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第35話:カロイド殿下の猛アプローチが始まりました
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厨房に着くと、自ら調理を行いながら、料理長に苺大福の作り方を伝授していくレイチェル様。さすが、前世でずっとお店を手伝っていただけの事がある、手際がものすごくいいのだ。
「さすがレイチェル様、手際がいいですわね」
「まさか公爵令嬢の君が、自ら料理をするだなんて。本当に手際がいい」
アルフレッド様も目を丸くして見つめている。
「私は料理が好きなのですわ。後でアルフレッド様と食べてみてください」
「ああ、せっかくだから頂くよ」
いっちゃん、よかったね。大好きなアルフレッド様に、自分の作った苺大福を食べてもらえることになって。
和やかな空気が流れる中、メイドが私たちの元にやって来たのだ。
「お嬢様、その…カロイド殿下がいらっしゃっております」
「えっ?殿下が?申し訳ないけれど、追い返して…」
「やあ、早速苺大福というものを作っているのだね」
いつの間にか殿下が勝手に厨房へとやって来ていたのだ。さすがに勝手に入ってくるだなんて!
「殿下、勝手に我が家に入ってきてもらっては困りますわ」
「夫人に許可を取ったよ。僕がレイチェル嬢を慕っていると話したら、喜んで入れてくれたんだ」
何ですって!お母様め、勝手な事をして!ただ、お母様も私とアルフレッド様の仲に割って入ろうとしていた殿下の事を心配していた。そんな殿下が別の令嬢を好きになった事を聞いて、喜んで入れてしまったのだろう…
苦笑いをしているレイチェル嬢に、目で“ごめんね”と伝える。するとほほ笑んでくれた。きっと許してくれたのだろうが、やはり申し訳ない。
そんな私たちの気持ちとは裏腹に、しっかりとレイチェル様の隣をキープする殿下。
「レイチェル嬢って、なんだかいい匂いがするなって思っていたけれど、こうやってお菓子を自分で作っているからなんだね。君が作ったお菓子、僕にも食べさせてもらえるかい?」
ニコニコしながら、レイチェル様に話しかけているカロイド殿下。
「ええ…構いませんが…」
その後もカロイド殿下は、レイチェル様にベッタリだ。さらに
「君、あまりレイチェル嬢に近づかないでくれ。彼女は未来の僕のお嫁さんになるかもしれない人なのだよ」
「も…申し訳ございません、殿下…」
家の料理長に作り方を伝授してくれているレイチェル様に、少しでも料理長が近づこうとすると、こうやって威嚇するのだ。そのせいで、皆物凄くやりにくそうだ。とにかく早くこの場から立ち去りたいと思ったのだろう。物凄いスピードでレシピを教えていくレイチェル様。料理長も必死に覚えている。
「これで完成ですわ。早速味見をしてみてください」
やっと出来た苺大福。大粒の苺が入っていて、とても美味しそうだ。早速皆で頂くため、客間へとやって来た。
ここでもレイチェル様にピッタリ寄り添って座るカロイド殿下の姿が…
「殿下、暑苦しいので少し離れていただけますか?」
すかさずレイチェル様が距離を取る。
「はっきりと僕に意見するところ、やっぱり素敵だな…早速君が作ってくれた苺大福とやらを頂くよ。あぁ…レイチェル嬢が僕の為に作ってくれた苺大福か…食べるのが勿体ないな…」
「私はクリスティーヌ様とアルフレッド様の為に作ったのです!決してあなた様の為に作った訳ではありませんわ!」
必死にレイチェル様が訴えているが、既に自分の世界に入っている殿下には聞こえない様だ。それはそれは嬉しそうに苺大福を頬張っている。この人、こんな人だったかしら?
いつも胡散臭い笑顔うかべ、何を考えているか全く分からないタイプの人間だった様な気がするのだが…て、殿下の性格なんて今はどうでもいいのよね。早速私も、苺大福を頂く。
「そうよ、この味…やっぱりいっちゃんの作る苺大福は格別ね…」
「いっちゃん?」
しまった、つい前世の名前で呼んでしまったわ。
「えっと…あだ名ですわ。レイチェル様の“イ”をとって、イっちゃんです。でも、さすがに馴れ馴れしいですわよね。レイチェル様、申し訳ございませんでした」
「いえ、気にしないで下さい」
危ない危ない、一応ごまかせた様だけれど、これからは十分気を付けないと。
気を取り直して、アルフレッド様にも苺大福を手渡した。ゆっくり口に含むアルフレッド様。
「これは美味しいね。苺とこの餡がよく合っている。クリスティーヌが気に入るのもわかるよ」
どうやらアルフレッド様も気に入ってくれた様だ。レイチェル様も嬉しそう。ただ、なぜかアルフレッド様をジト目で睨んでいる男が…もしかしてアルフレッド様に嫉妬しているのかしら?
私に好意を抱いていた時ですら、アルフレッド様を睨むなんてことをしなかったあの殿下が…
もしかしたら殿下は、本当にレイチェル様の事を、心から愛してしまったのかもしれない。レイチェル様は、殿下の人格まで変えてしまったのかしら?我が親友ながら、恐るべし…
その後も、レイチェル様にベッタリなカロイド殿下。帰りは嫌がるレイチェル様を、無理やり公爵家まで送っていくと言い張り、レイチェル様の馬車に勝手に乗り込んで、2人で帰って行った。
本当にあの人、あんなキャラだったかしら?
