38 / 62
第38話:助かった様です
しおりを挟む
どれくらいの時間が流れただろう。もう永遠にすら感じられるこの時間。
体中には激痛が走り、ついに吐血してしまった。もしかしたら、もうすぐ私は、天に召されるのかもしれない。
最後にライアンに一目だけでも会いたかったな…
その時だった。
「マリア、大丈夫か?」
この声は、ライアン?そんなはずはない、こんな辺鄙な場所にライアンがいるなんて。きっと会いたいという強い思いが、幻想を見せてくれているのだろう。
そう思ったのだが…
バリバリっと、勢いよく扉を壊す音が。
「マリア!!!」
目の前に現れたのは、やっぱりラアインだ。
「お前…なんて事だ!おい、今すぐ医務室に行って、医者をかき集める様伝えてくれ。マリア、しっかりしろ。すぐに助けてやるからな」
近くにいた男性に指示を出すと、私を抱きかかえたライアンが、走り出した。ふと空を見ると、薄暗くなっていた。
「すまない、俺が目を離したばかりに。とにかく、すぐに楽にしてやるからな」
「ラ…イ…ア…ゴホゴホ」
「バカ、無理に話すな。吐血しているじゃないか。クソ、どうしてこんな事に。マリア、ごめんな。もう二度と怖い思いをさせないと約束したのに…本当にごめんな」
何度も謝るライアン。その時、私の頬に冷たい水滴が落ちてきた。雨?
ふと顔を上げると、ライアンが泣いていた。ライアンが泣いている。ライアンが泣いた姿なんて、初めてみた。
…いいえ、違うわ。私が誘拐されたとき以来だ。
”ごめん、マリア。俺が非力なばかりに、お前に怖い思いをさせてしまった。俺、絶対に強くなって、マリアを守るから。だから、もう二度とあんな怖い思いはさせないから”
そう言ってポロポロと涙を流していた。
あの後すぐに騎士団に入団したライアン。もしかして私を守るために、騎士団に入団したの?
なぜだろう、苦しくてたまらないのに、あの時の記憶がはっきりと蘇って来たのだ。
そうか、ライアンはあの時から、ずっと私を守ってくれていたのね。それなのに、私ったら…
ライアンにあなたは悪くない、私が何も考えずに行動したから悪いの。そう言いたいが、話すことが出来ない。
そうしている間に、医務室に着いた。既に何人もの医師が待機していた。
「この症状は、きっと毒を飲まされたのでしょう。とにかく、すぐに毒を特定しないと」
目の前で医師たちが慌ただしく動いている。その間も、体中が痛くてたまらない。あまりの痛さに、うめき声を上げながら涙を流す。
「マリア、痛いのか?苦しいのか?クソ、頼む、早くマリアを助けてくれ。このままでは本当にマリアが死んでしまう」
必死に医師に縋りつくライアン。私…本当にもうダメかもしれない…
「毒が分かりましたよ。すぐに解毒剤を作りますから、もう少しだけ我慢してください」
私に向かって話しかけてくれる先生。そして…
「よし、完成したぞ。もう大丈夫ですよ。すぐに楽になりますから」
そう言うと先生は、注射を打った。注射なんて大っ嫌いだったけれど、体中が痛すぎて、正直注射の痛みなんて感じなかった。
でも解毒剤を打ってもらっても、まだ息苦しくて体中が痛い。
「おい、マリア。大丈夫か?先生、まだマリアが苦しそうだぞ。一体どうなっているのですか?」
心配そうな顔で私の手を握ってくれるライアン。
「そんなにすぐに解毒剤は効きませんよ。少しずつ効いてくるはずです。それから、マリア嬢に使われていた毒はちょっと厄介で、解毒する際激しい眠気に襲われます」
先生が言った通り、次第に痛みが和らいできて、呼吸もしやすくなってきた。ただ、それと同時に、強い眠気に襲われる。
「ライアン…ありがとう…あい…して…い…」
どうしても気持ちを伝えたくて、“愛している”と言おうとしたのだが、先生が言っていた通り、激しい眠気に襲われてしまい、そのまま私は意識を手放したのであった。
※次回からしばらくライアン視点で話が進みます。
よろしくお願いしますm(__)m
体中には激痛が走り、ついに吐血してしまった。もしかしたら、もうすぐ私は、天に召されるのかもしれない。
