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第40話:私の揺るがない決意

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「クリスティーヌ様、私、あの性悪王太子と婚約する事が決まりましたの」

いつもの様に校舎裏へとやって来た私に、真顔のレイチェル様がそんな事を呟いたのだ。ちなみにカロイド殿下がレイチェル様に猛アプローチを掛けている間に、私たちは貴族学院2年生になっていた。そう、私たちが婚約できる年齢、14歳になる歳だ。

どうやら2ヶ月後のレイチェル様のお誕生日に合わせ、正式に婚約&婚約披露パーティーが行われる事になっているらしい。

「ええ、知っておりますわ。父から伺っております。ついにあなた様も折れたのですね。それにしても、まさかレイチェル様がヒーローでもある性悪王太子と婚約するだなんて…」

「私だって考えられなかったわ。でもあの男、毎日毎日コバエの様に私に付きまとって。もう鬱陶しいから婚約してあげたのよ。それに私があの男と婚約した方が、あなたやアルフレッド様にとっても都合がいいでしょう?しっかりあの性悪王太子を尻に敷いてやるから、安心して頂戴」

既に完全に殿下をお尻に敷いているレイチェル様。なんだかんだ言って、幸せそうね。やっぱり親友には幸せになって欲しいもの。

それに…

「クリスティーヌ様、婚約が決まって色々と分かった事がありますの。どうやらカロイド様は、カリーナ殿下に危機感を抱いている様で、陛下や王妃殿下に、あのお部屋を見せたそうですの。さすがにあの部屋を見たお2人も、かなり引いていた様で…それと同時に、カリーナ殿下を他国に嫁がせようと今、よさそうな国や貴族、王族をピックアップしているらしいですわ」

「何ですって…それは本当なのですか?」

「ええ、本当ですわ。カロイド様が言っていたから。ただ、カリーナ殿下が猛烈に嫌がっている様で…」

それはそうでしょう。あの人が絶対にそんな話を受け入れるはずはないわ。

「カロイド様は、何が何でもカリーナ殿下を国から出すと意気込んでいるわ。“あの女がこの国にいる限り、何をしでかすか分からない!僕はたとえ妹でももし何かしたら、その時は容赦するつもりはないから、安心して欲しい”なんて、カッコつけていたから…」

「レイチェル様、きっとカロイド殿下なりに必死に妹の暴走を止めようとしているのでしょう。それをカッコつけているだなんて言うのは、さすがに可哀そうかと…」

あのジャガーンド事件以来、完全に私たちの味方になったカロイド殿下。彼が味方になって下さった事で、私もとても助かっている。

ただ…

「どんどん仲間を失い、たった1人になっている今のカリーナ殿下って、漫画のアルフレッド様の姿に似ていると思わない?愛する人には嫌われ、誰1人として味方がいないのよ…」

「そうね、私もそれを気にしていたの。もしかしたらアルフレッド様の様に、愛するアルフレッド様を亡き者にするかもしれないわ。でもあの性悪女の事だから、アルフレッド様を奪ったあなたも危険ね。2人そろって始末するかもしれないわ」

「そうね…ただ、私たち2人を一緒には始末しないと思うわ。きっとアルフレッド様に絶望を味合わせてから、アルフレッド様を亡き者にしようとするのではないかしら?漫画と同じように…」


「その可能性は高いわね。本当に恐ろしい女。でも、あなた達には絶対に手出しはさせないわ。クリスティーヌ様、カロイド様に頼んでカリーナ殿下に付けさせたスパイからの情報はどうなの?あの女に何か動きはあった?」

実は完全にレイチェル様に惚れてしまったカロイド殿下にスパイを付けさせてもらう様、以前レイチェル様に頼んでもらったのだ。レイチェル様の頼みは何でも聞いてくれるカロイド殿下。二つ返事でOKを出してくれた上、かなり優秀なスパイまで手配してくれたのだ。

スパイからの情報は、私とカロイド殿下が共有している。

「ええ、実は動きがあって。それでね、折り入ってお願いがあるの。あなたにしか頼めない大切なお願いよ」

「もちろんよ。あなたとアルフレッド様の為なら、何だってするわ。一体どうしたらいい?」

「あのね…」

耳元である事を呟く私に、一瞬大きく目を見開いたレイチェル様。

「それは危険すぎるわ…さすがにそんな事は…」

「いいえ、私はやるわ。私ね。クリスティーヌに転生していることが分かった時、とても嬉しかったの。これで私が、アルフレッド様を幸せに出来ると。私はその時誓った。全アルフレッド様推しの無念のはらすためにも、私がこの命をかけて彼を幸せにすると」

「だからって…」

「いっちゃんならわかるでしょう?私の気持ちが。それにあなただって、私と同じことをするのではなくって?」

「確かにそうだけれど…分かったわ。幸がそこまで覚悟を決めているなら、私も全力で協力する。もちろん、カロイド様にも話は付けておくから安心して。幸、私達アルフレッド様推しの想いを、あの女にぶつけてあげましょう。それから、いつでも連絡を取れる様にこれを持っていて」


いっちゃんが渡してきたのは、通信機だ。確かにこれさえあれば、いつでもいっちゃんと連絡が取れる。

「ありがとう、いっちゃん。あなたが転生していてくれて、私は本当に幸せよ。全てが終わったら、祝杯を上げましょう」

「いいわね、私の作った和菓子でお祝いしましょう。幸の好きな和菓子、沢山作るからね」

目に涙を浮かべるいっちゃんを、強く抱きしめた。あなたが傍にいてくれるだけで、私は勇気が湧いてくる。私、必ずアルフレッド様を幸せにして見せるから。
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