光の入らない世界に閉じ込められたんです!! あの能力を再び使ったとバレたら、私はまたあの地下深くに……」
「は……? いったい誰がそんな事を……!!」
「ドワーフ王であるお兄様ですよっ! 私が聖火を危険にさらしたことで、二度と能力は使うなって言われていたんです。だから私には、もう居場所なんて無いんです。コルテ様だってあんな能力を持つ私のことなんて気味が悪いでしょう?」
そう訴えると、コルテ様はポカンとした顔になった。自分で言っていてどんどんと情けなくなってくる。
だけど言葉が止まらない。
「そ、それにフィオレ様が元気になったら、私なんてもう用済みですし……」
「……君は何を言っているんだ? 言っただろう。僕は君を手放すつもりは無いと」
「えぇ!? そ、そんな事、ただの慰めで言っただけで……私なんて傷物の醜い女ですし……!」
コルテ様は大きな溜め息を吐くと、私の顔に自分の顔を近づけた。
「よく見るんだ」
「っ!」
お互いの額が触れ合い、私は思わず息をするのも忘れて固まった。
……近い! 近すぎて恥ずかしい!!
「やっぱりキミは美しく可憐だ。僕がこんなにも惹かれていることが証拠だろう。僕は君を愛してる。こんなにも愛しいと思ったのは初めてなんだ」
「なっ……!」
わ、私も、その、コルテ様のこと、好き、ですけど……。
「でもコルテ様の婚約者は妹のトラスで……それにフィオレ様が……」
「トラス姫についてはラッコルタ国との行き違いがあったため、婚約を一旦解消してもらうよう手紙を出したよ。……ところで、どうして僕にフィオレがいることが問題なんだ?」
「それはこちらのセリフだ! 国中を探し回ったんだぞ!! ヴェルデが急に出て行ったから、何かあったのかと思って……」
コルテ様は心から安心した様子ではぁと溜め息を吐いた。どうしよう、本当に迷惑を掛けちゃったみたい……。
「……ご、ごめんなさい」
「いや、謝罪をするのはこちらの方だ。ちゃんとお礼をしなくてはいけなかったのに、僕は……フィオレを助けてくれて本当にありがとう」
コルテ様は私に深々と頭を下げた。
どうしてそこまで私のことを気に掛けてくれるのだろう。私、迷惑しか掛けていないのに……。
私が困惑して立ち尽くしていると、顔を上げたコルテ様と目が合った。
「いえ、そんな……。私が勝手にしたことですし」
「いや、それでもだ。……さあ、城に帰ろう」
「え?」
帰るって、どこに帰るのだろう。私はもう戻る場所はないはずだけど。
「……どうした? まだ森に何か用事でもあるのか?」
「あの、どこにですか? ……私、もうここに住むことに決めましたから」
「……なにを言っているんだ?」
だって私は、変な能力を持っている出来損ないの聖女なのだ。
「あの能力のせいで、私はラッコルタでは十年も光の入らない世界に閉じ込められたんです!! あの能力を再び使ったとバレたら、私はまたあの地下深くに……」
「は……? いったい誰がそんな事を……!!」
「ドワーフ王であるお兄様ですよっ! 私が聖火を危険にさらしたことで、二度と能力は使うなって言われていたんです。だから私には、もう居場所なんて無いんです。コルテ様だってあんな能力を持つ私のことなんて気味が悪いでしょう?」
そう訴えると、コルテ様はポカンとした顔になった。自分で言っていてどんどんと情けなくなってくる。
だけど言葉が止まらない。
「そ、それにフィオレ様が元気になったら、私なんてもう用済みですし……」
「……君は何を言っているんだ? 言っただろう。僕は君を手放すつもりは無いと」
「えぇ!? そ、そんな事、ただの慰めで言っただけで……私なんて傷物の醜い女ですし……!」
コルテ様は大きな溜め息を吐くと、私の顔に自分の顔を近づけた。
「よく見るんだ」
「っ!」
お互いの額が触れ合い、私は思わず息をするのも忘れて固まった。
……近い! 近すぎて恥ずかしい!!
「やっぱりキミは美しく可憐だ。僕がこんなにも惹かれていることが証拠だろう。僕は君を愛してる。こんなにも愛しいと思ったのは初めてなんだ」
「なっ……!」
わ、私も、その、コルテ様のこと、好き、ですけど……。
「でもコルテ様の婚約者は妹のトラスで……それにフィオレ様が……」
「トラス姫についてはラッコルタ国との行き違いがあったため、婚約を一旦解消してもらうよう手紙を出したよ。……ところで、どうして僕にフィオレがいることが問題なんだ?」
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