上 下
9 / 51

第9話:一体どうなっているのでしょうか?

しおりを挟む
「アルフレッド殿とクリスティーヌ嬢は、とても仲睦まじいのだね。さっきからずっと寄り添っているし」

私達の仲睦まじい姿を見たカロイド殿下が呟いた。そうだろう、私たちはとても仲良しなのだ!

「申し訳ございません、殿下の前だったので、これでも自粛していたつもりだったのですが。殿下のおっしゃる通り、私達は愛し合っておりますし、いずれ結婚する予定でおります。今アルフレッド様は、次期公爵になる為、父の指導の下勉学に励んでおられますの。ね、アルフレッド様」

「はい、私とクリスティーヌは、既に婚約する事が確定しております。ですので、どうかクリスティーヌの事は…」

「ねえ、アルフレッド殿、君は非常に優秀だと聞いているよ。どうだい?僕の妹、カリーナは。実はカリーナが、君を気に入っているんだよ。以前夜会で助けてもらった事があったとの事でね」

なんと!カリーナ殿下はアルフレッド様の事が好きなの?一体どういう事?訳が分からず、カロイド殿下とアルフレッド様の顔を交互に見る。

「確かに以前、カリーナ殿下から好意を寄せられるようなお言葉を頂いた事はございます。ですが、私はクリスティーヌを心より愛しておりますので、丁重にお断りさせて頂きました」

なんと!アルフレッド様はカリーナ殿下の好意を知っていて、断りを入れていたですって!そんな事、漫画には描かれていなかったわ。一体どういう事なの?

「なるほど…分かったよ。そう言えば来月から、貴族学院が始まるね。僕も妹も、君たちに会うのを楽しみにしているんだ。今は2人とも、一つ屋根の下にいるから、お互い依存している部分があるかもしれない。でも、外の世界に出たらどうだろうね。特にクリスティーヌ嬢は、以前会った時と言っている事や行動が、180度違うから…」

ニヤリと笑ったカロイド殿下。やっぱりこの男、腹黒いんだわ!なんて感じが悪いのかしら?

「たとえ生活が変わったとしても、私のアルフレッド様への愛が色あせる事はありせんわ。たとえ何があったとしても!」

私は前世からずっと、アルフレッド様を心から愛していたのよ!彼の為ならたとえ火の中水の中!神様が与えて下さったこのチャンス、何が何でも私は逃がすつもりはない。私の全人生をかけて、アルフレッド様を絶対に幸せにして見せる!こんな腹黒性悪王太子なんかに、壊されてたまるものですか。

「すごい気迫だね。増々気に入ったよ…それじゃあ、僕はもう帰ろうかな。クリスティーヌ嬢、また来月、学院で会おう」

胡散臭いスマイルを向け、部屋から出ていく腹黒王太子。もう二度と我が家に来るなよ!そう心の中で暴言を吐きつつ

「アルフレッド様、殿下がお帰りですわ。一緒にお見送りをいたしましょう」

不安そうな顔をしているアルフレッド様の手を取り、部屋を出ていく。

「お見送りありがとう。それじゃあね」

馬車に乗り込む殿下を見送る。今日はさすがに疲れたわ。

「クリスティーヌ、大丈夫かい?随分と疲れた顔をしているけれど。それから、カリーナ殿下の事だけれど、本当に僕たちは何にもないんだ。それだけは分かって欲しい!」

「カリーナ殿下が一方的にアルフレッド様に好意を抱いているという事ですよね。アルフレッド様はとても魅力的な男性ですもの。カリーナ殿下が興味を持っても仕方がありませんわ。私もカリーナ殿下にアルフレッド様を取られない様に、気を引き締めて行かないといけませんわね」

「クリスティーヌはそのままで十分素敵だよ。それに僕は、カリスティーヌさえ傍にいてくれたらそれだけで幸せなんだ」

「私も、アルフレッド様さえいらっしゃれば幸せですわ。アルフレッド様、今日は私がずっと傍におりますので、どうかご安心ください」

本当は今すぐ物語を整理したいところだが、今は不安そうにしているアルフレッド様を落ち着かせることが専決だ。そう思い、彼の手を取り屋敷に戻ってきた。

「クリスティーヌ、いくらアルフレッドが気になるからといって、殿下を蔑ろにするとはどういう事だ。殿下はお優しい方だから、笑って許してくれていたが。とにかく、お前は公爵令嬢なんだ。もう少し立場をわきまえて行動しろ」

待ち構えていたお父様に怒られた。

「あら、私はただ、自分の気持ちを正直にカロイド殿下に伝えたまでですわ。第一あの男、性格の悪さがにじみ出ておりましたわ。偽善の顔を被った腹黒男なのです」

「こら、クリスティーヌ!お前は少し口の利き方をわきまえろ!とにかくあまりカロイド殿下に無礼を働くな。いいな、分かったな!」

「分かりました。それでしたらカロイド殿下に、私は失礼な女なので、どうか近づかないで下さいと、お父様から頼んでください。はっきり言って、カロイド殿下が近づいてこなければ、私も無礼を働く事はありませんから」

そう笑顔で伝えた。

「全く、クリスティーヌは…いつからこんな娘になったのだろう…少し前までは、大人しくて上品な娘だったのに…」

ブツブツと訳の分からない事を呟きながら、フラフラと去っていくお父様。残念ながら私は、前世の記憶を手に入れたのだ。今までのクリスティーヌと全く違う人格がいるのだから、性格が変わるのも致し方ない。でも、もしかしてアルフレッド様も…

「あの、アルフレッド様、もしかしてアルフレッド様も、今の私は嫌ですか?その…性格が少し変わってしまいましたので…」

近くにいたアルフレッド様に向かって問いかけた。

「クリスティーヌの性格が変わった?いいや…変わっていないよ…むしろ昔の君に戻ったみたいだ。僕はずっと、昔の君に戻って欲しいと願っていた。だから再び僕を受け入れてくれた事が、嬉しくてたまらないんだ。どうかそのままでいて欲しい」

そう言うと、悲しそうに笑ったアルフレッド様。少し前の私のせいで、アルフレッド様は心に深い傷を負ってしまったのね。

「ごめんなさい、アルフレッド様。少し前の私は本当に大バカ者だったのですわ。でもこれからは、心を入れ替えましたのでご安心ください。さあ、今日はずっと一緒に過ごしましょう」

その言葉通り、その日はずっとアルフレッド様と一緒に過ごしたのだった。


※次回、アルフレッド視点です。
よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

処理中です...