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38 嬉し泣きside三宅冬馬

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  side三宅冬馬

川上が倒れたあの日から、俺は何も手に付かなかった。

担任から伝えられたのは、川上は病院に運ばれた後、呼吸は戻ったが意識が戻らない、ということだけだった。

このまま意識が戻らなければ植物状態か、
戻ったとしても何らかの後遺症が残る可能性が高い。
最悪は脳死・・・・・・
そこまで考えて激しく首を振った。
違う、川上は強い。絶対に大丈夫だ!
君がいなくなるなんて、そんなことがあるはずがない。

君がいないければ、俺は生きている意味さえわからない。
もう、君を好きになる前の自分には戻れない。
どんな状態でもいい。
君が生きていてくれるなら、だからお願いだ、何でもする、だから・・・・・・


「川上の親御さんから連絡が来たぞ! 意識が戻ったらしい! 特に後遺症もなく話も出来ているということだ!! 」

川上が倒れてから一週間後の朝のホームルーム。
担任の教師が興奮した様子でみんなに告げた。

クラスが一気に沸き立った。
「マジか!! よっしゃぁぁ!」
「ゆかり、すごい! 頑張ったんだ!」
「うぉー、よかったぁ!」
「三宅! よかったな!」
「え、み、三宅、泣くなよぉ」

俺は泣いた。
嬉しくて嬉しくて、ただ泣いた。
拭うことも忘れ、次から次へと溢れ出る涙が机の上にボタボタと落ちる。

「三宅のおかげだ。お前の蘇生処置がよかったんだ。医者も誉めてたらしい。俺は教師なのに、お前の指示がなければ動くこともできなかった。反省するばかりだよ。」
先生が涙ぐみ、俺の肩を叩いた。

「それな! あん時の三宅、マジ凄かったし!」
「そーそー! 三宅がカッコいいとかヤバいっしょ!」
俺は止まらない涙に言葉も出せず、頷くだけだった。

「お見舞い行くべ!!」
お調子者の提案に、先生が首を振る。
「親御さんが言うには、まだ意識が戻ったばかりで安定してないこともあって、お見舞いはご遠慮ください、とのことだ。」
「あーだよな、うん」
「電話ならいいかなぁ」
「いや、病院だからな、無理だろう。退院したらまた元気な川上に会えるんだ、慌てるな。」
先生が珍しく教師らしい口調で言う。
クラスの全員が嬉しそうに頷いた。

その六日後には退院の連絡があり、週明けの月曜日から登校するということだった。

またみんなが沸き立って喜んだ。
俺も今度は泣かなかった。
みんなと一緒に笑った。

川上に会いたい。
君の顔が見たい。
君の笑顔を思い浮かべる。

早く、早く。月曜日が待ち遠しい。


──────────
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