目覚めはガングロギャル?!黒歴史は封印!清楚系美少女になって初恋の彼の闇落ちを阻止します!!

むぎてん

文字の大きさ
上 下
95 / 98

最終章③百合子と和弘

しおりを挟む

                   


『百合子』だ、間違いない。

『あの未来』でワイドショーの画面に映っていた美しい女性。
42歳の三宅冬馬に殺された悲劇の妻、『百合子』

今、目の前にいる『百合子』はまだ若く、テレビで見たあの姿よりもずっとずっと綺麗だ。

震える手をスカートで隠して

「すごい、綺麗な人! 冬馬くんのお友だち?」

努めて明るく言ってはみたが、お腹の中にどす黒い塊が沈んでいくのが分かる。

この人は駄目。
冬馬くん、この人だけは駄目だよ。
お願い、この人を見ないで、私を見て。

「いや、他人だと思うが。ゆかり以外の人間には興味がないからな」

冬馬くんの言葉にホッとはしたが、お腹の中の塊は消えない。

「ゆかりー、あっちの席に座ろー?」

「うん」


席に付き、メニューを広げて眺めたが何も頭に入ってこない。

「このお店、もとみや君の行きつけでしょ?もとみや君にまかせるよ!」

目も耳も塞がれたみたいな感覚が私を襲う。
なのに口だけはいつもと同じように楽しげに動くから不思議だ。

心と裏腹にニコニコと笑っている私の頭の中で誰かが馬鹿にするように言った。

『ほーらね、何も変わらないよ?』

違う!違う!違う!
お願い、お願い、やめて。



「隣の席、イーっすか?」

懐かしい声に、頭の芯を弾かれたように振り向いた。

・・・・・・和・・弘?
そこにいたのは、『あの未来』で泣いている私を捨てた夫、和弘だった。


何で?
何で和弘まで私の前に現れる?

『百合子』と『和弘』が同時に私の前に現れるなんて。

お腹の中がどす黒い塊で埋め尽くされた。

頭の中の声が言う。

『だから、何も変わらないんだよ? もう、決まっていることなんだよ?』

さっきから震えの止まらない手をグッと握りしめた。

うるさい・・・・うるさい!うるさい!!  黙れ!!!
 私はお前なんかに負けない!!!!

「ビール2つにレモンサワー2つ、お待たせしましたー!」

テーブルに置かれたレモンサワーを両手で掴み、一気に飲み干した。

「おい!ゆかり!何をやっ・・・・・・」

ダンッッ

空になったグラスをテーブルに叩きつけるように置く。

そして一気に黒い塊を吐き出した。

「 冬馬くんは私と一緒に幸せになるんだよ!! 私しか冬馬くんを幸せに出来ない!私のことも冬馬くんにしか幸せに出来ない! 冬馬くんの幸せな未来も、私の幸せな未来も、絶対絶対、誰にもあげないんだから!!!!」

和弘にも百合子にも聞こえるように、大きな声で叫んだ。
そしてそのまま冬馬くんの膝に顔を埋めて泣いた。

「うわああぁぁぁあん!!!」

小さい頃のように大声で泣きじゃくる。



「ふ、ふえーん、パパー」

本物の小さな子どもの泣き声に顔を上げた。

和弘が幼女の背中を優しく撫でる。
「ももか、大丈夫だよ」


──────────

 最終章④ ももか へ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜

アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。 そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。 とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。 主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────? 「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」 「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」 これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。

メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~

Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが… ※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。 ※設定はふんわり、ご都合主義です 小説家になろう様でも掲載しています

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

処理中です...