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62 土下座 side冬馬
しおりを挟むside冬馬
そこまで話すと早苗とありさは驚いて口許に手を当てた。
「まさか、ゆかりがそんなこと・・・・・・」
「それってホントにゆかりだった?何かの間違いじゃ・・・・・・」
「浮気というのは人によって定義が変わる。昨日のあれは、ゆかりにとって浮気ではないというなら俺には何も言えないが。それでもゆかりのあんな楽しそうな姿を見てしまった俺は苦し「お兄ちゃんだよ?」・・・・・は?」
ゆかりが腰に手を当てて立っていた。
「「「ゆかり!!」」」
「昨日の人、お兄ちゃんだよ?早苗は知ってるでしょ?小学校一緒だったから」
「お兄ちゃんって、ケンジ君? だっけ? でもメガネなんかかけてなかったし、めちゃ太ってたじゃん?」
「ケンジじゃなくて健斗だよ。お兄ちゃんね、ママのお菓子食べ過ぎて太ってたんだよ。もう、あればあるだけ食べちゃうの。一人暮らししてから痩せたけどね。」
「マジか!」
「あとメガネもね、あれ、ゲームのし過ぎで悪くしたんだよ。お兄ちゃんゲームオタクだから。頭も良くないよ、私と一緒で勉強嫌いだもん。」
ゆかりはそこまで言うと、呆然としている俺をじろりと睨んだ。
こんな顔は初めて見た。
「冬馬くん、あの時、声をかけてくれたらよかったのに。それに、どうして私に直接聞いてくれないの?」
「・・・・・・俺はゆかりを責めて傷つけるのが怖かった。いや、自分が傷つくのが怖かったんだ。」
うなだれて正直に話す。
「今日、それで私のこと無視してたんだ?」
「む、無視というか、そんなつもりはなかったが・・・・・・ごめん、俺が悪かった。」
「私のこと、嫌いになったのかと思って辛かった」
ゆかりがしくしくと泣き出してしまった。
ああ、また俺は君を傷つけた。
ゆかりの言う通りだ。
あの時声をかけていれば、あの男が『兄』だということはその場で分かった事だ。
うだうだと一人で悩んだ挙げ句、ゆかりを傷つけた。
怖がらずにちゃんと聞けばよかったんだ。
ゆかりは傷つきながらも俺を気遣ってくれていたのに。
「私は冬馬くんしか好きじゃない。浮気なんか絶対しないもん!!」
そう言って、泣くゆかりに嬉しいと思ってしまった俺は、その場で床に頭を付けて土下座した。
「本当にごめん。俺が悪かった。謝るから、もう泣き止んでくれ!」
そんな俺を、早苗とありさが呆れて見ていた。
ちなみに、再びゆかりを呼びに来た圭介と谷口も見ていたらしい。
──────────
63~傷つけたり傷ついたり へ
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