目覚めはガングロギャル?!黒歴史は封印!清楚系美少女になって初恋の彼の闇落ちを阻止します!!

むぎてん

文字の大きさ
上 下
45 / 98

45 冬馬という息子 side冬馬の母親

しおりを挟む


 side冬馬の母親

「携帯電話を購入する事にしたから、この同意書にサインがほしい」
と息子が言ってきた。

今まで何かをねだると言えば、参考書やら問題集やら小難しい専門書やら。


幼稚園の頃からお友達と遊ぶより、一人でパズルを解いたり本を読むのが好きな子だった。

小学生になってもそれは変わらない。
ますます難しい本にのめり込んでいった。
なんだか他の子どもとは脳みその作りが違っている、と思った。

学校から言われてIQテストなるものを受けたのだが、結果は、はっきり言って天才だった。
誰の子よ!って思ったが、間違いなく私と夫の子どもだ。
似てないのは脳みそだけで、見た目は夫にそっくりなのよね。

「携帯電話? いいわよ。ここにサインをすればいいのね?」
同意書を受け取ってササっとサインをする。
「でも、どうして急に携帯電話が必要になっ
たの?」

息子は自分に必要ない物には一切興味を示さない。
それは小さい頃からそうだった。

友達はいない。
いつも一人で勉強をしている。
運動会や遠足も面倒臭そうに参加する。

私と夫は勉強なんて人並みでいいから、もっと子どもらしい遊びを楽しんでほしいと、海水浴や魚釣り、山登りなどのレジャーや、農業体験、工場見学、音楽や劇団の舞台など、ありとあらゆるところを連れまわした。

しかし、本人が興味を示さないのだから仕方がない。
これもこの子の個性だと割りきった。

「恋人が出来たんだ。友人が言うには恋人には用がなくても電話するものらしい」

は?恋人?友人?はぁぁ?

「今週の土曜日にその恋人と携帯ショップへ行く約束をした」

声の震えを押さえつつ何とか言葉をひねり出す。
「同じ学校の子?」
「同じクラスだ」

冬馬は、考えていることを頭のなかで簡潔に纏めて話をする。
その物言いは高圧的で上から目線に聞こえてしまう。
本人に悪気はないのだが、周りに誤解される事はしょっちゅうだ。
だからなかなか友達と上手くいかない。

中学生の頃に一人だけ仲良くなった子がいたが、彼もまた冬馬と同じ天才型だったから気が合ったのだと思う。
冬馬が高校受験に失敗してからは疎遠になってしまったけれど。

そんな冬馬に恋人ができた?友人も?

「どんな子なの?」

どんな子なら冬馬と恋人になるのかしら。
やっぱり同じ天才型のお嬢さんなの?

「あまり成績は良くないが、自分に向き合う努力が出来る人。他人を思いやる事が出来る優しい人だ。皆から好かれている。」

息子が自然な笑顔で恋人の事を語る。
冬馬のこんな顔は生まれて初めてだ。
ああ、きっと大丈夫。

「素敵なお嬢さんなのね、お母さんも会ってみたいわ。良ければ近いうちに連れていらっしゃい」
「ああ、彼女に聞いてみる」



その日の夜、さっそく夫に報告すると私以上に驚いて、そして喜んだ。

「なんて名前の子だ?」
夫に聞かれて名前を聞き忘れていた事に気が付いた。
私は昔からいつもどこか抜けている。
冬馬の脳みそ、爪の先程でいいから分けてくれないかしら。


──────────
46~初おでかけ  へ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜

アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。 そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。 とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。 主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────? 「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」 「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」 これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~

Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが… ※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。 ※設定はふんわり、ご都合主義です 小説家になろう様でも掲載しています

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

処理中です...