1 / 73
第1話:どうして私が?
しおりを挟む
「シャレル・ガスディアノ、ここにいたのだな。すぐに地下牢に連れて行け」
ドアがバンと開いたと思ったら、この国の第二王子、ジョーン殿下と沢山の兵士が部屋に入って来たのだ。
「ジョーン殿下、勝手にお部屋に入って来るとは何事ですか?地下牢に連れて行くとは、一体どういう意味なのでしょうか?」
まっすぐジョーン殿下を見つめ、彼に問いかけた。
「先ほど君の父親でもあるガスディアノ公爵が、人身売買及び脱税、賄賂、そのほか諸々の容疑で逮捕された。さらに僕の婚約者でもある、マリアを毒殺しようとした罪も問われているよ」
「お父様が人身売買に脱税ですって?それにマリア様を毒殺だなんて…一体どういうことですの?」
あの真面目なお父様が、人身売買ですって?あり得ないわ。お父様は恵まれない子供たちの為に、いくつもの孤児院を建てていた様な人なのよ。それなのに…
「とにかく逮捕状が出ている。すぐに地下牢に連れて行け。それから、明日君の父親の裁判が行われる事になっている。きっと君の父親は極刑に処されるだろう」
ニヤリと笑ったジョーン殿下。
「お父様が極刑ですって?そんな…お父様は何もしておりませんわ。それなのに、どうして極刑に?どうかもう一度、きちんと調べ直してください」
「父親の心配をしている場合かい?君は犯罪者の娘なのだよ。君だって、無傷ではいられないだろう。よくて国外追放かな?」
私が国外追放ですって?公爵令嬢として生きてきた私が、国外に追放されたら、きっと生きていけないだろう。なんて人なの!
ギロリとジョーン殿下を睨んだ。
“いつも冷静な君が、そんな風に僕を睨むだなんて…もっと早く、その顔が見たかったな…そうそう、いい事を教えてあげるよ。この国の貴族世界で一番の権力者でもあった君の父親が、兄上を王太子に推し、君を兄上の婚約者にさえしなければ、きっとこんな運命にはならなかった。恨むなら、判断を誤った父親と、無能な兄上を恨むのだね”
耳元でそう呟くジョーン殿下。
「さあ、早くこの女を、地下牢に連れて行け」
騎士たちに抱えられ、そのまま地下牢へと連れて行かされ、閉じ込められたのだ。
薄暗い地下牢。とても気持ち悪い場所だ。
ただ…
私はどうしても、さっきあの男が言った言葉が頭から離れない。
私、シャレル・ガスディアノは、この国で一番権力を持ったガレディアノ公爵家の一人娘。そんな私は、8歳の時、この国の王太子でもあるダーウィン様と婚約を結んだ。ダーウィン様は、ジョーン殿下の双子の兄だ。
才色兼備で周りからも人気の高い第二王子のジョーン殿下に比べ、あまり頭もよくなく大人しいダーウィン様。
我が国では、よほどの理由がない限り、第一子が王位を継ぐことになっている。ただ、大人しくお勉強も武術も苦手なダーウィン様に比べ、優秀で人望もあるジョーン殿下を国王にした方がよいという貴族たちが、大勢いたのも事実だ。
実の母親でもある王妃様ですら、ダーウィン様を嫌い、ジョーン殿下を寵愛していたくらいだ。
王妃様を始め、何人かの貴族がダーウィン様ではなく、ジョーン殿下を王太子殿下にという話が上がっていたらしい。
その為、一時は激しい王位争いが行われていたらしい。王家の伝統を守り、第一王子でもあるダーウィン様を次期国王にと考える貴族、優秀なジョーン殿下を次期国王にと考える貴族、そしてどちらに付くのが良いのかを考える貴族たちの、見えない戦いが繰り広げられていたらしい。
ただ、やはり王家が不安定だと、国力も低下し、しいては平民たちの暮らしまで影響が出始めてしまったとの事。このままではよくないと考えたお父様が
“王家の伝統に基づき、私はダーウィン殿下を次期国王に推します。そして我が娘、シャレルを殿下の婚約者として捧げます”
そう宣言したのだ。お父様はどちらも陛下の血を受け継ぐ正当な子。どちらの王子が次期国王になろうとも、自分は仕えるまで。そう考えていたそうだ。
ただ、さすがのお父様も、これ以上王位争いを繰り広げていてはいけないと考え、動いたとの事。
当時この国で一番権力を持っていたお父様が動いたことで、無事王位争いに決着がついた。そして私は、王太子殿下になられたダーウィン様と婚約を結んだのだ。
ダーウィン様と正式に婚約を結んだ私は、次期王妃になるべく、厳しい王妃教育も耐えた。ジョーン殿下を溺愛している王妃様からの、数々の嫌がらせにも耐えた。それもこれも、ダーウィン様を支えたい一心で。
ただ、ダーウィン様は私の事が苦手だったようで、事あるごとに避けられていた。それでも私は、ダーウィン様と仲良くなりたくて、積極的に話し掛けたり、一緒にお出掛けをしたりして距離を縮めようとしたのだが…
結局ダーウィン様に受け入れられることはなく、最近では1人寂しく王宮で過ごすことも多かったのだ。
「結局私は、ダーウィン様に愛される事はなかったのよね…その上、お父様は罪人として捕まり、私は…」
なぜこんな事になってしまったのだろう。
悔しくて涙が込みあげてきて、1人静かに泣いたのだった。
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いします。
ドアがバンと開いたと思ったら、この国の第二王子、ジョーン殿下と沢山の兵士が部屋に入って来たのだ。
「ジョーン殿下、勝手にお部屋に入って来るとは何事ですか?地下牢に連れて行くとは、一体どういう意味なのでしょうか?」
まっすぐジョーン殿下を見つめ、彼に問いかけた。
「先ほど君の父親でもあるガスディアノ公爵が、人身売買及び脱税、賄賂、そのほか諸々の容疑で逮捕された。さらに僕の婚約者でもある、マリアを毒殺しようとした罪も問われているよ」
「お父様が人身売買に脱税ですって?それにマリア様を毒殺だなんて…一体どういうことですの?」
あの真面目なお父様が、人身売買ですって?あり得ないわ。お父様は恵まれない子供たちの為に、いくつもの孤児院を建てていた様な人なのよ。それなのに…
「とにかく逮捕状が出ている。すぐに地下牢に連れて行け。それから、明日君の父親の裁判が行われる事になっている。きっと君の父親は極刑に処されるだろう」
ニヤリと笑ったジョーン殿下。
「お父様が極刑ですって?そんな…お父様は何もしておりませんわ。それなのに、どうして極刑に?どうかもう一度、きちんと調べ直してください」
「父親の心配をしている場合かい?君は犯罪者の娘なのだよ。君だって、無傷ではいられないだろう。よくて国外追放かな?」
私が国外追放ですって?公爵令嬢として生きてきた私が、国外に追放されたら、きっと生きていけないだろう。なんて人なの!
