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21 毒も吐くし恋もする side三宅冬馬

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side三宅冬馬

川上と目が合った。
今日3回目だ。
数えてるとか気持ち悪いと自分でも思う。
彼女は軽く微笑んでくれるのに、俺は恥ずかしくて下を向いてしまう。

俺と川上が、放課後の勉強会以外で会話をする事はない。

川上の周りはいつも賑やかで、俺とは正反対だ。
女、男に関係なく彼女はクラスの皆と仲が良い。
今も、チャラ付いた男がなにか喋りかけている。
彼女に引っ付くな。離れろ。

そんな中で、常に一緒に行動しているのは『早苗』と『ありさ』で、この二人は、以前の川上と同じくガングロギャルだ。

川上は大抵のクラスメイトにはいつもニコニコとそつなく接しているが、この二人の前ではいろんな表情を見せる。
 
ほら、今もプクっと膨らませたほっぺたが小動物のようで可愛らしい。
きっと信頼しているんだろう。
親友ってやつか。


俺には親友どころか友達すらいない。

中学のときは、仲良くしていた奴もいたが、俺が受験に失敗すると同時に疎遠になった。
底辺私立高校に通う奴と友達だなんて恥ずかしいのだろう。

そいつと俺は同じ高校を志望していて、常に切磋琢磨しあっていた。
点数を競い合い、難しい問題を教え合い、入試の情報を共有し合った。
お互い、志望校に合格した後もずっと気の合う友人でいられると思っていた。
親友だと思っていた。
そう思っていたのは俺だけだったが。

だから俺はT大に行く。

本当はT大でなくてもどこでも受かる。
俺の成績なら海外の有名大学も飛び級で行ける。

でも俺は、あいつらの『目の前』で見せつける。

この学校の馬鹿達にも、親友なんかじゃなかったあいつにも。

『ほらな。俺の方がお前らなんかより、ずっと価値のある人間だろ?』
そう知らしめて嘲笑ってやる。




一日の授業が終わり、待ちに待った図書室での勉強会の時間がきた。

「今日は社会だよね」
 今日は社会の授業はなかったのに、川上はしっかりと教科書を持って来ていた。

 赤ペンと赤シートの使い方を教えると
「すごい!文字が消えた!」
と、ものすごく感動している。

「こんな画期的な勉強アイテムがあったなんて、私知らなかったよ!三宅君は本当に何でも知ってるんだね。すごいなぁ。」

普通にみんな知っているし、使っているが。
そう言ってしまえば、きっと君はまた『自分は馬鹿だ』と傷つくのだろう。

「この赤シートは川上さんにやるから使えばいい」
そう言うと嬉しそうに笑った。
川上が喜んでくれるなら赤シートくらい何枚でもくれてやる。

だからいつも笑っていてほしい。
君の悲しい顔はあまり見たくないんだ。


──────────
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