目覚めはガングロギャル?!黒歴史は封印!清楚系美少女になって初恋の彼の闇落ちを阻止します!!

むぎてん

文字の大きさ
上 下
19 / 98

19 放課後の勉強会 side三宅冬馬

しおりを挟む
  

 side三宅冬馬

川上がひたすら漢字を書き綴っている。

その顔は真剣そのもので、静かな図書室には彼女がペンシルを走らせるカツカツという音だけが響いている。

ちゃんと集中できるタイプで安心した。
お喋りなどせずに勉強に取り組んでいる。
落ち着いた空間が漂い、俺も集中して勉強できているのは、彼女が真剣に取り組んでいるからだ。

川上がふわふわの黒髪を弄びながら
「うーん、うーん」
と唸った。
きっと、声に出てる事に自分で気付いてないんだろう。
可愛い。


「君の頭は悪くない」
漢字は完璧だった。
「そうかな?」
「ああ、漢字は全て時間以内に憶えたし、文章問題の解答も、文法がちゃんとしてれば余裕で正解だ。」

普通に出来るじゃないか。
頭が悪いと泣く必要など全くない。

「う、嬉しいな。何だかちょっと賢くなったみたい。」

大丈夫だ。君は馬鹿なんかじゃない。もっと自信を持ってほしい。

「ああ、賢くなった。こうして、ひとつづつ賢くなればいい」

そう言うと、顔を真っ赤にして頷く君が可愛くて、もっと誉めてやりたいと思ってしまう。

俺はつい先日までガングロギャルだった川上を、その外見だけで馬鹿にして見下していた。

だがその中身は可愛らしく、素直で努力も出来る人間だった。
他人の内側なんて、見た目だけでは分からないものだと改めて実感する。

とはいえ、俺が優しくしたいと思うのも守ってやりたいと思うのも川上だけで、俺と川上以外の他人などどうでもいい。
その内側を知りたいなど、一ミリも思わない。

馬鹿は馬鹿の世界で生きて行け。
俺は川上が笑ってくれるなら、それだけでいい。

「そろそろ時間なので閉めますけど」
図書委員の声に、川上が顔をあげた。

少しでも一緒にいたい、と思った。
今日も西門ではなく正門から出よう。
遠回りにはなるが、歩けばいいだけだ。

校舎横の渡り廊下を並んで歩く。

「夜は、寝る前に憶えた漢字の復習をしたらいい。寝ている間に定着する」
「そうなんだ。三宅君は何でも知っててすごいね。頑張るよ! ねぇ、明日は何の教科がいいと思う?」
「社会だな。社会は暗記問題が多いから、頑張れば点数も大幅に伸びるはずだ」
「ほんと?!  何だか楽しみになってきちゃった。勉強が楽しみなんて生まれて初めてだよ!」
「それはよかった」
「三宅君が教えてくれるからかなぁ」

そんな嬉しいことをさらりと言って笑う君は、俺の事をどう思っているのだろう。

夕日が川上の髪に当たってキラキラ反射している。
綺麗だ。

触れてみたい、と思った。
優しく髪を撫でて、頬に触れる。
君が嬉しそうに目を細めてふわりと微笑む。

そんな想像をしてから、小さく頭を振った。川上が俺の恋人になるなどあり得ない。
彼女が俺を、勉強しか取り柄の無いような、こんなつまらない俺を好きになるはずがない。
    

──────────
20~おうちでも、勉強するよ!   へ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。

メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~

Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが… ※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。 ※設定はふんわり、ご都合主義です 小説家になろう様でも掲載しています

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜

アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。 そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。 とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。 主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────? 「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」 「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」 これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

処理中です...