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第50話:もし次があれば…~ヒューゴ視点~
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クラシエ嬢の処刑を見守った後、僕は自室に戻ってきた。
本当に恐ろしい女だった。でも、僕はそんな恐ろしい女の言う事を信じ、マリアを傷つけた。その代償が今の僕だ。
キラキラと光る美しい銀色の髪、宝石の様な真っ赤な瞳、1度目の生の時、僕が迷子になっているマリアを助けた。あの時、嬉しそうにお礼を言ったマリアが可愛くて、その笑顔が忘れられなくて、恋に落ちた。
でもマリアは、お妃候補争いに参戦すると、相手を罵り、マウントをとり始めた。そんなマリアの姿を見るのは辛かった。それでも、どうしても最初に見たマリアの笑顔を忘れる事が出来なかった。
そして月日は流れ、マリアが僕の婚約者に内定した。
「これでヒューゴ様の奥さんになれるのですね。私、ヒューゴ様の隣に立っても恥ずかしくない、立派な王妃になりますわ」
そう言ってほほ笑んだのだ。きっとマリアは、僕の側にいたい、ずっと一緒にいましょう、そんな意味で言ったのだろう。でも当時の僕は、クラシエの言葉を完全に信じ、立派な王妃になる為に頑張るのであって、僕の事なんてどうでもいいのだろう、そう思ってしまった。
完全にひねくれていた僕は、僕の側に寄り添い、いつも笑顔を向けるクラシエに癒しを求める様になった。彼女を側に置き、彼女が望むがまま、子供も作った。
それでも僕の心は満たされなかった。僕の事なんて好きではない、王妃にしか興味がない、そうクラシエから聞かされても、心のどこかで、マリアに愛されたい、マリアに触れたい、そう思っていたのだ。
いつか
“ヒューゴ様、どうして私を見てくれないのですか?どうか私の元に来てください”
そう言ってくるのを待っていたのかもしれない。でも…そんな日は訪れなかった。なぜなら彼女は、僕と結婚して6年後、命を落としたのだ。
朝メイドが起こしに行った時には、もう息を引き取っていたらしい。
僕は彼女の死を知って、急いで彼女の部屋を訪れた。6年ぶりにまともに見たマリアは、相変わらず美しかった。マリアの頬をホッと撫でる。すると、涙の痕がある事に気が付いた。
メイドの話しでは、マリアはずっと僕が来るのを待っていたらしい。僕をずっと待っていた…その言葉を聞いた時、胸が張り裂けそうになった。僕だって、ずっと君を思っていたのに…
僕は冷たくなった彼女を、力いっぱい抱きしめた。そして声を上げて泣いた。もしも僕が変な意地を張らずにマリアを訪ねていたら、きっと別の未来が待っていただろう。
全てを思い出してから、後悔する毎日だ。後悔したところで、どうしようも出来ないだろう。
「マリアはきっと、僕以外の令息と結婚するのだろう。その相手は、ライアン…」
ライアンは一度目の生の時、侯爵位を弟に譲り、自身は生涯独身を貫いた。きっとマリアと結婚できないなら、独身でいた方がいいと思ったのだろう。僕だって、マリアと結婚できないなら…
僕は部屋から出て、父上の元へと向かった。
「父上、大切な話があります」
「どうした?ヒューゴ」
「父上、僕はやっぱり、王太子の座を兄に譲ります。そして、この国を出ます」
「ヒューゴ、一体何を言っているんだ。そんな事、許される訳…」
「僕はもう、王族も王太子の座も嫌なのです。ただ1人の女性だけを愛せない王族に、興味はありません。父上がなんと言おうと、僕は国から出ます。たとえ国を出た事で野垂れ死んだとしても、本望です!」
「…ヒューゴ、お前、そこまでマリア嬢の事を…でも、マリア嬢にはきっぱりと断られているのだろう?」
「はい、でも僕はもう、マリア嬢以外の女性を愛する事なんてできません。こんな気持ちのまま、正室や側室を迎えるなんて、どうしても無理なのです。それに、マリア嬢が別の男と幸せになる姿を見るのも、耐えられません」
「は~、分かったよ。ただ、王族をやめるということは、旅に出る際護衛は付けてやれないぞ」
「そんな事、分かっております」
「そうか、よほど覚悟が出来ているのだな。わかった…」
どうやら父上は認めてくれた様だ。ただ母上は、ヒステリックに泣き叫び、そのまま部屋にこもってしまった。たとえ母上を傷つけたとしても、ここは譲れない。
そして僕が王太子の座を返上し、旅だつ日が決まった。最後に一目だけでもマリアに会いたいが、残念ながらまだ目覚めていないらしい。最後だし、レィークス侯爵家に会いに行こうか、そう思ったが、奇跡的に貴族学院最後の日に、マリアが登校してきたのだ。
放課後、マリアを呼びだし、僕の気持ちを打ち明けると同時に、旅に出る事も伝えた。目を大きく見開き、驚いているマリア。
もしかしたら、僕を選んでくれるかも?なんて考えたが、そんな事はある訳がない。わかっているが、胸がチクリと痛んだ。
最後にマリアがお別れの言葉を述べ、ライアンの元へ戻って行った。そんなマリアの後ろ姿を、僕はずっと見つめた。
僕の大好きなマリア。きっとこれから、ライアンと幸せになるのだろう。
でも…もしまた時間が遡り、3度目の生を送れるなら、その時はマリアと一緒にいられたらいいな…
そう、僕は密かに期待しているのだ。3度目の生を。その時は、迷わず王太子の座を捨て、家臣に降りよう。そして、マリアだけをずっと愛しよう。僕の大切な人、マリア。どうかその時は、僕を受け入れて欲しい…僕も君だけを愛するから…
※次回、最終回です。
よろしくお願いしますm(__)m
本当に恐ろしい女だった。でも、僕はそんな恐ろしい女の言う事を信じ、マリアを傷つけた。その代償が今の僕だ。
キラキラと光る美しい銀色の髪、宝石の様な真っ赤な瞳、1度目の生の時、僕が迷子になっているマリアを助けた。あの時、嬉しそうにお礼を言ったマリアが可愛くて、その笑顔が忘れられなくて、恋に落ちた。
でもマリアは、お妃候補争いに参戦すると、相手を罵り、マウントをとり始めた。そんなマリアの姿を見るのは辛かった。それでも、どうしても最初に見たマリアの笑顔を忘れる事が出来なかった。
そして月日は流れ、マリアが僕の婚約者に内定した。
「これでヒューゴ様の奥さんになれるのですね。私、ヒューゴ様の隣に立っても恥ずかしくない、立派な王妃になりますわ」
そう言ってほほ笑んだのだ。きっとマリアは、僕の側にいたい、ずっと一緒にいましょう、そんな意味で言ったのだろう。でも当時の僕は、クラシエの言葉を完全に信じ、立派な王妃になる為に頑張るのであって、僕の事なんてどうでもいいのだろう、そう思ってしまった。
完全にひねくれていた僕は、僕の側に寄り添い、いつも笑顔を向けるクラシエに癒しを求める様になった。彼女を側に置き、彼女が望むがまま、子供も作った。
それでも僕の心は満たされなかった。僕の事なんて好きではない、王妃にしか興味がない、そうクラシエから聞かされても、心のどこかで、マリアに愛されたい、マリアに触れたい、そう思っていたのだ。
いつか
“ヒューゴ様、どうして私を見てくれないのですか?どうか私の元に来てください”
そう言ってくるのを待っていたのかもしれない。でも…そんな日は訪れなかった。なぜなら彼女は、僕と結婚して6年後、命を落としたのだ。
朝メイドが起こしに行った時には、もう息を引き取っていたらしい。
僕は彼女の死を知って、急いで彼女の部屋を訪れた。6年ぶりにまともに見たマリアは、相変わらず美しかった。マリアの頬をホッと撫でる。すると、涙の痕がある事に気が付いた。
メイドの話しでは、マリアはずっと僕が来るのを待っていたらしい。僕をずっと待っていた…その言葉を聞いた時、胸が張り裂けそうになった。僕だって、ずっと君を思っていたのに…
僕は冷たくなった彼女を、力いっぱい抱きしめた。そして声を上げて泣いた。もしも僕が変な意地を張らずにマリアを訪ねていたら、きっと別の未来が待っていただろう。
全てを思い出してから、後悔する毎日だ。後悔したところで、どうしようも出来ないだろう。
「マリアはきっと、僕以外の令息と結婚するのだろう。その相手は、ライアン…」
ライアンは一度目の生の時、侯爵位を弟に譲り、自身は生涯独身を貫いた。きっとマリアと結婚できないなら、独身でいた方がいいと思ったのだろう。僕だって、マリアと結婚できないなら…
僕は部屋から出て、父上の元へと向かった。
「父上、大切な話があります」
「どうした?ヒューゴ」
「父上、僕はやっぱり、王太子の座を兄に譲ります。そして、この国を出ます」
「ヒューゴ、一体何を言っているんだ。そんな事、許される訳…」
「僕はもう、王族も王太子の座も嫌なのです。ただ1人の女性だけを愛せない王族に、興味はありません。父上がなんと言おうと、僕は国から出ます。たとえ国を出た事で野垂れ死んだとしても、本望です!」
「…ヒューゴ、お前、そこまでマリア嬢の事を…でも、マリア嬢にはきっぱりと断られているのだろう?」
「はい、でも僕はもう、マリア嬢以外の女性を愛する事なんてできません。こんな気持ちのまま、正室や側室を迎えるなんて、どうしても無理なのです。それに、マリア嬢が別の男と幸せになる姿を見るのも、耐えられません」
「は~、分かったよ。ただ、王族をやめるということは、旅に出る際護衛は付けてやれないぞ」
「そんな事、分かっております」
「そうか、よほど覚悟が出来ているのだな。わかった…」
どうやら父上は認めてくれた様だ。ただ母上は、ヒステリックに泣き叫び、そのまま部屋にこもってしまった。たとえ母上を傷つけたとしても、ここは譲れない。
そして僕が王太子の座を返上し、旅だつ日が決まった。最後に一目だけでもマリアに会いたいが、残念ながらまだ目覚めていないらしい。最後だし、レィークス侯爵家に会いに行こうか、そう思ったが、奇跡的に貴族学院最後の日に、マリアが登校してきたのだ。
放課後、マリアを呼びだし、僕の気持ちを打ち明けると同時に、旅に出る事も伝えた。目を大きく見開き、驚いているマリア。
もしかしたら、僕を選んでくれるかも?なんて考えたが、そんな事はある訳がない。わかっているが、胸がチクリと痛んだ。
最後にマリアがお別れの言葉を述べ、ライアンの元へ戻って行った。そんなマリアの後ろ姿を、僕はずっと見つめた。
僕の大好きなマリア。きっとこれから、ライアンと幸せになるのだろう。
でも…もしまた時間が遡り、3度目の生を送れるなら、その時はマリアと一緒にいられたらいいな…
そう、僕は密かに期待しているのだ。3度目の生を。その時は、迷わず王太子の座を捨て、家臣に降りよう。そして、マリアだけをずっと愛しよう。僕の大切な人、マリア。どうかその時は、僕を受け入れて欲しい…僕も君だけを愛するから…
※次回、最終回です。
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