目覚めはガングロギャル?!黒歴史は封印!清楚系美少女になって初恋の彼の闇落ちを阻止します!!

むぎてん

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57 それぞれの中のゆかり sideありさ

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  sideありさ

『あのね、知ってる?  叩っ切るって、叩いたあとに更に切るんだよ、スゴくない?』

ゆかりってマジで可愛い。
あたしみたいな見た目だけとは違う。
そーだね、また嫌なことゆーヤツがいたら、今度からゆかりの言葉を思い出すよ。
怒りも吹っ飛んで笑っちゃうかもねー。

ゆかりのいなくなった図書室で早苗が予想する。

「ゆかりの将来の夢は、多分お嫁さんだろうね、ゆかりん家のママも専業主婦だからさ」

あたしもそんな気がする。
まあ、三宅が大学を卒業するまではどっかで働くんだろうけど。

「ゆかりはなにか資格を取りたいと言っていた」
「資格? なんだろ、聞いたことないし?」
「資格があれば食べるのに困らないと、一人でも生きて行けると言っていた」

は? ゆかりが一人で生きていく? なにそれ?

「資格をとるのはいいけどさー、一人で生きていくとか、意味わかんない」
「そうなるかもしれないと。あの時のゆかりは、凄く寂しそうで俺も悲しくなった」

「強くなろうとしてんじゃね?」

早苗が椅子を引いて腕を組みながら話し始めた。

「ゆかりはさぁ、弱いんだ。他人の目を異常に気にする。だからとにかく人に合わせるんだ。それは小学生の頃からだよ。人から嫌われないようにいつも気を使って喋る。例えば誰かが『◯◯に行こう』って言えばさ、絶対に断らない。ニコニコ笑って『いいよー』ってね。そんで『私も◯◯行ってみたいと思ってた』とか、『◯◯楽しいよね』とか必ず付け加えるんだ。ホントは◯◯がイヤでもね。嫌われる位なら自分を押し殺しちゃうんだよ。」

確かにゆかりはいつもそんな感じのしゃべり方をする。
でも、それは優しいからでしょ?

「だから、ゆかりが三宅の悪口言ったヤツに正面から言い返した時はビックリした。あんなゆかりを見たのは初めてだったからさぁ」

三宅は大きく目を見開いて早苗の話を聞いている。

「あの日、ゆかりから三宅のことが好きだって打ち明けられた時も驚いたんだ。ウチはホントは、ゆかりがずっとあんたのこと好きだって気づいてた。でも、絶対誰にも、ウチにもありさにも言わないまま卒業すると思ってたんだ。」

あたしは全然気づかなかった。
あたしだって一緒にいたのに。
よりによってあの三宅かよって。
みんなに優しいゆかりはいつも一人でいる三宅が気になって、それで好きになったのかな、でも、親友の恋は応援したいなって思ってた。

ゆかりはいつも、誰にでも優しい。
そーゆーとこ尊敬してる。
早苗の思うゆかりがいるように、あたしの中にもあたしの思うゆかりがいる。

あたしの口から気持ちが溢れだす。

「ゆかりが誰からも好かれるのは、ゆかりが優しいからでしょ。弱いから優しいの? それってホントに弱いの? あたしには、そーは思えない。他人に嫌な思いをさせないように自分を抑えることができるのは強いからでしょ。」

あたしは興奮が抑えられなくなって、止められない。

「あたしが三宅としゃべっててイライラするのは三宅の言ってることは正しいから。自分の意見が正しいからって、そのまま言葉にすればいいわけじゃないよ。それを知ってるゆかりは弱くなんかないよ。強いんだよ!」

一気にまくし立てたから息が上がった。
自分の肩が上下してる。

「うん、そうだね。ありさの言ってること聞いてたら、ウチもそんな気がしてきた」

「だって、一人で生きていくのが強くなることだとか、あたしはそんなのいやだし!」

早苗があたしの頭を優しく撫でた。
早苗はお姉さん気質だよね。
そーゆーとこ尊敬してる。


「俺がゆかりと初めて話したとき、ゆかりは一人で泣いていたんだ。頭が悪いと、弱いと。そんな自分が嫌だと泣いていた。」

それまで黙って聞いていた三宅が泣きそうな顔で言った。

「どうにかしてやりたいと思った。他人に対してそんなことを思ったのは初めてだった。俺は、ゆかりが好きだ。ゆかりがゆかりならそれでいい。無理に笑っていなくてもいい。泣かしたくはないが、泣いていてもいい。そのままのゆかりが俺の隣にいてくれたらそれでいいんだ。」

あ、泣き出しちゃった。こいつ、意外と涙もろいよね。

「早苗の言う通りだ、ゆかりは弱い。そして、ありさの言う通りだ。ゆかりは強い。ゆかりの弱さは強さだ。ゆかりは俺を強いと言う。でもそうじゃない。俺はただ他人の気持ちを思いやることが出来ないだけで、誰かを傷つけても気づかない。ゆかりのことも気づかない内に傷つけているかもしれない。俺はゆかりを好きになって、初めて自分が変わりたいと思ったんだ。」

あたしもいつの間にか泣いていて、早苗があたしの涙を手のひらで拭ってくれた。
早苗も泣いてた。だからあたしも早苗の涙を拭ってあげた。

三宅、あんたは自分で拭え。


「ゆかり」
三宅の声に驚いて振り向くと、ドアの前で泣いているゆかりがいた。


──────────
58~ありがとう、大好き  sideゆかり  へ

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