15 / 21
15 叱られた犬
しおりを挟む
「……あっ! やっ、ま、まて……ひいっ!」
ばちゅん、と音を立てて、ウォルフの昂った性器がエアネストの中に埋まりきる。
「ひ、やっ! ああっ! うぉる、ふ……ぅんッ!」
先ほどまでの、獣の交尾のような手酷い責めではない。ゆっくりと引き抜いては、腹の中に出された精液を擦り付けるように奥まで突き入れられる。
「あっ、ひぅっ、……やあっ、まて、ま、あぁっ、ああ……っ!」
待て、という言葉が用をなさない。せめて行動で意思を示したくとも体に力が入らない。元々が不利な体勢な上に体格差もある。エアネストの拒絶はただもがくだけで終わる。
「ひぅうっ! あッ! やあっ! そこ、だめ……っ、ああっ! うぁああッ……!」
何度も突き入れられ、体は既に行為に順応し始めている。圧迫感があるものの、苦痛はない。ウォルフが動くたびに、腰が甘く疼く。体が熱く昂る。このままでは――。
「――だめだ! やめろ!」
内側から込みあげてくる未知の感覚に怯えたエアネストは、焦燥に駆られて叫んだ。
明確な拒絶の言葉に、ウォルフは動きを止める。素直に命令を聞き届けてもらえたことに安堵するが、ウォルフの表情を見てぐっと息を詰まらせた。
心底辛そうに眉根を寄せて。体の芯を悲哀に貫かれたような、ひどく悲しげな眼差しが注がれる。
――普段は無表情なくせに、こんな時だけ叱られた犬のような顔をするのは、卑怯ではないか。
「ウォルフ……、すまないが……これ以上は……」
なぜか自分の方が不当な要求をしたような気持になりながら、エアネストは手を伸ばしてウォルフの頬を撫でた。
「これ以上、気持ちのいいことを、されてしまったら……この行為を、好きになってしまいそうで……困る……」
性器に触れられてもいないのに、あらぬ場所を犯されて、気持ちよくなってしまうなどとは。自らの体の変化を恥じて、エアネストは潤んだ瞳を伏せた。
本来であれば、他者と性的に交わるのは、お互いの想いが重なってこそ意味を成すものだ。愛の交歓でもなく、子を授かる為でもなく、ただ快楽を追い求めるのは恥ずべき事。エアネストはそう教育され、忠実に守ってきた。ましてや神に命を捧げた身。呪いを解くという特別な理由もなく、不道徳な行いに流されるわけにはいかない。
エアネストの言葉に動きを止めていたウォルフは、小さく息をもらした。
「……ウォルフ?」
月明かりに浮かぶその表情は、まるで微笑んでいるように見えるが――いや、ように、ではない。間違いなく微笑んでいる。
――ウォルフもこんな風に優しい表情をすることがあるのか。
呆然とウォルフに魅入っていたエアネストだったが、腰の引けていたウォルフが再び腰を押し進めたせいで悠長に眺めている余裕がなくなる。
「ひううッ!」
「――それなら、好きになったらいいじゃねえか」
「やっ、だ、だめ……っ! だめ、やっ、あっ!」
ウォルフはゆっくりと腰を動かしながら、エアネストの胸をまさぐる。桃色の小さな肉の粒を探り当て、指先でこね回す。くすぐったさに身を捩れば、結合した場所が擦れて、上ずった声が出てしまう。
「んんっ……! やっ! ふ、あぁ……!」
赤子に与える乳を出せるわけでもないのに、男の乳首など触っても意味はない。それでもウォルフは執拗にエアネストの乳首を刺激する。くすぐったいだけのはずが、そうされるとどうしようもなく腰が疼いてしまう。
「……はっ、すげえな……少し前まで、指一本入れるのもキツかったのに……俺のものを突っ込まれて、気持ち良くなっちまってんだもんなぁ……」
「ち、ちがう……あっ、あぅ、あああっ!」
「気持ちよくねえのか? こんなに腰をくねらせてんのに」
「――……っ!」
ウォルフに指摘されて、もっと、とねだるように腰を動かしてしまっているのを自覚する。奥に突き入れられるよりも、ゆっくりと引き抜かれるのが気持ちいい。浅い場所をぐっと押しつぶされると、腹の中が熱くなって、ひくひくと勝手に収縮してウォルフの性器を締め付けてしまう。