最後にライアンに一目だけでも会いたかったな…
その時だった。
「マリア、大丈夫か?」
この声は、ライアン?そんなはずはない、こんな辺鄙な場所にライアンがいるなんて。きっと会いたいという強い思いが、幻想を見せてくれているのだろう。
そう思ったのだが…
バリバリっと、勢いよく扉を壊す音が。
「マリア!!!」
目の前に現れたのは、やっぱりラアインだ。
「お前…なんて事だ!おい、今すぐ医務室に行って、医者をかき集める様伝えてくれ。マリア、しっかりしろ。すぐに助けてやるからな」
近くにいた男性に指示を出すと、私を抱きかかえたライアンが、走り出した。ふと空を見ると、薄暗くなっていた。
「すまない、俺が目を離したばかりに。とにかく、すぐに楽にしてやるからな」
「ラ…イ…ア…ゴホゴホ」
「バカ、無理に話すな。吐血しているじゃないか。クソ、どうしてこんな事に。マリア、ごめんな。もう二度と怖い思いをさせないと約束したのに…本当にごめんな」
何度も謝るライアン。その時、私の頬に冷たい水滴が落ちてきた。雨?
ふと顔を上げると、ライアンが泣いていた。ライアンが泣いている。ライアンが泣いた姿なんて、初めてみた。
…いいえ、違うわ。私が誘拐されたとき以来だ。
”ごめん、マリア。俺が非力なばかりに、お前に怖い思いをさせてしまった。俺、絶対に強くなって、マリアを守るから。だから、もう二度とあんな怖い思いはさせないから”
そう言ってポロポロと涙を流していた。
あの後すぐに騎士団に入団したライアン。もしかして私を守るために、騎士団に入団したの?
なぜだろう、苦しくてたまらないのに、あの時の記憶がはっきりと蘇って来たのだ。
そうか、ライアンはあの時から、ずっと私を守ってくれていたのね。それなのに、私ったら…
ライアンにあなたは悪くない、私が何も考えずに行動したから悪いの。そう言いたいが、話すことが出来ない。
そうしている間に、医務室に着いた。既に何人もの医師が待機していた。
「この症状は、きっと毒を飲まされたのでしょう。とにかく、すぐに毒を特定しないと」
目の前で医師たちが慌ただしく動いている。その間も、体中が痛くてたまらない。あまりの痛さに、うめき声を上げながら涙を流す。
「マリア、痛いのか?苦しいのか?クソ、頼む、早くマリアを助けてくれ。このままでは本当にマリアが死んでしまう」
必死に医師に縋りつくライアン。私…本当にもうダメかもしれない…
「毒が分かりましたよ。すぐに解毒剤を作りますから、もう少しだけ我慢してください」
私に向かって話しかけてくれる先生。そして…
「よし、完成したぞ。もう大丈夫ですよ。すぐに楽になりますから」
そう言うと先生は、注射を打った。注射なんて大っ嫌いだったけれど、体中が痛すぎて、正直注射の痛みなんて感じなかった。
でも解毒剤を打ってもらっても、まだ息苦しくて体中が痛い。
「おい、マリア。大丈夫か?先生、まだマリアが苦しそうだぞ。一体どうなっているのですか?」
心配そうな顔で私の手を握ってくれるライアン。
「そんなにすぐに解毒剤は効きませんよ。少しずつ効いてくるはずです。それから、マリア嬢に使われていた毒はちょっと厄介で、解毒する際激しい眠気に襲われます」
先生が言った通り、次第に痛みが和らいできて、呼吸もしやすくなってきた。ただ、それと同時に、強い眠気に襲われる。
「ライアン…ありがとう…あい…して…い…」
どうしても気持ちを伝えたくて、“愛している”と言おうとしたのだが、先生が言っていた通り、激しい眠気に襲われてしまい、そのまま私は意識を手放したのであった。
※次回からしばらくライアン視点で話が進みます。
よろしくお願いしますm(__)m
48
お気に入りに追加
4,641
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
2025.2.14 後日談を投稿しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる