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6 パパとママと私
しおりを挟むママに呼ばれてリビングに行くと、美味しそうな匂いが漂っていた。
今夜の夕飯はなんだろう。
ずっとろくなもの食べてなかったからね。
ママのご飯、楽しみ過ぎる!
「あ、パパ帰ってたの? お帰りなさい。ママ、晩ご飯なにー? お腹すいちゃった。」
「「!!!!」」
パパは顎が外れんばかりに、ママは目玉が飛び出さんばかりに驚いている。
そりゃ驚くよね。うん分かる。
私、寝るとき以外は常にガングロメイクしてたし、なんならメイクしたまま寝ちゃうこともあったかな。
「・・・・・・お化粧、落としたの?」
「うん」
「・・・・・・髪、黒くしたのか?」
「うん、パパの白髪染め使っちゃった」
「か、構わないよ」
思春期の反抗期は終わりだ。
素直になる。
照れたり恥ずかしがる必要なんてない。
「あのね、私、もうあんな化粧やめようと思うんだよね。」
「・・・・・・そうか。」
パパはそれだけ言って大きく頷いた。
ママも その目にうっすらと涙を浮かべている。
二人の反応からもわかる通り、ガングロというのは女子高生には人気のファッションだったけど、親世代からの評判はすこぶる悪かった。
親世代から受け入れられないファッションは廃れるのが早い。
ガングロはもちろん、ワンレンのボディコンとかヘソだしのピタTとかね。
逆に親世代に好感を持たれるファッションは爆発的な流行にはならないが、息が長く、ずっと愛される。
シンプル系や清楚系がいい例だ。
テーブルにはハンバーグにポテトサラダ、ホウレン草とウィンナーのバター炒めなど美味しそうな夕食が並んでいる。
「ママ、私、白ごはんちょびっとでいい」
ごはんをよそうママにそう言うと
「ダイエット?」
と心配そうに聞かれた。
ガングロギャルをやめると言い出したばかりだしね。
よからぬ妄想が頭をよぎっちゃったかな。
「あのね、食後にアップルパイ食べたいなって。今日焼いたんでしょ?」
「お、じゃあ俺も白飯は少なめでいい」
パパもアップルパイが食べたいらしい。
ママはほっとしたような、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
久しぶりのママのごはんは凄く美味しかった。
それは特に珍しくもない『いつも』の夕食。
当たり前だと思ってたんだ。
朝には朝ごはん、夜には夜ごはん。チェストを開ければ清潔な服が入っていることも、トイレに入ればトイレットペーパーが常備されてることも。
今の私はそれらが当たり前でない事を知っている。
本当に私は何も分かってなかったんだな。
ハンバーグを頬張った。美味しいよ。
パパ、ママ、ありがとう。
「んー!美味しい」
食後だというのに。
やっぱりママのお菓子は絶品だ。
「ああ、ママは昔から菓子作りが得意だからな、うまい」
パパがそう言うと、ママはニコニコ嬉しそうに笑った。
アップルパイをフォークでつつきながら本題に入る。
「パパ、ママ、さっきも言ったけど私、ガングロやめようと思ってるの。」
「そう」
ママが優しい顔で頷く。
「それでね、あの・・・・・・制服のことなんだけど・・・・・・スカート、あんな短く切っちゃって」
「ああ、確かにあれは短すぎるとパパも思ってたんだ。明日、取扱店に行って新しいスカートを買いなさい」
「いいの? 卒業まであと一年もないのに・・・・・・」
「ゆかりのスカート一枚で困窮するような家庭経営はしてないつもりよ?」
「そうだ、パパはそんな甲斐性なしじゃないぞ?」
パパとママはそう言うと、嬉しそうにあははと笑った。
「明日はあなたもお休みでしょ? 折角だから、みんなでおでかけしましょうよ! ついでにデパートにもいきたいわぁ」
ママが楽しそうにパパにおねだりしてる。
わーい、明日は家族でショッピングだ。
─────────
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