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第36話:ピクニックに行きます

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レイチェル様が前世での親友、いっちゃんだったとわかって、1ヶ月が過ぎた。今日は野外学習の日だ。皆で王都にある丘へと向かう。この丘は双子丘と呼ばれていて、同じような丘が2つあるのだ。そこでピクニックをする事になっている。

「レイチェル嬢、今日は君の好きなおかずを持ってきたよ。たくさん食べてね」

嬉しそうにレイチェル様に話しかけているのは、カロイド殿下だ。すっかりレイチェル様が気に入った様で、事あるごとにレイチェル様に寄り添っている。ただ、当の本人は非常に迷惑そうだ。

「カロイド殿下、今日のピクニックは、男女別での行動です。ですので私は、あなた様とお弁当を食べる事は出来ませんわ」

冷たくレイチェル様が言い放った。そう、今日のピクニックは、令嬢と令息別行動なのだ。令嬢は綺麗なお花畑がある左側の丘に。令息たちは美しい湖がある右側の丘に行く予定になっている。

その為、アルフレッド様も朝から不安がっていた。現に今も

「やはりクリスティーヌと別々の丘に行くだなんて心配だ。僕も今から令嬢になるよ」

などと、ちょっと無理がある事を呟いている。

「アルフレッド殿が令嬢になるなら、僕もなろうかな…」

そんなあり得ない話に乗っかかるのは、カロイド殿下だ。

「お2人とも、おバカな事をおっしゃっていないで下さい。ほら、令息たちはあちらに集まっていますよ」

強い口調でレイチェル様が指さしている。

「アルフレッド様、私は大丈夫ですわ。ブローチも付けておりますし。どうか他の令息たちと楽しんできてください」

そっとアルフレッド様の背中を押した。

「しかし…」

やはり不安そうな顔のアルフレッド様。さて、どうしたものか…そう思っていると。

「アルフレッド殿、俺たちと一緒に行こうぜ。クリスティーヌ嬢が心配なのは分かるが、あっちには護衛たちも付いているから大丈夫だよ」

「そうだよ、せっかくだから令息同士楽しもうぜ。ほら、カロイド殿下も」

いつも一緒に食事をしている令息たちが、アルフレッド様とカロイド殿下を連れて行ってくれた。やっぱり持つべきものは友達ね。

「皆様、アルフレッド様の事をよろしくお願いいたします」

ペコリと令息たちに頭を下げると、笑顔で手を振ってくれた。きっと彼らが、しっかりアルフレッド様の面倒を見てくれるだろう。

「アルフレッド様は本当に、クリスティーヌ様が大好きなのですわね。ただ…」

“今日は貴族学院主催とはいえ、場所は丘。その上、令嬢だけでのピクニックよ。もしかしたらあの女が動いてくるかもしれないわ。十分気を付けましょう”

“ええ、分かっているわ。気を引き締めていきましょう”

小声でレイチェル様と話をする。きっと今日、何らかの動きがあるはずだわ。油断は禁物。引き締めていかないと!

「レイチェル様、クリスティーヌ様も、そんなところで怖い顔をしていないで、早速ピクニックを楽しみましょう」

「そうですわよ、見て下さい。あの美しいお花たち」

目の前には美しい花々が。なんて綺麗なのかしら?日本では咲いていない珍しい花が、沢山咲いているわ。

早速レイチェル様や友人たちと一緒に、花を摘んでいく。

「クリスティーヌ様、このお花、押し花にするといいのですよ」

「まあ、押し花ですか。確かに素敵ですわ。早速押し花のしおりを作って、アルフレッド様にプレゼントをしますわ。アルフレッド様は、いつも難しい本を読んでおりますので」

きっとアルフレッド様、大喜びしてくれるだろう。

本当に綺麗な花ね。確かこの花、夜になると光るのよね。こっちの花は、虹色に輝く花だ。

沢山花を摘んだら、さすがにお腹が空いて来た。令嬢たちで集まって、お昼ご飯だ。その輪の中には、カリーナ殿下の姿もある。皆でワイワイ言いながら食べる昼食は、一段と美味しい。

「こうやって令嬢だけでお話ししながら食べる昼食もいいですわね。せっかくなので、令嬢トークをしましょう」

「それはいいですわ。令息がいらっしゃると、話せない話もありますものね」

確かに令息がいると話せない話も沢山ある。特に、恋愛関係の話とか。その後は一気に恋愛の話で盛り上がった。やっぱり年頃の女性というのは、世界が違っても恋愛話が大好きなのだ。


「少し話し過ぎてしまいましたわね。せっかくなので、もう一度お花畑に行って参りますわ」

「私も」

話しが終わった後は、再び皆でお花畑に向かった。

「クリスティーヌ様、あなた様の好きな苺大福を沢山持ってきましたの。せっかくなので、2人きりで食べましょう」

嬉しそうに話しかけてきてくれたのは、レイチェル様だ。手には大きなバスケットを持っている。確かに中々2人きりで話をする機会がない。何分、カロイド殿下がずっとレイチェル様に付きまとっているうえ、未だにアルフレッド様がレイチェル様の事を快く思っていないからだ。

ここにはカロイド殿下もアルフレッド様もいらっしゃらない。せっかくなので、レイチェル様とゆっくり話をしよう。

そう思い、2人で歩き出した時だった。
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