「さすがレイチェル様、手際がいいですわね」
「まさか公爵令嬢の君が、自ら料理をするだなんて。本当に手際がいい」
アルフレッド様も目を丸くして見つめている。
「私は料理が好きなのですわ。後でアルフレッド様と食べてみてください」
「ああ、せっかくだから頂くよ」
いっちゃん、よかったね。大好きなアルフレッド様に、自分の作った苺大福を食べてもらえることになって。
和やかな空気が流れる中、メイドが私たちの元にやって来たのだ。
「お嬢様、その…カロイド殿下がいらっしゃっております」
「えっ?殿下が?申し訳ないけれど、追い返して…」
「やあ、早速苺大福というものを作っているのだね」
いつの間にか殿下が勝手に厨房へとやって来ていたのだ。さすがに勝手に入ってくるだなんて!
「殿下、勝手に我が家に入ってきてもらっては困りますわ」
「夫人に許可を取ったよ。僕がレイチェル嬢を慕っていると話したら、喜んで入れてくれたんだ」
何ですって!お母様め、勝手な事をして!ただ、お母様も私とアルフレッド様の仲に割って入ろうとしていた殿下の事を心配していた。そんな殿下が別の令嬢を好きになった事を聞いて、喜んで入れてしまったのだろう…
苦笑いをしているレイチェル嬢に、目で“ごめんね”と伝える。するとほほ笑んでくれた。きっと許してくれたのだろうが、やはり申し訳ない。
そんな私たちの気持ちとは裏腹に、しっかりとレイチェル様の隣をキープする殿下。
「レイチェル嬢って、なんだかいい匂いがするなって思っていたけれど、こうやってお菓子を自分で作っているからなんだね。君が作ったお菓子、僕にも食べさせてもらえるかい?」
ニコニコしながら、レイチェル様に話しかけているカロイド殿下。
「ええ…構いませんが…」
その後もカロイド殿下は、レイチェル様にベッタリだ。さらに
「君、あまりレイチェル嬢に近づかないでくれ。彼女は未来の僕のお嫁さんになるかもしれない人なのだよ」
「も…申し訳ございません、殿下…」
家の料理長に作り方を伝授してくれているレイチェル様に、少しでも料理長が近づこうとすると、こうやって威嚇するのだ。そのせいで、皆物凄くやりにくそうだ。とにかく早くこの場から立ち去りたいと思ったのだろう。物凄いスピードでレシピを教えていくレイチェル様。料理長も必死に覚えている。
「これで完成ですわ。早速味見をしてみてください」
やっと出来た苺大福。大粒の苺が入っていて、とても美味しそうだ。早速皆で頂くため、客間へとやって来た。
ここでもレイチェル様にピッタリ寄り添って座るカロイド殿下の姿が…
「殿下、暑苦しいので少し離れていただけますか?」
すかさずレイチェル様が距離を取る。
「はっきりと僕に意見するところ、やっぱり素敵だな…早速君が作ってくれた苺大福とやらを頂くよ。あぁ…レイチェル嬢が僕の為に作ってくれた苺大福か…食べるのが勿体ないな…」
「私はクリスティーヌ様とアルフレッド様の為に作ったのです!決してあなた様の為に作った訳ではありませんわ!」
必死にレイチェル様が訴えているが、既に自分の世界に入っている殿下には聞こえない様だ。それはそれは嬉しそうに苺大福を頬張っている。この人、こんな人だったかしら?
いつも胡散臭い笑顔うかべ、何を考えているか全く分からないタイプの人間だった様な気がするのだが…て、殿下の性格なんて今はどうでもいいのよね。早速私も、苺大福を頂く。
「そうよ、この味…やっぱりいっちゃんの作る苺大福は格別ね…」
「いっちゃん?」
しまった、つい前世の名前で呼んでしまったわ。
「えっと…あだ名ですわ。レイチェル様の“イ”をとって、イっちゃんです。でも、さすがに馴れ馴れしいですわよね。レイチェル様、申し訳ございませんでした」
「いえ、気にしないで下さい」
危ない危ない、一応ごまかせた様だけれど、これからは十分気を付けないと。
気を取り直して、アルフレッド様にも苺大福を手渡した。ゆっくり口に含むアルフレッド様。
「これは美味しいね。苺とこの餡がよく合っている。クリスティーヌが気に入るのもわかるよ」
どうやらアルフレッド様も気に入ってくれた様だ。レイチェル様も嬉しそう。ただ、なぜかアルフレッド様をジト目で睨んでいる男が…もしかしてアルフレッド様に嫉妬しているのかしら?
私に好意を抱いていた時ですら、アルフレッド様を睨むなんてことをしなかったあの殿下が…
もしかしたら殿下は、本当にレイチェル様の事を、心から愛してしまったのかもしれない。レイチェル様は、殿下の人格まで変えてしまったのかしら?我が親友ながら、恐るべし…
その後も、レイチェル様にベッタリなカロイド殿下。帰りは嫌がるレイチェル様を、無理やり公爵家まで送っていくと言い張り、レイチェル様の馬車に勝手に乗り込んで、2人で帰って行った。
本当にあの人、あんなキャラだったかしら?
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