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35 夢から覚めて
しおりを挟む一人の部屋で目が覚めた。
ああ、終わってしまった。
夢はおしまいだ。
仕事に行かなければ。
シャワーを浴びよう。
汗も涙も流してしまおう。
悲しい夢も、幸せな夢も全部流してしまおう。
ゆっくりと体を起こそうとした私の胸元を誰かが押さえる。
まぶしい逆光で顔が見えない。
「誰?」
──私。
「私?」
──ずっと見てたよ。頑張ったね。
「でも、終わってしまった」
──終わったのは悲しい未来だよ。
「え」
──大丈夫、新しい未来が始まるよ。
「新しい、未来?」
──そう。新しい、幸せな未来。だから帰りな。みんな待ってる。
その瞬間、私の視界はグルリと回転した。
──私も待ってるし。
私の声が聞こえた。
ゆっくりと目を開けるとぼやけた視界にパパとママが映る。
「ゆかり?ゆかり!!先生!先生っ!」
「娘が!目を!」
聞いた事もないような大声を出す二人。
「・・・・・・パパ・・・・マ、心配かけてごめ・・・・さい」
かすれた声でそれだけ言うのが精一杯だった。
そのまま、また気を失った。
それから再び目が覚めたのは三日後のこと。倒れたあの日から六日目の夕方だった。
私は17才だった。
私はここにいた。頑張っていた夢の途中。
目の前に浮かんだ小さな光が言った。
──頑張ったご褒美らしいよ。これから先も頑張れ、だって。
「・・・・・・うん、頑張るよ」
──じゃあね、42歳でまた会お?
「どこに行くの?」
──私は私だもん。私の中だよ。
小さな光はゆっくりと私の胸に吸い込まれて行く。
──幸せになろう。
最後の声はそのまま私の胸の中で響いた。
──────────
36~ゆかりという娘 sideパパ へ
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