ギロリとジョーン殿下を睨んだ。
“いつも冷静な君が、そんな風に僕を睨むだなんて…もっと早く、その顔が見たかったな…そうそう、いい事を教えてあげるよ。この国の貴族世界で一番の権力者でもあった君の父親が、兄上を王太子に推し、君を兄上の婚約者にさえしなければ、きっとこんな運命にはならなかった。恨むなら、判断を誤った父親と、無能な兄上を恨むのだね”
耳元でそう呟くジョーン殿下。
「さあ、早くこの女を、地下牢に連れて行け」
騎士たちに抱えられ、そのまま地下牢へと連れて行かされ、閉じ込められたのだ。
薄暗い地下牢。とても気持ち悪い場所だ。
ただ…
私はどうしても、さっきあの男が言った言葉が頭から離れない。
私、シャレル・ガスディアノは、この国で一番権力を持ったガレディアノ公爵家の一人娘。そんな私は、8歳の時、この国の王太子でもあるダーウィン様と婚約を結んだ。ダーウィン様は、ジョーン殿下の双子の兄だ。
才色兼備で周りからも人気の高い第二王子のジョーン殿下に比べ、あまり頭もよくなく大人しいダーウィン様。
我が国では、よほどの理由がない限り、第一子が王位を継ぐことになっている。ただ、大人しくお勉強も武術も苦手なダーウィン様に比べ、優秀で人望もあるジョーン殿下を国王にした方がよいという貴族たちが、大勢いたのも事実だ。
実の母親でもある王妃様ですら、ダーウィン様を嫌い、ジョーン殿下を寵愛していたくらいだ。
王妃様を始め、何人かの貴族がダーウィン様ではなく、ジョーン殿下を王太子殿下にという話が上がっていたらしい。
その為、一時は激しい王位争いが行われていたらしい。王家の伝統を守り、第一王子でもあるダーウィン様を次期国王にと考える貴族、優秀なジョーン殿下を次期国王にと考える貴族、そしてどちらに付くのが良いのかを考える貴族たちの、見えない戦いが繰り広げられていたらしい。
ただ、やはり王家が不安定だと、国力も低下し、しいては平民たちの暮らしまで影響が出始めてしまったとの事。このままではよくないと考えたお父様が
“王家の伝統に基づき、私はダーウィン殿下を次期国王に推します。そして我が娘、シャレルを殿下の婚約者として捧げます”
そう宣言したのだ。お父様はどちらも陛下の血を受け継ぐ正当な子。どちらの王子が次期国王になろうとも、自分は仕えるまで。そう考えていたそうだ。
ただ、さすがのお父様も、これ以上王位争いを繰り広げていてはいけないと考え、動いたとの事。
当時この国で一番権力を持っていたお父様が動いたことで、無事王位争いに決着がついた。そして私は、王太子殿下になられたダーウィン様と婚約を結んだのだ。
ダーウィン様と正式に婚約を結んだ私は、次期王妃になるべく、厳しい王妃教育も耐えた。ジョーン殿下を溺愛している王妃様からの、数々の嫌がらせにも耐えた。それもこれも、ダーウィン様を支えたい一心で。
ただ、ダーウィン様は私の事が苦手だったようで、事あるごとに避けられていた。それでも私は、ダーウィン様と仲良くなりたくて、積極的に話し掛けたり、一緒にお出掛けをしたりして距離を縮めようとしたのだが…
結局ダーウィン様に受け入れられることはなく、最近では1人寂しく王宮で過ごすことも多かったのだ。
「結局私は、ダーウィン様に愛される事はなかったのよね…その上、お父様は罪人として捕まり、私は…」
なぜこんな事になってしまったのだろう。
悔しくて涙が込みあげてきて、1人静かに泣いたのだった。
~あとがき~
新連載始めました。
よろしくお願いします。
233
あなたにおすすめの小説
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。
Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。
そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。
かつての自分は同じ大陸のこことは別の国……
レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。
そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、
シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。
しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。
何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。
そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。
当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い!
そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。
アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……?
前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる