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最終章④ ももか
しおりを挟む『名前さー、ももかにすんべ!』
『男の子だったらどうすんのー?』
『えー女の子だよー、絶対! あー、でももし男の子だったら桃太郎にでもすっかなー』
『あはは!カズくんめちゃウケるー』
そんな幸せな時間は突然終わりを告げた。
『カズ! ゆかりと離婚するってどーゆーことだよっ! こんなに傷ついてるゆかりを捨てんのかよ!』
早苗が和弘の胸ぐらを掴んで叫ぶ。
『流産したのはゆかりのせいじゃないじゃん!何でゆかりばっか責めんだよ!』
『違う、責めてねーよ。俺はただ、ゆかりに立ち直ってほしい。また、前みたいに笑ってほしいんだ』
『じゃあ、あんたが支えてあげなよ!!』
『無理だよ。俺といたらゆかりは立ち直れない』
『そんなの分かんないじゃん!!』
『俺も一緒なんだ。ゆかりといると、俺も立ち直れない』
小さな位牌を抱えて、ただただ泣くしか出来ない私にも、和弘の悲しみは受け止められなかった。
『ゆかり、もう、全部忘れてさ、俺のことは忘れて、赤ちゃんのことも忘れてさ、また前みたいに笑いなよ。俺、ゆかりの笑った顔が大好きだったんだ』
『カズくん・・・・・・』
『ごめんな、ゆかり、支えてやれなくてごめん、弱い男でごめん。もう、離婚しよう』
「おねえちゃん、ないちゃメッなのよ?いーこ、いーこ」
『ももか』が私の頭を優しく撫でた。
私が生んで上げられなかった和弘の子ども。
ああ、よかったね、カズくん、『ももか』に会えてよかったね、幸せでよかったね。
「ママー、ももか、いーこいーこしてあげたー」
「す、すみません、この子ったら最近私の口真似ばかりで・・・・・・」
『ももか』の母親が優しい顔で『ももか』を抱き上げた。
「い、いえ、こちらこそすみません、羽目を外して飲み過ぎたみたいで。私、泣き上戸なんです」
涙を拭いてへへ、と笑って見せた。
もう涙は止まっていた。
『ももか』のいい子いい子のお陰かな。
ねぇ、和弘、今度は逃げちゃダメだよ?
『ももか』と、奥さんをちゃんと支えてあげて。
私も、もう絶対に逃げないから。
冬馬くんはきっと支えてくれる。
私も冬馬くんを支えてみせる。
冬馬くんの顔を見上げると、真っ赤になって固まっていた。
「・・・・・・・・・・」
そういえば私、居酒屋のど真ん中で物凄いこと叫んじゃった、よね・・・・・・
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「あ、ありさぁ! どうしよう、私恥ずかしくて死んじゃいそうだよぉ!」
「ゆかりー抱きつく相手、間違ってるー」
ありさが笑って私のほっぺたをムギュッとつまんだ。
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