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61 ゆかりが浮気? side冬馬
しおりを挟むside冬馬
先日、掃除当番をサボった形になったてしまったゆかりは、今日の当番と交代になったらしい。
俺は昨日から、なにも手につかないほど落ち込んでいる。
「冬馬くん、なにかあった?元気ないね」
ゆかりがそう言ってくる度に、何度も聞いてしまおうと思って、やめた。
心の狭い俺はきっとゆかりを責めて、問い詰めて、傷つけてしまうだろう。
彼女から目を反らし、なにも言えないまま放課後になってしまった。
どうしていいか分からなくなった俺は、ゆかりのいない図書室で早苗とありさに相談した。
「ゆかりが男と歩いてたぁ?!」
静かな図書室に早苗のすっとんきょうな声が響く。
「三宅ー、あんた、ゆかりが好きすぎて夢でも見たんじゃないのー?」
ありさは俺に向かって人差し指を立てて、ケラケラと笑う。
夢ならどれだけよかったか。
昨日は、定期的に受けている模試の日だった。
試験が終わり、駅に向かう俺の目に飛び込んできたのは、俺の知らない男と楽しそうに歩くゆかりの姿だった。
俺がゆかりを見間違えるはずがない。
どこからどう見てもゆかりだ。
相手は、眼鏡を掛け、落ち着いた雰囲気で頭がよさそうな大学生風の男。
ゆかりが男の腕にぶら下がるように腕を組んで歩き、何やら楽しそうに話をしている。
甘えたような顔で男を見上げ、男は彼女の頭を優しく撫でた。
俺はフラフラと二人の後をつけた。
何をしてるんだ俺は。
こんな事をしても意味がないことは分かっているのに、俺の足は勝手に動く。
若者に人気の洋服屋に入る二人を追って、俺も店に入った。
ゆかりが真剣な顔で洋服を選び、男はうなずいたり首を振ったり楽しそうに買い物をしている。
数枚の服を持ったゆかりが試着室に入り、その前でゆかりを守るように立つ男。
試着室のカーテンの隙間から中を除き込み
何事か話すと売り場へ戻り、新たに数枚の服を持ってきた。
カーテンの向こうのゆかりに手渡すと、またその前でゆかりを守る。
やがて、満足そうな顔で試着室から出てきたゆかりが男に服を渡すと、それを持って会計を済ませた。
ゆかりが店員から大きな紙袋を嬉しそうに受けとると、男はひょいとそれを取り上げて自分の肩に掛ける。
そんな二人は誰がどう見ても恋人同士にしか見えない。
店を出た二人はまた楽しそうに歩き、そのままお洒落なレストランに入っていった。
──────────
62~土下座 side冬馬 へ
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