30 / 40
30 クラスメートと会話 side三宅冬馬
しおりを挟むside三宅冬馬
「やっべー、ゆかり、凄いじゃん!」
「な、なんでみんながここにいるの?!」
「今日あたり告んじゃねーかって思ってたんだよ、マジ張ってた甲斐があったわ!」
さっきまでの、二人だけの幸せな空気は崩れ去り、クラスメイトの騒がしい声に俺は小さくため息を吐いた。
「馬鹿の冷やかしに用はない。帰れ」
言葉に出てしまった。
一瞬みんなの動きが止まる。
「・・・ってか優しいのはゆかりにだけかよ!」
「告んじゃ、って! なんで知ってるの!」
川上があわあわしている。可愛い。
「クラス全員知ってるわ!」
「教室でもチラチラ目ぇ合わせてさぁ、ゆかりは嬉しそうにしてるし三宅は顔真っ赤にしてさぁ」
俺は、あの時顔を真っ赤にしていたのか。
「あたし、三宅のあんな顔見たの初めてだったし!」
「放課後は図書室でイチャイチャ勉強してさぁ」
「い、イチャイチャとかしてないしっ!」
さっきの涙は乾いたはずなのに、また涙目になっている。可愛い。
「マジでゆかりにだけは優しいし。笑ってんの見てビックリだよ!三宅も人間だったんだって感じー」
「当たり前だ。俺を何だと思っていたんだ。」
「勉強にしか興味のないサイボーグとか?」
「だって三宅って、いっつも怒ったみたいな顔して勉強ばっかしてさぁ。しゃべってるとことか見たことなかったしぃ?」
「会話が合わない相手と喋る必要性は感じないからな」
「辛辣!」
馬鹿供が、やいのやいのとうるさい中、聞き捨てならないセリフが聞こえた。
「あーあ、俺、ゆかりのこと狙ってたのにさぁ。マジでこんなヤツでいーのかよぉー」
金髪のチャラ男が川上の肩に手を置いた。
こいつはよく彼女の周りをうろちょろしている。
彼女に触るな。
「離れろ。前から思っていたが、お前は川上さんと距離が近すぎる」
「うわ!ヤっべ、睨まれたし!」
チャラ男はヘラヘラと笑って彼女の肩から手を離した。よし。
「三宅ってやきもちとか焼くんだねー、マジウケるー」
「そうか、ウケたか。それは良かった」
川上を見ると俺を見て笑っていた。
「どうした?」
「三宅君とみんなの会話が面白くて」
そう言われて初めて、俺はこいつらと普通に話している事に気づいた。
馬鹿で低能な奴らと会話をする事はないと思っていたのに。
俺は今までの自分が馬鹿らしくなって笑ってしまった。
───────────
31~神様、やっぱり駄目ですか? へ
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
全て殿下の仰ったことですわ
真理亜
恋愛
公爵令嬢のアイリスは、平民のサリアを虐めたと婚約者のイーサンに婚約破棄を告げられる。理由はサリアに嫉妬したからだと言う。だがアイリスは否定し「家畜に嫉妬する趣味はありませんもの」と言い放つ。平民であるサリアを家畜扱いするアイリスにイーサンは激昂するがアイリスは「殿下が仰ったことではありませんの? お忘れですか?」と言ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる