9 / 62
第9話:想像以上に素敵な女性だった~ヒューゴ視点~
しおりを挟む
迎えたお茶会当日。今回の会場は中庭だ。
「ヒューゴ、今日は現時点でお妃候補の打診が来ている令嬢の中から、身分の高い子を選んで呼んだのよ。せっかくだから、しっかり見極めましょうね」
そう言ってほほ笑んだ母上。
そしてお茶会の時間になり、母上と一緒に会場へと足を運んだ。すると、ピンク色のドレスに身を包んだマリア嬢が目についた。他の令嬢は僕の瞳を意識して皆青いドレスを着ている。そのせいか、彼女が良く目立っている。
正直ピンク色のドレスと言うのがちょっとショックだったが、少なくともライアンの瞳の色でもある、エメラルドグリーンのドレスではなかった点に関しては安心した。
あの後色々と2人の関係を調べたが、ただの幼馴染という事がわかった。という事は、まだ僕にもチャンスがあるという事だ。
その為には、彼女の方から僕のお妃になりたいと思ってもらわないといけない。とにかく今日、彼女としっかり話しをしたいと思っている。
僕たちが席に付くと、ものすごい勢いで話し出したのは母上だ。母上は昔から、自分や僕がどれほど素晴らしい人間かを、延々と話すのだ。
父上の話しでは、こうやって自分の素晴らしさを伝える事で、王妃の座を手に入れた事から、未だにその癖が抜けないらしい。
そんな母上の話しを、食い入るように見つめる令嬢たち。ただ、マリア嬢だけは、退屈そうにしていた。そりゃそうだろう、誰が人の自慢話なんか聞きたいものか!
すかさず母上を追い出し、令嬢と僕だけで話をする事にした。これでゆっくりとマリア嬢と話せる、そう思っていたのだが、他の令嬢たちのアピール合戦が始まってしまった。
こんなに必死にアピールされると、逆にちょっと引いてしまう。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、さらにヒートアップしていく令嬢たち。チラリとマリア嬢の方を見ると、目を大きく見開き、令嬢たちを見つめていた。かなり驚いている様だ。
そうか、彼女は令嬢たちの醜い争いに驚いているのだろう。初めて見る令嬢の反応に、増々僕は彼女に興味が湧いた。僕の側にいる令嬢たちは、皆我が我がばかりなのだ。それなのに彼女は…
そんな彼女に向かって、僕はある質問をした。それは、“君は王妃になりたいか”と言うものだ。すると彼女は
「私は…私だけを愛してくれる人と結婚したいと考えております。もちろん、私もただ1人だけの男性を愛したいと思っておりますわ。ですから、王妃様には向いていないかと」
そう言ったのだ。それははっきりと、僕とは結婚するつもりがないという意思表示だ。そう、彼女はたった1人の伴侶を見つけて、暮らしたいと言ったのだ。
たった1人の伴侶か…
そういう令嬢もいるとは母上から聞いていたが、こんな風にはっきり言われると、さすがにショックだ。でも、それと同時に、彼女は権力や地位よりも、自分の気持ちを大切にしたいという事なのだろう。
王太子とか貴族とか関係なく、たった1人の人間と生涯を共にしたい、その殿方だけを見つめていたいし、相手にも自分だけを見て欲しい。その純粋で真っすぐなマリア嬢の想いに、僕の心は完全に彼女に奪われてしまった。
分かっている、僕がどれだけ彼女と結婚したいと言っても、彼女の方に決定権があるのだ。わかってはいるが、どうしても諦めきれない…
そんな僕の想いとは裏腹に、彼女に酷い言葉を吐く令嬢たち。彼女も自分はこの場所にはふさわしくないからと、帰ってしまった。
いいや、君こそ最もこの場所にふさわしい令嬢だ!気が付いたらマリア嬢を追っていた。
そんな僕にはっきりと、“自分はお妃候補になるつもりはない”とはっきりと告げたのだ。その瞳には、強い意志が感じられた。ここまで言われたのだ、僕はもう、諦めるという選択肢しか残されていない。
でも、どうしても彼女を諦める事が出来ないのだ。それに、僕の心に何かが引っかかっている。なんだろう、この感じは…
とにかく、なんとかして彼女をまた誘い出せないだろうか?
でも、ここまではっきりと拒否されたのだ。きっともうお茶会に誘っても来てはくれないだろう。
案の定、翌日侯爵家から正式に、“お妃候補になるつもりはない”との連絡が来た。きっとマリア嬢が、父親でもある侯爵に頼んだのだろう。
「ヒューゴ、あなた随分とマリア嬢の事を気に入っていた様だけれど、向こうがはっきりと断りを入れて来た以上、私たちにはどうする事も出来ないのよ。そもそもあの子、本当に王妃に興味がない様だわ。あんなにもやる気がない子は、たとえ王妃になっても苦労するだけ。諦めなさい。それよりも、他の4人は素晴らしいわ。やっぱりあれくらいやる気がある子じゃないのとね」
「そうだぞ、ヒューゴ。王妃になる様な令嬢は、自分の意見をしっかり言えるうえ、自己アピールが出来る子じゃないと。それに、王妃教育をこなせるだけの教養もないとな。とにかく、並大抵の努力ではダメなんだよ」
父上も母上も、好き勝手な事を言いやがって。そもそも、マリア嬢だって自分の意見をしっかり言える子だ。あの場で、王妃候補になるつもりはないと、はっきり言ったのだから…
もう諦めるという選択肢しか僕には残されていないのはわかっている。それでも、どうしても諦めたくはない。
来月には貴族学院の入学も控えている。貴族学院内で仲良くなれたら、もしかしたらまだ僕にもチャンスがあるかもしれない。
そうだ、彼女に好きになってもらえる様、出来る事はやろう。側室は持たないといけないけれど、彼女だけを愛すれば問題ないはずだ。
僕には彼女を諦めるなんて出来ない。それくらい僕は、彼女が好きなのだから…
「ヒューゴ、今日は現時点でお妃候補の打診が来ている令嬢の中から、身分の高い子を選んで呼んだのよ。せっかくだから、しっかり見極めましょうね」
そう言ってほほ笑んだ母上。
そしてお茶会の時間になり、母上と一緒に会場へと足を運んだ。すると、ピンク色のドレスに身を包んだマリア嬢が目についた。他の令嬢は僕の瞳を意識して皆青いドレスを着ている。そのせいか、彼女が良く目立っている。
正直ピンク色のドレスと言うのがちょっとショックだったが、少なくともライアンの瞳の色でもある、エメラルドグリーンのドレスではなかった点に関しては安心した。
あの後色々と2人の関係を調べたが、ただの幼馴染という事がわかった。という事は、まだ僕にもチャンスがあるという事だ。
その為には、彼女の方から僕のお妃になりたいと思ってもらわないといけない。とにかく今日、彼女としっかり話しをしたいと思っている。
僕たちが席に付くと、ものすごい勢いで話し出したのは母上だ。母上は昔から、自分や僕がどれほど素晴らしい人間かを、延々と話すのだ。
父上の話しでは、こうやって自分の素晴らしさを伝える事で、王妃の座を手に入れた事から、未だにその癖が抜けないらしい。
そんな母上の話しを、食い入るように見つめる令嬢たち。ただ、マリア嬢だけは、退屈そうにしていた。そりゃそうだろう、誰が人の自慢話なんか聞きたいものか!
すかさず母上を追い出し、令嬢と僕だけで話をする事にした。これでゆっくりとマリア嬢と話せる、そう思っていたのだが、他の令嬢たちのアピール合戦が始まってしまった。
こんなに必死にアピールされると、逆にちょっと引いてしまう。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、さらにヒートアップしていく令嬢たち。チラリとマリア嬢の方を見ると、目を大きく見開き、令嬢たちを見つめていた。かなり驚いている様だ。
そうか、彼女は令嬢たちの醜い争いに驚いているのだろう。初めて見る令嬢の反応に、増々僕は彼女に興味が湧いた。僕の側にいる令嬢たちは、皆我が我がばかりなのだ。それなのに彼女は…
そんな彼女に向かって、僕はある質問をした。それは、“君は王妃になりたいか”と言うものだ。すると彼女は
「私は…私だけを愛してくれる人と結婚したいと考えております。もちろん、私もただ1人だけの男性を愛したいと思っておりますわ。ですから、王妃様には向いていないかと」
そう言ったのだ。それははっきりと、僕とは結婚するつもりがないという意思表示だ。そう、彼女はたった1人の伴侶を見つけて、暮らしたいと言ったのだ。
たった1人の伴侶か…
そういう令嬢もいるとは母上から聞いていたが、こんな風にはっきり言われると、さすがにショックだ。でも、それと同時に、彼女は権力や地位よりも、自分の気持ちを大切にしたいという事なのだろう。
王太子とか貴族とか関係なく、たった1人の人間と生涯を共にしたい、その殿方だけを見つめていたいし、相手にも自分だけを見て欲しい。その純粋で真っすぐなマリア嬢の想いに、僕の心は完全に彼女に奪われてしまった。
分かっている、僕がどれだけ彼女と結婚したいと言っても、彼女の方に決定権があるのだ。わかってはいるが、どうしても諦めきれない…
そんな僕の想いとは裏腹に、彼女に酷い言葉を吐く令嬢たち。彼女も自分はこの場所にはふさわしくないからと、帰ってしまった。
いいや、君こそ最もこの場所にふさわしい令嬢だ!気が付いたらマリア嬢を追っていた。
そんな僕にはっきりと、“自分はお妃候補になるつもりはない”とはっきりと告げたのだ。その瞳には、強い意志が感じられた。ここまで言われたのだ、僕はもう、諦めるという選択肢しか残されていない。
でも、どうしても彼女を諦める事が出来ないのだ。それに、僕の心に何かが引っかかっている。なんだろう、この感じは…
とにかく、なんとかして彼女をまた誘い出せないだろうか?
でも、ここまではっきりと拒否されたのだ。きっともうお茶会に誘っても来てはくれないだろう。
案の定、翌日侯爵家から正式に、“お妃候補になるつもりはない”との連絡が来た。きっとマリア嬢が、父親でもある侯爵に頼んだのだろう。
「ヒューゴ、あなた随分とマリア嬢の事を気に入っていた様だけれど、向こうがはっきりと断りを入れて来た以上、私たちにはどうする事も出来ないのよ。そもそもあの子、本当に王妃に興味がない様だわ。あんなにもやる気がない子は、たとえ王妃になっても苦労するだけ。諦めなさい。それよりも、他の4人は素晴らしいわ。やっぱりあれくらいやる気がある子じゃないのとね」
「そうだぞ、ヒューゴ。王妃になる様な令嬢は、自分の意見をしっかり言えるうえ、自己アピールが出来る子じゃないと。それに、王妃教育をこなせるだけの教養もないとな。とにかく、並大抵の努力ではダメなんだよ」
父上も母上も、好き勝手な事を言いやがって。そもそも、マリア嬢だって自分の意見をしっかり言える子だ。あの場で、王妃候補になるつもりはないと、はっきり言ったのだから…
もう諦めるという選択肢しか僕には残されていないのはわかっている。それでも、どうしても諦めたくはない。
来月には貴族学院の入学も控えている。貴族学院内で仲良くなれたら、もしかしたらまだ僕にもチャンスがあるかもしれない。
そうだ、彼女に好きになってもらえる様、出来る事はやろう。側室は持たないといけないけれど、彼女だけを愛すれば問題ないはずだ。
僕には彼女を諦めるなんて出来ない。それくらい僕は、彼女が好きなのだから…
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
4,569
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる