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25 テストの結果は
しおりを挟む緊張と不安の中で挑んだテストだったけど、かなりうまくいったと思う。
三宅冬馬がこの問題は出る、と言ったところは、ほとんどそのまま出た。
こんなに解答欄を埋めることができたのは生まれて初めてだった。
明日には全ての答案が返って来るだろうから、結果が出次第、三宅冬馬に報告に行くつもりだ。
・・・・・・でも、やっぱりお礼だけでも先に言っといた方がいいよね。
図書室に向かう三宅冬馬を追いかけた。
『そうか、それは良かった。結果が楽しみだな。』
そう言って笑ってくれた三宅冬馬の顔は本当に格好いいと思う。
目も鼻も口も、綺麗に整っているからか、
黙って無表情でいると、とても冷たそうに見えてしまう。
そういうところも近寄りがたい要因のひとつなんだろうな。
もっと笑ってほしい。
明日は一緒に答え会わせしてくれると約束してくれた。
三宅冬馬の勉強の邪魔にならないように気を付けなきゃ。
私が邪魔したせいで、T大に落ちたりしたらシャレにならない。
未来が変わってしまう。
いや、未来は変えたいんだけどね!
自分の未来も勿論変えたいと思う。
だけど、何よりもまず三宅冬馬の未来だ。
彼が殺人犯になって自殺するなんて、そんな未来は絶対、絶対駄目だ。
彼は、彼の努力に見合う、幸せな未来を手に入れるべきだ。
彼の望む本当の幸せを。
返ってきたテストは予想以上の結果だった。
先ず国語、なんと72点!
すごくない?!ヤバいでしょ!
社会も理科も60点越えとかマジあり得ない!
英語も50点越えた。
数学は46点だったけど計算問題は完璧だった!
どれもクラス平均くらいの点数だけど、赤点のない答案用紙なんて初めてで、私はもう空でも飛んでしまえるくらい有頂天になっていた。
早苗とありさもすごく喜んでくれた。
パパとママの驚く顔が目に浮かぶ。
先生もビックリしてた。
三宅冬馬も喜んでくれるかな。
誉めてほしいな。
頑張ったな、って頭ポンポンとか?
キャー! 素敵過ぎる! ってバカなこと考えていた私は、三宅冬馬の顔を思い浮かべて急に冷静になった。
もし、
「あれだけやって、この程度か」
なんて言われたらどうしよう。
三宅冬馬が、冷たい顔でそんなことを言う姿を想像して怖くなった。
さっきまでの浮わついていた気持ちが少しずつ落ち込んでいく。
勝手な想像に勝手に落ち込むとか、ホントに私は弱いなぁ。
私、こんなんで告白なんかできるのかなぁ。
ガングロギャルなんてイキがってたクセに、本当の私は弱い人間だ。
他人の目が怖い、相手の反応が怖い。
他人が自分のことをどう思っているのか、そればかり気になる。
だから他人に合わせる。
会話も遊びもニコニコ笑って肯定する。
ガングロだって早苗やありさに合わせていただけだ。
ただ自分が楽な方に流されているだけ。
そんな自分を変えたいと、未来を変えたいと、強くなると決めはずなのに、またこんなにウジウジとした馬鹿で弱い自分が顔を出す。
未来を変えるなんて、どうやって?
私が頑張ったところで、なにも変わらなのでは?
手のひらに力をいれてグッと握り込む。
目をギュッと閉じてゆっくり開いた。
嫌だ、諦めたくない、足掻くんだ。
掌を握りしめた。グーパー、グーパー
大丈夫、私は強くなる。
──────────
26~誉めてあげたいと思ったのに
side三宅冬馬 へ
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