ウォルフの昂りを発散させるのに付き合うのは百歩譲って応じられるが、自分まで気持ちよくなってしまうのはだめだ。快楽から逃れたくて、少しでも媚びるような声を出すまいと奥歯を食いしばるが、弱い場所を突かれてあっさり喘ぎ声をもらしてしまった。
「ん――っ! ああっ、そこ、は……!」
ウォルフに探り当てられてしまった、腹の内側。そこを穿たれたら、得体のしれない熱が、呼び覚まされてしまう。
わずかに自由になる手を伸ばしてウォルフの胸板を押す。それはウォルフの目に抵抗として映らない。縋るように差し出された手に指を絡めて、囁きかける。
「なあ、教えてくれよエアネスト様。ここ、こうされるのが気持ちいいんだろ?」
最も感じる場所を穿ったまま、ウォルフが動きを止める。既に篭絡されきっている体は素直にウォルフの意図を読む。
気持ち良いと口にしなければ、続きをしてもらえない。
だめだ。怖い。これ以上されたら、どうなってしまうかわからない。これ以上知ってしまってはいけない。理性ではそう思うのに、もっとほしいと心の奥底で叫んでいる自分の本能が、恐ろしい。
「う……ウォルフ……」
どうしたらいい。助けを求めるように見つめたウォルフの瞳は、欲に濡れていた。切羽詰まって、今にも爆発しそうな欲求を抱えて、エアネストを貪りたいと訴えている。
――ウォルフに、求められている。
わずかに残った理性を、ウォルフの眼差しが打ちのめす。
「……き、もち、いい……」
ほとんど聞き取れないほどの小さな声音に、ウォルフは蕩けたように微笑んだ。
ばちゅん、と音を立てて、ウォルフの昂った性器がエアネストの中に埋まりきる。
「ひ、やっ! ああっ! うぉる、ふ……ぅんッ!」
先ほどまでの、獣の交尾のような手酷い責めではない。ゆっくりと引き抜いては、腹の中に出された精液を擦り付けるように奥まで突き入れられる。
「あっ、ひぅっ、……やあっ、まて、ま、あぁっ、ああ……っ!」
待て、という言葉が用をなさない。せめて行動で意思を示したくとも体に力が入らない。元々が不利な体勢な上に体格差もある。エアネストの拒絶はただもがくだけで終わる。
「ひぅうっ! あッ! やあっ! そこ、だめ……っ、ああっ! うぁああッ……!」
何度も突き入れられ、体は既に行為に順応し始めている。圧迫感があるものの、苦痛はない。ウォルフが動くたびに、腰が甘く疼く。体が熱く昂る。このままでは――。
「――だめだ! やめろ!」
内側から込みあげてくる未知の感覚に怯えたエアネストは、焦燥に駆られて叫んだ。
明確な拒絶の言葉に、ウォルフは動きを止める。素直に命令を聞き届けてもらえたことに安堵するが、ウォルフの表情を見てぐっと息を詰まらせた。
心底辛そうに眉根を寄せて。体の芯を悲哀に貫かれたような、ひどく悲しげな眼差しが注がれる。
――普段は無表情なくせに、こんな時だけ叱られた犬のような顔をするのは、卑怯ではないか。
「ウォルフ……、すまないが……これ以上は……」
なぜか自分の方が不当な要求をしたような気持になりながら、エアネストは手を伸ばしてウォルフの頬を撫でた。
「これ以上、気持ちのいいことを、されてしまったら……この行為を、好きになってしまいそうで……困る……」
性器に触れられてもいないのに、あらぬ場所を犯されて、気持ちよくなってしまうなどとは。自らの体の変化を恥じて、エアネストは潤んだ瞳を伏せた。
本来であれば、他者と性的に交わるのは、お互いの想いが重なってこそ意味を成すものだ。愛の交歓でもなく、子を授かる為でもなく、ただ快楽を追い求めるのは恥ずべき事。エアネストはそう教育され、忠実に守ってきた。ましてや神に命を捧げた身。呪いを解くという特別な理由もなく、不道徳な行いに流されるわけにはいかない。
エアネストの言葉に動きを止めていたウォルフは、小さく息をもらした。
「……ウォルフ?」
月明かりに浮かぶその表情は、まるで微笑んでいるように見えるが――いや、ように、ではない。間違いなく微笑んでいる。
――ウォルフもこんな風に優しい表情をすることがあるのか。
呆然とウォルフに魅入っていたエアネストだったが、腰の引けていたウォルフが再び腰を押し進めたせいで悠長に眺めている余裕がなくなる。
「ひううッ!」
「――それなら、好きになったらいいじゃねえか」
