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ヒューゴとマリアのIFストーリー

やっとマリアに会えた

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さすがにトイレまで付いてくる令嬢はいない。そう言うと、急いで王宮内へと戻る…ふりをして、中庭に出た。確かマリアはここら辺にいたよな…

過去の記憶を頼りに、小走りで中庭の奥へと進んでいく。すると、泣きそうな顔でキョロキョロと周りを見ているマリアを見つけた。

どうやら迷子になった様だ。この光景、1度目の生のときと同じだ。もしマリアが1度目の生の時の記憶があれば、住み慣れたこの場所で迷子になる事はない。きっとマリアには、記憶が残っていないのだろう。

そう確信した僕は、何食わぬ顔でマリアに近づいた。

「どうしたんだい?こんなところで」

僕が声を掛けると、一瞬びくっと肩を震わせたと思ったら、ゆっくりとこちらを振り向いた。瞳にはうっすらと涙を浮かべている。

やっと…やっとマリアに会えた。それもまだ僕への嫌悪感を抱いていない時のマリアに…

嬉しくて泣きそうになるのを必死に堪えた。すると

「あの…実は道に迷ってしまって。ホールへ戻りたいのですが…」

マリアが僕に訴えてきた。覚えているよ…この光景。1度目の生の時も、こうやって僕に助けを求めて来たのだよね。

「迷子になったのかい?それじゃあ、僕が送ってあげるよ。さあ、おいで」

あの時と同じ言葉をマリアに語り掛けると、そのまま手を取った。柔らかくて温かくて小さな手。この手を、もう二度と離したくはない。

そんな思いが僕を支配する。僕の気持ちとは裏腹に、不安そうなマリア。そうか、彼女は今日がデビュータントだったね。

ふと空を見上げると、美しい月が目に入った。

「ほら、上を見てごらん、月がとても綺麗だよ」

あの時と同じセリフをマリアに投げかける。ゆっくりと空を見上げたマリアが、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。あぁ、やっぱり僕は、マリアが大好きだ。

「月明かりに照らされた君の髪、とても綺麗だね。まるで女神様みたいだ」

無意識にそう呟いていた。僕の言葉を聞き、びっくりしてこちらを見るマリア。そんな彼女に、優しく微笑んだ。マリア、君は僕にとって女神の様な存在なんだ。どうか今回の生では、僕を選んで欲しい。必ず幸せにするから…

そっと心の中で呟いた。

そして、そのままホールへと戻ってきた。

「ヒューゴ殿下、送って頂きありがとうございます。それではこれで」

僕に深々とお辞儀をして、マリアがその場を去って行こうとする。

「待って、よかったら、僕と一緒に踊らないかい?」

僕が声を掛けると、こちらを振り向き大きく目を見開いて驚いている。でも次の瞬間、少し頬を赤らめ

「はい、私でよければ」

そう言って恥ずかしそうにマリアが笑った。それが嬉しくて、急いでマリアの手を取り、ホールの真ん中までやって来た。

マリアと2人で、音楽に合わせて踊り出す。こうやってマリアと踊れるなんて、本当に夢の様だ…つい頬が緩む。ただ、僕は見逃さなかった。僕たちの方を、すごい形相で睨んでいるライアンの姿を。

そうだった。ライアンはずっとマリアが好きだったんだ。僕と違って、1度目の生からずっと、マリアだけを思い続けていたんだ。でも、今回は君には渡さないよ…

ライアンからマリアを隠すように背を向け、ダンスを続けた。そして、あっという間に1曲目が終わってしまった。もう1曲マリアと踊りたい。そう思っていたのだが、曲が終わると同時に、令嬢たちが押し寄せてきた。

「殿下、次は私と踊ってください」

「いいえ、私と!」

マリアを押しのけ、次々とやって来る令嬢たち。

「悪いが僕は、マリア嬢と一緒にもう1曲踊りたいんだ。マリア嬢、付き合ってくれるかい?」

押し寄せる令嬢たちをかわし、その場を去ろうとしているマリアを捕まえた。

「えっ…はい、私でよろしければ…」

困惑しつつも、僕の誘いを受けてくれた。それが嬉しくて、つい僕も頬が緩む。

「マリア嬢は、ダンスがとても上手だね。踊りやすいよ」

「殿下も、とてもお上手ですわ。私、今日がデビュータントの日だったのです。まさか殿下と踊れるなんて、夢の様ですわ」

嬉しそうにマリアがそう言った。

「僕も君と踊れて嬉しいよ。そうだ、ダンスが終わったら、一緒にもう一度中庭を見に行かないかい?」

今日はずっとマリアと一緒にいたい。周りにどう思われようと関係ない。マリアさえいてくれたら…僕は幸せなのだから…

「…はい、私でよろしければ。でも、他の令嬢たちはよろしいのですか?殿下とのダンスを、待っていらっしゃるようですが…」

「ああ、いいよ。僕は君と一緒にいたんだ。ダンスが終わったら、すぐに中庭に行こう」

「はい」

マリアも了承してくれた。そして、2曲目が終わった。案の定、令嬢たちが僕を囲った。

「悪いが今から、僕たちは中庭を散歩する予定だ。邪魔しないでくれ。さあ、マリア嬢、行こうか」

マリアの手を取り、そのまま中庭へと向かう。

「待って下さい、殿下。私たちもご一緒させていただきますわ」

すかさずついて来ようとする令嬢たち。でも、そんな事はもちろんさせるつもりはない。

「僕の言葉が聞こえなかったのかい?僕はマリア嬢と2人で話がしたいんだ。ついてこないでくれ」

きつめの口調で令嬢たちに伝えた。さすがにちょっと言い過ぎたかな?そう思ったが、3度目の生は、絶対に失敗したくない。その為にも、いい人なんてやっていられないのだ。そう自分に言い聞かせた。
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