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15~俺が、恋? side三宅冬馬
しおりを挟むside三宅冬馬
「あ、えと、べ、別に、何でもない、こともなくて・・・・・・」
彼女が気まずそうに答えた。
「誰かに何か言われたのか? 馬鹿にかぎって他人の事が気になる」
俺はもう、どうにでもなれとばかりに話しかける。
何か喋っていないと、走って逃げ出してしまいそうだ。
「そうじゃないよ・・・・・・。ただ、みんな頑張ってるんだなって思ったら馬鹿で弱い自分が情けなくなっちゃって。私も三宅君みたいに強くなれたらいいのに」
何だ。何でこいつはこんな恥ずかしいセリフを吐くんだ。
こんな顔で、こんなセリフを吐いて、俺にどうして欲しいんだ?
「頭の悪い自分が残念で泣いちゃっただけだから」
この学校の生徒の頭が悪いのは知っている。今さらそれを気にするのか?
泣くほどに?
「頭が悪いのか?」
「うん」
「それで泣いたのか?」
「うん。だってね、もうすぐ中間テストなのに今日の授業、全く解らなくて。教科書も読んでみたけど一ミリもわからないの」
ね、バカでしょ?と悲しそうに笑う彼女の目に、また新しい涙が盛り上がる。
な、泣くな。大丈夫だ、俺がいる。
「解らなければ聞けばいい。俺でよければ教える」
何とかしてやりたいと思った。
「え・・・・と、でも、私・・・・・・」
見ろ、断られるに決まっているだろう。
俺は『陰気でガリ勉でコミュ障』らしいからな。
『大丈夫だ、俺がいる』とか馬鹿じゃないのか。
声に出していなくて良かった。
「わからないところもわからないの。そんな私に教えるとか三宅君に迷惑掛けちゃうよ。」
再びこぼれ落ちそうになる涙をハンカチで抑える。
これは、やはり何とかしてやりたい。
「暗記なら何とかなるんじゃないか?」
「え?」
「暗記問題。俺がテストに出る所をピックアップしてやる。」
「・・・・・・ほんとに?いいの?」
涙を溜めたままの大きな目で俺を見上げるその姿は、思わず守ってやりたくなる。
「でも、三宅君も自分の勉強で忙しいのに・・・・悪いよ」
「大丈夫だ。俺がピックアップしたのを君が暗記している間、俺は俺の勉強をする。終わりに簡単なテストをして、採点すればいいだけだ。」
川上と勉強?
川上が解らない問題を俺が分かりやすく教える?
想像しただけで骨が折れそうだな。
「明日から中間までの放課後、図書室でみてやるよ」
本当にどうして俺はこんなことを言っているんだ。
「ありがとう!三宅君。私、頑張るから、えっと・・・・・・よろしくお願いします!」
可愛いな。
は?待て、何だよ、可愛いとか違うだろ。
いや、まさか・・・・・・俺は川上を好きになったのか?
川上がまだ乾かない瞳で俺に笑いかけた。
これは・・・・・・ダメだ。
何だ俺は、単純すぎるだろ。
──────────
16~パパのお迎え へ
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