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43 ロマンチストsideママ
しおりを挟むママ目線
「ママ、私今週の土曜日、友達と出かけて来るね」
友達と、って誰かしら?
早苗ちゃんやありさちゃんならそう言うはずよね。
娘のゆかりは、しばらく前まで思春期の反抗期だった。
そのうち落ち着くだろう、とは思っていたけれどやっぱり心配だった。
だってあんなに派手な、露出の多い格好をしていて、もし事件にでも巻き込まれたり、悪い男に唆されたりしたら・・・・・・って。
親としては当然よね。
可愛い我が子のことだもの。
それが終わったのは突然だった。
ある日、学校から帰って来るなり、お化粧を落として髪を黒く染め直した。
そして、私と夫にガングロギャルをやめると宣言した。
それはもう嬉しかったわ。
思わず涙がこぼれそうになるくらいに。
格好だけでなく、私たちに対する態度も変わった。
お菓子を作っても『太るからいらない』って一言だったのが、今では『ママのお菓子美味しい!』とか『今度一緒に作ってもいい?』
なんて言ってくれる。
『ありがとう』という言葉もよく使うようになった。
きっと、何か変わろうと思うきっかけがあったはずだと思っているのだけど、やっぱり簡単には聞けないじゃない?
いくら反抗期が終わったといっても、年頃の女の子だもの。
「誰と行くんだ?」
夫がズバリと聞いた。
すごいわね。
ちょっとデリカシーに欠けるけど、私も気になってたからまあ、いいわ。
「み、三宅君と・・・・・・」
は?『三宅君?』誰かしら?
初めて聞く名前だわ。
ゆかりの顔が一瞬で赤く染まった!
その反応はつまり、そういうことかしら?!
「ああ、彼か」
ってあなた、知ってるの?!
「あなたも知ってる子なの?」
平静を装いつつも、夫をチラリと睨んだ。
「前にゆかりを迎えに行ったときに会ったんだよ。一言あいさつしただけだ」
誤魔化すように頭を掻きながら夫が答える。
もう、いいわ! 私だってズバッと聞いちゃうんだから!
「お付き合いしてるの?」
努めて軽い口調で聞いてみた。
「おおお付き合いというか、えっとまあ、うん」
赤い顔が更に赤くなった。
耳も、首まで真っ赤だ。
夫はどこか遠くを見ている。
現実逃避ね。
「どんな子なの?同級生?」
金髪のチャラチャラした子だったらショックだわ!
ゆかりが好きなら仕方ないけれど。
「うん、同じクラス。私が倒れたとき蘇生処置してくれたの、三宅君なんだよ」
なんてこと!!
「まあ! そうだったの?! 近くにいた男子生徒が蘇生処置をしてくれたって聞いていたから、お礼をしたいって思ってたのよ!」
その男子生徒の適切な処置がなければ、命を落としていた可能性が高いとお医者さんから言われた。
感謝してもしきれない。
お礼をしたいと、その男子生徒の名前を先生に聞いたけれど『本人が気にしないでほしいと言っている』ということで教えてもらえなかった。
その男子生徒とお付き合いをしているなんて、まるでドラマのような展開じゃないの!
一瞬で私の頭にお花が咲いた。
年甲斐もなく恥ずかしいけれど、昔からロマンチストなのよね、私。
「一度ちゃんと会ってお礼が言いたいわ。今度、彼の都合のいい時で構わないから、ぜひ連れていらっしゃいな。」
「うん! また学校で聞いてみる!」
恥ずかしそうな顔をしながらも嬉しそうに言う娘の姿は本当に可愛らしかった。
──────────
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