50 / 51
第50話:どこで間違ってしまったの?~カリーナ視点~
しおりを挟む
「カリーナ・ディアル・サムリンを、アレスティー公爵家のクリスティーヌ嬢殺害未遂、及びグレィーソン元侯爵令息のアルフレッド殿に対する名誉棄損及び殺人未遂の容疑で極刑に処す」
多くの貴族が見守る中、裁判官が高らかに宣言したのだ。
「ちょっと待って下さい、私はこの国の王女なのですよ。それに、アルフレッド様は殺そうとなどしておりませんわ!どうして殺人未遂が適用されるのですか?」
裁判官にすかさず抗議をした。そう、私はこの国で一番偉い王族なのだ。それにアルフレッド様を殺そうとなんてしてない。
「静粛に!君はクリスティーヌ嬢を殺害し、その罪をアルフレッド殿に擦り付けようとした。通常公爵令嬢を殺害すれば、極刑に処されるのが一般的だ。その点を考慮すると、公爵令嬢殺害の罪を擦り付けようとしたという事は、アルフレッド殿の命も奪おうとしたと私達裁判官は汲み取ったのだよ。それから、今この場を持って、君の王族の権利をはく奪する。陛下とカロイド殿下の署名もここにある。もう君は王族ではない」
そんな…
「お父様、お兄様、助けて…私、死にたくないですわ」
傍聴席で静かに見守っていたお父様とお兄様に訴えた。お母様はショックで寝込んでいるそうで、この場にはいない。私は彼らにとって大切な家族。きっと許してくれるはず。
「カリーナ、君は重大な罪を犯した。それに対する償いをしなければならない。王族だからといって例外を認めれば、今後貴族たちは、私たち王族に忠誠を誓う事が出来なくなる。それに君は、それだけの罪を犯したのだ」
「すまない、カリーナ。私が育て方を間違えたばかりに…本当にすまない」
冷たい眼差しのお兄様と、涙を流しながら私に謝罪するお父様。
「そんな…」
「カリーナ死刑囚を連れて行きなさい。執行は今日の午後だ」
「今日の午後執行されるですって。ふざけないで!」
私の両脇を抱えた騎士たちに引きずられるようにして、裁判所の外へと連れて行かれる。そして冷たい牢に放り込まれたのだ。
どうして私が、こんな目に合わないといけないの?私はただ、アルフレッド様を愛していただけなのに…
こうなったのもあの女、クリスティーヌのせいよ!許せないわ。あの女さえいなければ、私はアルフレッド様が不幸になる姿を見られたのに…全部あの女のせいよ!
それにレイチェル。あの女も絶対に許さない。お兄様を上手く丸め込んだあの女。あの女がお兄様をそそのかさなければ、今回の件もうまく行ったのに…
薄暗く冷たい地下牢の中で、私は怒りに震えた。あいつらさえいなければ、私は!
その時だった。
誰かの足音が聞こえてくる。もしかして、もう執行の時間?いいえ、執行は午後だと言っていたわ。まだのはず…
不信に思っていると…
「クリスティーヌ、僕はここで見守っているから。本当はこんなところに君を連れて来たくなかったのだよ。それなのに君がどうしてもというから…」
「アルフレッド様、この様な場所に連れてきてしまい本当にごめんなさい。それでは少し彼女と話をしてきますので。すぐに戻りますわ」
この声は!
ゆっくりと近づいてくる女。紛れもない、にっくき女、クリスティーヌだ!体中から怒りが溢れ出す。
「クリスティーヌ!!何をしに来た!お前のせいで私は」
ガタガタと柵を揺すり、怒りを爆発させる。
「カリーナ様、そんなに怒りを爆発させなくてもよろしいではありませんか。私はただ、最後のお別れを言いに来たのですわ」
涼しい顔で私を見つめるこの女!
「私が惨めに殺されるところを見に来たの?この性悪女!お前さえいなければ私は、こんな目にあう事はなかったのよ!」
「そうですわね、確かに私は性悪女ですわ。だって私は、あなたを排除するために自ら毒を飲んだのですから…」
あの女がニヤリと笑ったのだ。その瞬間、背筋が凍り付く感覚に襲われる。何なの、この女…よく考えてみればこの女、私の計画を事前に察知していたのよね。という事は…
「あなた、頭がおかしいのではなくって。あの毒は猛毒なうえ、あり得ない程の激痛が走る毒なのよ。そんなものを自ら飲むだなんて!」
「だってそうでもしないと、あなたを完全に排除できないでしょう?確かに喉が焼ける様な激しい痛み、体が思う様に動かず、ポケットに入れていた解毒剤が飲めなくて、本当に死ぬかと思いましたわ。でも…あなたがいる限り、アルフレッド様の安全は保障されないもの。彼の為なら、毒だろうが何だろうが喜んで飲みますわ」
この女、狂っている。私はもしかして、とんでもない女を敵に回していたという事なの?恐怖から、この女から少しでも離れようと後ずさった。
「珍しい、あなたが私に怯えるだなんて…私はずっとあなたが怖かった。でもそれ以上に、あなたを許せなかった。私の大切なアルフレッド様を傷つけ怯えさせたあなたを!アルフレッド様はずっと、あなたに怯えておりましたので。でも、それも今日でお終い。さようなら、カリーナ様。それでは私は、失礼いたします」
令嬢らしくカーテシーを決め、嬉しそうにアルフレッド様の元に戻っていくあの女。私はあの女に嵌められていたのだ。あの女は、私を排除するためなら手段を択ばない恐ろしい女。そんな女の罠に、まんまとハマってしまうだなんて…
「嫌よ…死にたくない。あんな女のせいで死ぬなんて嫌。誰か、お願い。ここから出して!お願い」
私はどこで間違えてしまったの?最初は上手くいっていたはずなのに…
泣きながら必死に訴えるが、もちろん誰も助けてくれない。嫌よ…こんなところで死にたくはない。どうして私が…
死への恐怖と絶望に怯えながら、ただただ泣き続けたのだった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いします。
多くの貴族が見守る中、裁判官が高らかに宣言したのだ。
「ちょっと待って下さい、私はこの国の王女なのですよ。それに、アルフレッド様は殺そうとなどしておりませんわ!どうして殺人未遂が適用されるのですか?」
裁判官にすかさず抗議をした。そう、私はこの国で一番偉い王族なのだ。それにアルフレッド様を殺そうとなんてしてない。
「静粛に!君はクリスティーヌ嬢を殺害し、その罪をアルフレッド殿に擦り付けようとした。通常公爵令嬢を殺害すれば、極刑に処されるのが一般的だ。その点を考慮すると、公爵令嬢殺害の罪を擦り付けようとしたという事は、アルフレッド殿の命も奪おうとしたと私達裁判官は汲み取ったのだよ。それから、今この場を持って、君の王族の権利をはく奪する。陛下とカロイド殿下の署名もここにある。もう君は王族ではない」
そんな…
「お父様、お兄様、助けて…私、死にたくないですわ」
傍聴席で静かに見守っていたお父様とお兄様に訴えた。お母様はショックで寝込んでいるそうで、この場にはいない。私は彼らにとって大切な家族。きっと許してくれるはず。
「カリーナ、君は重大な罪を犯した。それに対する償いをしなければならない。王族だからといって例外を認めれば、今後貴族たちは、私たち王族に忠誠を誓う事が出来なくなる。それに君は、それだけの罪を犯したのだ」
「すまない、カリーナ。私が育て方を間違えたばかりに…本当にすまない」
冷たい眼差しのお兄様と、涙を流しながら私に謝罪するお父様。
「そんな…」
「カリーナ死刑囚を連れて行きなさい。執行は今日の午後だ」
「今日の午後執行されるですって。ふざけないで!」
私の両脇を抱えた騎士たちに引きずられるようにして、裁判所の外へと連れて行かれる。そして冷たい牢に放り込まれたのだ。
どうして私が、こんな目に合わないといけないの?私はただ、アルフレッド様を愛していただけなのに…
こうなったのもあの女、クリスティーヌのせいよ!許せないわ。あの女さえいなければ、私はアルフレッド様が不幸になる姿を見られたのに…全部あの女のせいよ!
それにレイチェル。あの女も絶対に許さない。お兄様を上手く丸め込んだあの女。あの女がお兄様をそそのかさなければ、今回の件もうまく行ったのに…
薄暗く冷たい地下牢の中で、私は怒りに震えた。あいつらさえいなければ、私は!
その時だった。
誰かの足音が聞こえてくる。もしかして、もう執行の時間?いいえ、執行は午後だと言っていたわ。まだのはず…
不信に思っていると…
「クリスティーヌ、僕はここで見守っているから。本当はこんなところに君を連れて来たくなかったのだよ。それなのに君がどうしてもというから…」
「アルフレッド様、この様な場所に連れてきてしまい本当にごめんなさい。それでは少し彼女と話をしてきますので。すぐに戻りますわ」
この声は!
ゆっくりと近づいてくる女。紛れもない、にっくき女、クリスティーヌだ!体中から怒りが溢れ出す。
「クリスティーヌ!!何をしに来た!お前のせいで私は」
ガタガタと柵を揺すり、怒りを爆発させる。
「カリーナ様、そんなに怒りを爆発させなくてもよろしいではありませんか。私はただ、最後のお別れを言いに来たのですわ」
涼しい顔で私を見つめるこの女!
「私が惨めに殺されるところを見に来たの?この性悪女!お前さえいなければ私は、こんな目にあう事はなかったのよ!」
「そうですわね、確かに私は性悪女ですわ。だって私は、あなたを排除するために自ら毒を飲んだのですから…」
あの女がニヤリと笑ったのだ。その瞬間、背筋が凍り付く感覚に襲われる。何なの、この女…よく考えてみればこの女、私の計画を事前に察知していたのよね。という事は…
「あなた、頭がおかしいのではなくって。あの毒は猛毒なうえ、あり得ない程の激痛が走る毒なのよ。そんなものを自ら飲むだなんて!」
「だってそうでもしないと、あなたを完全に排除できないでしょう?確かに喉が焼ける様な激しい痛み、体が思う様に動かず、ポケットに入れていた解毒剤が飲めなくて、本当に死ぬかと思いましたわ。でも…あなたがいる限り、アルフレッド様の安全は保障されないもの。彼の為なら、毒だろうが何だろうが喜んで飲みますわ」
この女、狂っている。私はもしかして、とんでもない女を敵に回していたという事なの?恐怖から、この女から少しでも離れようと後ずさった。
「珍しい、あなたが私に怯えるだなんて…私はずっとあなたが怖かった。でもそれ以上に、あなたを許せなかった。私の大切なアルフレッド様を傷つけ怯えさせたあなたを!アルフレッド様はずっと、あなたに怯えておりましたので。でも、それも今日でお終い。さようなら、カリーナ様。それでは私は、失礼いたします」
令嬢らしくカーテシーを決め、嬉しそうにアルフレッド様の元に戻っていくあの女。私はあの女に嵌められていたのだ。あの女は、私を排除するためなら手段を択ばない恐ろしい女。そんな女の罠に、まんまとハマってしまうだなんて…
「嫌よ…死にたくない。あんな女のせいで死ぬなんて嫌。誰か、お願い。ここから出して!お願い」
私はどこで間違えてしまったの?最初は上手くいっていたはずなのに…
泣きながら必死に訴えるが、もちろん誰も助けてくれない。嫌よ…こんなところで死にたくはない。どうして私が…
死への恐怖と絶望に怯えながら、ただただ泣き続けたのだった。
※次回、最終話です。
よろしくお願いします。
66
お気に入りに追加
1,274
あなたにおすすめの小説

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

二人のお貴族様から見染められた平民の私。それと嫉妬を隠そうともしない令嬢。
田太 優
恋愛
試験の成績が優秀だったため学園への入学が認められた平民の私。
貴族が多く通う中、なぜかとある貴族の令息に見染められ婚約者になってしまった。
拒否することもできず、都合よく扱われても何も言えない関係。
でもそこに救いの手を差し伸べてくれた人がいた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?
砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。
場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。
全11部 完結しました。
サクッと読める悪役令嬢(役)。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる