目覚めはガングロギャル?!黒歴史は封印!清楚系美少女になって初恋の彼の闇落ちを阻止します!!

むぎてん

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19 放課後の勉強会 side三宅冬馬

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 side三宅冬馬

川上がひたすら漢字を書き綴っている。

その顔は真剣そのもので、静かな図書室には彼女がペンシルを走らせるカツカツという音だけが響いている。

ちゃんと集中できるタイプで安心した。
お喋りなどせずに勉強に取り組んでいる。
落ち着いた空間が漂い、俺も集中して勉強できているのは、彼女が真剣に取り組んでいるからだ。

川上がふわふわの黒髪を弄びながら
「うーん、うーん」
と唸った。
きっと、声に出てる事に自分で気付いてないんだろう。
可愛い。


「君の頭は悪くない」
漢字は完璧だった。
「そうかな?」
「ああ、漢字は全て時間以内に憶えたし、文章問題の解答も、文法がちゃんとしてれば余裕で正解だ。」

普通に出来るじゃないか。
頭が悪いと泣く必要など全くない。

「う、嬉しいな。何だかちょっと賢くなったみたい。」

大丈夫だ。君は馬鹿なんかじゃない。もっと自信を持ってほしい。

「ああ、賢くなった。こうして、ひとつづつ賢くなればいい」

そう言うと、顔を真っ赤にして頷く君が可愛くて、もっと誉めてやりたいと思ってしまう。

俺はつい先日までガングロギャルだった川上を、その外見だけで馬鹿にして見下していた。

だがその中身は可愛らしく、素直で努力も出来る人間だった。
他人の内側なんて、見た目だけでは分からないものだと改めて実感する。

とはいえ、俺が優しくしたいと思うのも守ってやりたいと思うのも川上だけで、俺と川上以外の他人などどうでもいい。
その内側を知りたいなど、一ミリも思わない。

馬鹿は馬鹿の世界で生きて行け。
俺は川上が笑ってくれるなら、それだけでいい。

「そろそろ時間なので閉めますけど」
図書委員の声に、川上が顔をあげた。

少しでも一緒にいたい、と思った。
今日も西門ではなく正門から出よう。
遠回りにはなるが、歩けばいいだけだ。

校舎横の渡り廊下を並んで歩く。

「夜は、寝る前に憶えた漢字の復習をしたらいい。寝ている間に定着する」
「そうなんだ。三宅君は何でも知っててすごいね。頑張るよ! ねぇ、明日は何の教科がいいと思う?」
「社会だな。社会は暗記問題が多いから、頑張れば点数も大幅に伸びるはずだ」
「ほんと?!  何だか楽しみになってきちゃった。勉強が楽しみなんて生まれて初めてだよ!」
「それはよかった」
「三宅君が教えてくれるからかなぁ」

そんな嬉しいことをさらりと言って笑う君は、俺の事をどう思っているのだろう。

夕日が川上の髪に当たってキラキラ反射している。
綺麗だ。

触れてみたい、と思った。
優しく髪を撫でて、頬に触れる。
君が嬉しそうに目を細めてふわりと微笑む。

そんな想像をしてから、小さく頭を振った。川上が俺の恋人になるなどあり得ない。
彼女が俺を、勉強しか取り柄の無いような、こんなつまらない俺を好きになるはずがない。
    

──────────
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