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第20話:ライアンは確かにカッコいいです

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「すごい声援ね、ライアン様、とても人気があるのね」

ポツリとミリアナが呟いた。確かに凄い声援だ。しばらくすると、練習が始まった。最初は基礎練習から始める様で、走ったり腹筋や腕立て伏せなど、基礎的な訓練を行っていた。ただ、やっている量が半端ない。皆軽く100回以上を何セットもやっているのだ。

「騎士団の訓練って、こんなに厳しいのね…」

ついポツリと呟いてしまう。

「そりゃそうでしょう。この国を守ってくれている部隊なのだから。並大抵な努力じゃあ、騎士団は続けられないとお兄様は言っていたわ。その中でも、上に立つ人たちはそれこそ血の滲むような努力を重ねているのよ」

血の滲むような努力か…

基礎練習が終わると、やっと水分補給が出来る様だ。それでも皆水分を取ると、すぐに稽古場へと戻って行く。そしてすぐに竹刀を取り出し、今度は素振りを行い始めた。

しばらくすると、打ち合いが始まった。そんな中、やはり目立っていたのはライアンだ。ライアンは、次から次へと騎士たちをなぎ倒していく。

自分より体の大きな騎士たちもだ。

「ねえ、見て。ライアン様、副騎士団長様と打ち合いを行う様よ」

ふと別の令嬢がそんな事を言いだした。副騎士団長ですって…そんなにもすごい人と打ち合いをさせてもらえるなんて。それに相手はライアンより頭1つ分大きい。大丈夫なのかしら?

なんだか不安になってきた。

そんな中、2人の打ち合いが始まった。さすが副騎士団長様、ライアンの攻撃を全て受け止めている。でも、ライアンも負けていない。必死に木刀を振るい、副騎士団長様と戦っている。

あんなに真剣な顔のライアン、初めて見たわ…
それでもやはり副騎士団長様は強く、どんどん追い詰められていくライアン。このままだと、負けちゃう…

「ライアン、頑張って!ライアン!!」

気が付くと我を忘れて叫んでいた。私の声が聞こえたのか、また盛り返しだしたが、ただ後1歩と言うところで負けてしまった。

悔しそうに唇を噛むライアン。それでもライアンはとてもカッコよかったし強かった。他の令嬢も私と同じことを思ったのか

「ライアン様、カッコよかったわよね。副騎士団長様と互角に戦えるのですもの…やっぱり素敵だわ」

そう言っていた。

ライアンは5歳から騎士団に入団している。それこそ、本当に辛く厳しい訓練に必死に耐えて来たのだろう。だからきっと、あんなにも強いんだわ…

いつも涼しい顔をしているライアンが、こんなにも一生懸命何かに取り組んでいるなんて…なんだか取り残された様な、寂しい気持ちになった。と同時に、これほどまでに努力しているライアンは、素直に尊敬する。

「やっと休憩に入るみたいよ」

再び稽古場を見ると、確かに休憩に入る様で、皆散り散りに散らばっている。真っすぐこちらに向かって歩いてくるライアンの姿が目に入った。私もすぐにライアンの元に駆けつけようと思った時だった。

「ライアン様~、さっきの打ち合い、とてもカッコよかったですわ。これ、差し入れです。どうか食べて下さい」

「これも、ぞうぞ」

一気に令嬢に囲まれるライアン。なぜだろう…いつもなら“ライアンのどこがいいのかしら?あんなに令嬢たちが群がって”と思っていたのだが、今日はなんだか胸が痛い…

無意識にライアンの元へと急ぐ。

「ライアン、さっきの副騎士団長様との打ち合い、とても素敵だったわよ。あんなにもカッコいいライアン、初めて見たわ」

すっと令嬢たちを押しのけ、ライアンの側へと向かった。私は1度目の生の時、ヒューゴ様をめぐって令嬢たちと熾烈な争いを行っていたのだ。令嬢たちを押しのけるくらい、どうって事はない。

「マリア、ありがとう。でも、負けちゃったけれどな…」

「あら、それでもすごくカッコよかったわよ。それに、あんなにも大変な訓練を毎日やっているのね。私、びっくりしちゃったわ。さあ、疲れたでしょう?こっちでゆっくり休んで」

ライアンの腕を掴み、そのまま少し離れたベンチに腰を掛けた。

「ごめんなさい、私、何も持ってこなかったの。こんな事なら料理長に頼んで、ライアンの好きなお料理を作ってもらってこればよかったわね。ほら、ライアンは家の料理長が作った、お肉のサンドが大好きでしょう。そうだわ、今度見に来るときは、お肉のサンドを作って来るわ」

あなた達は、ライアンの好きなものなんて知らないでしょう?そんな思いで話を進める。

「お肉のサンドか。それは嬉しいな。お前ん家の料理長が作るお肉のサンド、旨すぎるもんな。楽しみにしているぞ」

そう言うと、私の頭を撫でたライアン。もう、子ども扱いして。そんな私たちを見て、なんとか話しに入ろうとする令嬢たちをあしらいつつ、ライアンの側をキープする。

「それじゃあ、俺はもう行くわ。マリア、くれぐれも他の騎士団員たちと話すなよ。話しかけられても無視しろよ」

そう言ってライアンは去って行った。
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