27 / 38
27 国王の死 ~マサヤ目線
しおりを挟む~マサヤ目線
「リリアが・・・・・・死んだ?」
その訃報を受けた時、俺は馬の背に跨がっていた。
初老の従者が、震える声で事の経緯を説明する。
「は、先ほどコンポジット伯爵家から知らせがございました。リリア嬢はレオナルド・ボンディング公爵との婚姻を嫌がり、気がふれた挙げ句に自害なさったと・・・・・・」
「じ、がい・・・・・・?」
「はい。リリア嬢は自らのドレスに火を放ち、それはもう壮絶なご最期だったらしく・・・・・・」
リンが、死んだ?
俺を残して、一人で逝ってしまっただと?
嘘だ!
リンが俺を置いて行くはずがない、俺とリンは前世から繋がれた運命の二人なんだ!
前世で結ばれなかった俺たちは、あの『儀式』を経て、また今世で巡りあったんだ。
10歳のリリアを見た瞬間、前世の記憶を取り戻した。
ああ、リン!
なぜか歳がかなり離れていたが、そんな事はどうでもいい。
息子の婚約者に仕立てあげ、婚姻させる。
そのあとは邪魔な息子と妻を殺してしまおう。
そうすればリンを俺のものにできる。
俺が王でリンが王妃。
今度こそ結ばれる。
リンが俺を受け入れる日が今度こそ来る。
ずっとずっと待ち続けた。
長かった。
やっと、やっとここまで来た。
なのに、あの馬鹿息子トーマスが勝手に婚約破棄なんかしやがった!
俺の計画は丸潰れだ。
しかもあのボンディング公爵家に嫁がせるだと?
あの公爵家はこの国の要塞だ。
下手に手を出すと、俺も国もただでは済まない。
一度は諦めるしかないと涙を飲んだが、やはり諦めきれない。
リン、リン、リン。
寝ても覚めてもリンが頭から離れない。
もう幾晩も眠れていない俺は、乾燥させたケシの花びらを指で砕いて火を付けた。
目を閉じて、その煙を吸い込みながら考える。
俺はリンを追いかけてこの世界にきた。
リンと結ばれないのなら、こんな国なんかどうでもいいじゃないか。
リンが俺を受け入れてくれないのなら、またあの儀式をすればいい。
例えリンと二人死んだとしても、次の世界でまた巡り会えるはずだ。
リンを迎えに行こう!
待ってろリン。
レオナルド・ボンディングなどぶっ殺して、必ずお前を手にいれてやる!
さあ、ボンディング公爵家へ!
リンのもとへ!
着の身着のまま馬に股がり、その脇腹を蹴ろうとした瞬間に届いたリリアの訃報。
「すぐにボンディング公爵家に向かう!この目でリリアの死を確認する!」
「その前に、恐れながら陛下、こちらをお納めください。リリア嬢が最期まで握りしめていたという紙切れにごさいます。なにか文字が書かれているのですが、誰も読むことができず・・・・・・」
「何だと!寄越せ!」
俺は引ったくるように受けとると、端から燃えかけたその紙切れを震える手で開いた。
『マサヤ、次の世界で待ってる。リン』
懐かしい日本語で書かれた短い手紙。
ああ、リン!
俺のことを分かっていたのか!
俺を求めてくれるのか!
待ってろ、すぐに行く!
俺は自分の腰元から短剣を抜いて、その刃を首に当てると、躊躇いもなく強く引いた。
真っ赤な鮮血が飛び散るのが目の端に映る。
俺の体は大きく傾き、そのまま馬の背からどうと落ちた。
「な!陛下!!陛下っ!!!」
「おい!誰か!陛下が!陛下が!」
意識の遠いところで大勢の叫び声が聞こえたが、リンと結ばれる嬉しさで何も考えられない俺は、幸せを胸にリンのもとへと旅立った。
────────────────────
28 リンのマネージャー
~瀬川修目線 へ
20
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
転生した悪役令嬢はシナリオ通りに王子に婚約破棄されることを望む
双葉葵
恋愛
悪役令嬢メリッサ・ローランドは、卒業式のパーティで断罪され追放されることを望んでいる。
幼い頃から見てきた王子が此方を見てくれないということは“運命”であり決して変えられない“シナリオ”通りである。
定刻を過ぎても予定通り迎えに来ない王子に一人でパーティに参加して、訪れる断罪の時を待っていたけれど。険しい顔をして現れた婚約者の様子が何やら変で困惑する。【こんなの“シナリオ”になかったわ】
【隣にいるはずの“ローズ”(ヒロイン)はどこなの?】
*以前、『小説家になろう』であげていたものの再掲になります。
【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。
❄️冬は つとめて
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生した私。昨今、悪役令嬢人気で、逆ざまぁが多いいので。慎ましく、生きて行こうと思います。
作者から(あれ、何でこうなった? )
全力で断罪回避に挑んだ悪役令嬢が婚約破棄された訳...
haru.
恋愛
乙女ゲームに転生してると気づいた悪役令嬢は自分が断罪されないようにあらゆる対策を取っていた。
それなのに何でなのよ!この状況はッ!?
「お前がユミィを害そうとしていたのはわかっているんだッ!この性悪女め!お前とは婚約破棄をする!!」
目の前で泣いているヒロインと私を責めたてる婚約者。
いや......私、虐めもしてないし。
この人と関わらないように必死で避けてたんですけど.....
何で私が断罪されてるのよ━━━ッ!!!
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。
ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい!
…確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!?
*小説家になろう様でも投稿しています
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
転生悪役令嬢は婚約破棄で逆ハーに?!
アイリス
恋愛
公爵令嬢ブリジットは、ある日突然王太子に婚約破棄を言い渡された。
その瞬間、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、自分が火あぶりになる運命の悪役令嬢だと気付く。
絶対火あぶりは回避します!
そのためには地味に田舎に引きこもって……って、どうして攻略対象が次々に求婚しに来るの?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる