魔王と勇者の奪い愛!?~私はただの社畜OLなのに、異世界からやってきた男たちに絶賛愛され中~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

文字の大きさ
5 / 14

第4話 勇者は従順な従者サマ?

しおりを挟む
 
「さ、さすがは聖女イーグレット。機転の良さは少しも衰えていないんだね……」

 白騎士の男は床に突っ伏しながら私のことを褒める。なんだろう、全然嬉しくない。むしろ罪悪感しか湧かないのはなぜ?

「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、心配はいらないよ。キミの愛があればこれしきのこと」
「いえ、そういう意味ではなくてですね……」

 とりあえず意識があることは確認できた。ひとまず安心してもいいかな。それじゃあ……。


「あの、帰ってもらうことはできませんかね?」

 私は彼をリビングへと案内しようかとも思ったが、やめておいた。だって客じゃないし、さっきの魔王の件もある。勇者とは自称しているけれど、これまでの言動を考えればこの人が無害とはどうしても思えない。


「そうかい、それは残念だ。せっかくキミのために異世界からやってきたというのに、歓迎されていないなんて悲しいよ」
「はぁ、まあ普通はそうなると思いますけど」
「ふふふっ、分かっているさ。久しぶりに僕と会うには、心の準備が必要ということだろう?」
「えっと、話が噛み合ってないんですが」

 仕事疲れのおかげか、心労のピークを越えてしまった。ここまでくると不思議なもので、意外と冷静でいられることができた。とりあえず、ドアの修繕費だけいただければ今回は見逃す。だから帰ってくれないかな。


「キミが照れ屋なのは知っているよ。でも、いつまでもそんなんじゃ運命の人と結婚を逃してしまうよ?」
「うるさい、それ以上余計な口を利くならアンタを捕まえてくれる人を呼ぶわよ!」

 私はスマホをチラつかせて脅してみた。すると彼は慌てて自分の口元を押さえる。

 意外だけど、勇者も警察が怖いのかしら? これで静かになってくれるといいんだけど。

 だけど勇者を名乗る男は、まだ諦めていなかった。


「お、お願いだ。僕はこの世界に来たばかりで、他に行くところもなくて……大人しくするから、キミの家に入れてくれないか?」

 今度は突然土下座を始めたのだ。

 これには私も驚いた。まさかそこまでされるとは思ってもみなかったから。そこで勇気を発揮しなくてもいいのに。


「いや、あのねぇ……」
「もちろんただで泊めてくれなんて言わない! 食事は僕の手作りを振る舞うよ? 掃除や洗濯も任せてほしい。あと、夜の生活も……」
「はいストップ!! あなた、自分が何言ってるか分かってる!?」

 最後の方なんか、変なこと言いそうだったし。

 やっぱり信用できない。こんな人を家に上げるわけにはいかない。


「どうして……僕とあんなにも熱い夜を過ごしたって言うのに」
「だから誰の話なのよ!? 私は処じょ……って何を言わせるのよ!!」
「ぶふっ!? す、すごいっ。聖なるバリアを張っている勇者相手に、こんな強力なビンタを繰り出せるなんて……やはりキミは聖女イーグレットその人だ!!」

 どうやら私は彼のナニカに触れてしまったらしい。

 さらに興奮させてしまい、鼻息を荒げながら迫ってきた。

 こ、これはヤバい。このままでは押し倒されかねない勢いだ。


「ま、待って待って! 待ちなさいって……待てって言ってんのよ!」
「わんっ」
「……え?」

 私は咄嵯に両手を前に振りかざし、これ以上近寄らないよう訴える。すると勇者の動きがピタッと止まった。……のは良かったのだけれど。わんってなに?

「はっはっはっ……」
「いや、素直に気持ち悪いんですけど……え? 犬のつもり?」

 勇者は私の問いに答えず、なぜか目を瞑りながら舌を出している。しかもこれって、躾でいうところのチ○チ○ってやつなんじゃないの?

 えぇ、マジで何やってるのこの人……。

 しばらく沈黙が続き、私は仕方なくもう一度聞いてみる。

 もしかしたら私が気付いていないだけで、何かの魔法を唱えているのかもしれない。うん、きっとそうだ。でなければ、こんな意味不明な行動を取るはずがないよね。だって勇者だよ?

「僕は聖女を愛する勇者であり、キミの忠実な犬でもある。さぁ、御主人様にご奉仕させてくれ!」
「…………いや、勘弁してください?」

 ダメだコイツ早くなんとかしないと。

 私は頭を抱えつつ、どうやって追い返そうか必死に考える。けれど、いくら考えても妙案は浮かんで来ない。だって相手は勇者だし。


「あーもう! わかった、わかりました。とりあえずコレを付けてください。そして今すぐ出て行ってください!」
「こ、コレは……!?」

 私は自分が身に着けていた腰の革ベルトを外すと、勇者キリクに手渡した。


「犬なら首にでもつけて、大人しく御主人様の言うことを聞いていなさい。分かった?」

 キリクはコクリと首を縦に振ると、嬉々としてそのアイテムを装着し始めた。

「さぁ、今日はもう遅いから帰りなさい。マンションの前に公園があるから、そこで寝ればいいわ」
「分かった。ありがとう、イーグレッ「千鶴よ」――千鶴様」

 ……よし、これで大丈夫だろう。

 後は玄関先で見送れば問題なしだ。勇者キリクが去って行くのを確認してから、私は家へと入った。

 翌朝―――。
 結局昨晩はロクに眠れなかったせいで、寝不足気味のまま家を出た。

 少し早めに出勤して、会社で朝ご飯を食べよう。


「本当にいるし……」

 勇者キリクは私の革ベルトを愛おしそうに撫でながら、砂場の上で眠っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

乙女ゲームの世界に転移したら、推しではない王子に溺愛されています

砂月美乃
恋愛
繭(まゆ)、26歳。気がついたら、乙女ゲームのヒロイン、フェリシア(17歳)になっていた。そして横には、超絶イケメン王子のリュシアンが……。推しでもないリュシアンに、ひょんなことからベタベタにに溺愛されまくることになるお話です。 「ヒミツの恋愛遊戯」シリーズその①、リュシアン編です。 ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

襲われていた美男子を助けたら溺愛されました

茜菫
恋愛
伯爵令嬢でありながら公爵家に仕える女騎士イライザの元に縁談が舞い込んだ。 相手は五十歳を越え、すでに二度の結婚歴があるラーゼル侯爵。 イライザの実家であるラチェット伯爵家はラーゼル侯爵に多額の借金があり、縁談を突っぱねることができなかった。 なんとか破談にしようと苦慮したイライザは結婚において重要視される純潔を捨てようと考えた。 相手をどうしようかと悩んでいたイライザは町中で言い争う男女に出くわす。 イライザが女性につきまとわれて危機に陥っていた男ミケルを助けると、どうやら彼に気に入られたようで…… 「僕……リズのこと、好きになっちゃったんだ」 「……は?」 ムーンライトノベルズにも投稿しています。

処理中です...