「やっ、だ、だめ……っ! だめ、やっ、あっ!」
ウォルフはゆっくりと腰を動かしながら、エアネストの胸をまさぐる。桃色の小さな肉の粒を探り当て、指先でこね回す。くすぐったさに身を捩れば、結合した場所が擦れて、上ずった声が出てしまう。
「んんっ……! やっ! ふ、あぁ……!」
赤子に与える乳を出せるわけでもないのに、男の乳首など触っても意味はない。それでもウォルフは執拗にエアネストの乳首を刺激する。くすぐったいだけのはずが、そうされるとどうしようもなく腰が疼いてしまう。
「……はっ、すげえな……少し前まで、指一本入れるのもキツかったのに……俺のものを突っ込まれて、気持ち良くなっちまってんだもんなぁ……」
「ち、ちがう……あっ、あぅ、あああっ!」
「気持ちよくねえのか? こんなに腰をくねらせてんのに」
「――……っ!」
ウォルフに指摘されて、もっと、とねだるように腰を動かしてしまっているのを自覚する。奥に突き入れられるよりも、ゆっくりと引き抜かれるのが気持ちいい。浅い場所をぐっと押しつぶされると、腹の中が熱くなって、ひくひくと勝手に収縮してウォルフの性器を締め付けてしまう。
ウォルフの昂りを発散させるのに付き合うのは百歩譲って応じられるが、自分まで気持ちよくなってしまうのはだめだ。快楽から逃れたくて、少しでも媚びるような声を出すまいと奥歯を食いしばるが、弱い場所を突かれてあっさり喘ぎ声をもらしてしまった。
「ん――っ! ああっ、そこ、は……!」
ウォルフに探り当てられてしまった、腹の内側。そこを穿たれたら、得体のしれない熱が、呼び覚まされてしまう。
わずかに自由になる手を伸ばしてウォルフの胸板を押す。それはウォルフの目に抵抗として映らない。縋るように差し出された手に指を絡めて、囁きかける。
「なあ、教えてくれよエアネスト様。ここ、こうされるのが気持ちいいんだろ?」
最も感じる場所を穿ったまま、ウォルフが動きを止める。既に篭絡されきっている体は素直にウォルフの意図を読む。
気持ち良いと口にしなければ、続きをしてもらえない。
だめだ。怖い。これ以上されたら、どうなってしまうかわからない。これ以上知ってしまってはいけない。理性ではそう思うのに、もっとほしいと心の奥底で叫んでいる自分の本能が、恐ろしい。
「う……ウォルフ……」
どうしたらいい。助けを求めるように見つめたウォルフの瞳は、欲に濡れていた。切羽詰まって、今にも爆発しそうな欲求を抱えて、エアネストを貪りたいと訴えている。
――ウォルフに、求められている。
わずかに残った理性を、ウォルフの眼差しが打ちのめす。
「……き、もち、いい……」
ほとんど聞き取れないほどの小さな声音に、ウォルフは蕩けたように微笑んだ。
27
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
神子様のお気に入り!
荷稲 まこと
BL
異世界に召喚された主人公、百瀬瑠衣。
そこは女性が存在しないBLゲームの世界だった。
『神子様』と呼ばれイケメンたちにちやほやされる瑠衣であったが、彼はどうも不満そうで…。
長編の合間の息抜きに書きました。
ふわっと設定なのでふわわっと読んでください。
すけべシーンには※が付いてます。
【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕
hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。
それは容姿にも性格にも表れていた。
なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。
一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。
僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか?
★BL&R18です。
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる