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第40話:ファビレスと心から打ち解けられた気がします
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翌朝、朝練を軽くこなし、騎士団に行く準備をする。
「お嬢様、随分と顔色が良くなられましたね。よかったですわ」
「昨日は心配をかけてごめんね。もう大丈夫よ。それじゃあ、行ってくるわね」
メイドたちに見送られ、馬車に乗り込んだ。今日はお父様も一緒だ。どうやらディーノは一足先に騎士団に向かった様だ。
「おはようございます。お父様」
「お…おはよう、ジャンヌ」
ん?なんだか様子がおかしい気がする。
「お父様、どうかされましたか?」
「い…いや、何でもない。その…最近グラディオンとはどうだ?」
「別に普通ですが。それが何か?」
「いや…何でもない。そう言えば今夜、ガルディス侯爵と夫人、グラディオンが我が家に来る予定になっているから、ジャンヌも早く帰って来いよ。一体何をしに来るのかは分からないがな…」
グラディオンが昨日、ご両親に私たちの事を話したのね。それでグラディオンのご両親が、お父様に今夜会えないか確認が来たのだわ。
窓の外を見ているお父様だが、チラチラとこちらを見ている。グラディオンがご両親を連れて、わざわざ家に来ることになって、色々と勘ぐっているのだろう。
「お父様、さっきからチラチラとこちらをご覧になって。私の顔に何か付いていますか?」
「いや、別にジャンヌを見ていた訳はないよ…今日はいい天気だなって思ってな」
「今にも雨が降りそうな天気ですが…」
「そうだったか。もう騎士団に着いたな。それじゃあ、俺は先に行くから」
そう言って勢いよく立ち上がり、馬車を降りようとした瞬間、思いっきり足をぶつけていた。すごい音がしたけれど、大丈夫かしら?
まさかあのお父様が、あそこまで動揺するだなんて。今日1日、大丈夫かしら?
お父様が少し心配になったが、あれでもあの人は騎士団長だ。多分大丈夫だろう。さあ、私も行かないと。
稽古場に行くと
「ジャンヌ、おはよう。今日も稽古、頑張ろうな」
「おはよう、ジャンヌ」
いつもの様に、笑顔で挨拶をしてくれる仲間たち。
「おはよう、今日も頑張りましょうね」
私も挨拶をする。昨日グラディオンが言っていた通り、皆私に根掘り葉掘り聞いてきたり、茶化したりする素振りはない。いつも通り接してくれる様だ。
「おはよう、ジャンヌ。今日は顔色がよさそうだな。でも、あまり無理はするなよ」
「おはよう、グラディオン。昨日は沢山眠ったから、もう大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい」
「さあ、稽古を始めるぞ」
グラディオンがいつも通り接してくれるので、私もいつも通り接したのだが…
なぜか仲間たちがニヤニヤとしながらこちらを見ている。言葉は発しなくても、態度では表すのね。あの人たち。
…まあいいわ。
それでもいつも通り、皆で稽古に励んだ。
そしてお昼休み。
「ファビレス、昨日は色々とありがとう。あなたのお陰で私、グラディオンに自分の正直な気持ちを伝える事が出来たわ」
ちょうど食堂に向かおうとしていたファビレスを捕まえ、お礼を言った。
「僕は何もしてないよ。それでも大好きなグラディオン隊長とジャンヌが結ばれて本当によかった。ジャンヌ、僕が臆病なばかりに、真実を話すのが遅くなってごめん」
「あら、ファビレスは臆病なんかじゃないわ。だって昨日、私に真実を話してくれたじゃない。本当の臆病者ならきっと、話さずに逃げ出すと思うわ。それに騎士団にも残っているし。あの事件以降、騎士団にも居づらかったでしょうに。それでも辞めずに続けているファビレスは、とても立派で強い人間だと思うわ」
「僕が強い人間?」
「ジャンヌの言う通りだ。ファビレス、あの後あの事件に関わった人間は、ファビレス以外全員辞めて行った。そんな中、ファビレスは1人残り、必死に稽古を続けただろう?そんなファビレスの事を、凄いと思うぞ。それから、ジャンヌに真実を話してくれてありがとう。滅茶苦茶勇気がいっただろう。本当にお前の勇気はすごいよ」
いつの間にか私たちの元にやって来ていたグラディオンが、ファビレスに笑顔を向けている。
「グラディオン隊長、ジャンヌ。ありがとう。僕はあの時、先輩怖さに悪の道に手を染めてしまった。本当に恥ずかしくて情けなかった。そんな僕を許してくれた君たちを、僕は本当に尊敬するよ。2人ともこれからも、僕を仲間として認めてくれるかい?」
「当たり前でしょ。ファビレスは私達の大切な仲間よ」
「そうだぞ、ファビレス。人間は時に間違った道を進んでしまう事もある。その事を悔いて反省し、失敗を糧に出来る人間は少ない。でもファビレスは、過去の過ちを反省し、今に生かそうとしているだろう?そんなファビレスは、立派な騎士団員で俺たちの仲間だ。これからもよろしくな」
「2人とも、ありがとう。これからは2人に少しでも近づけるように頑張るよ」
ポロポロと涙を流すファビレス。そんな彼の背中を優しく撫でるグラディオン。きっともう、ファビレスが間違った道に進むことはない、そう強く思ったのだった。
「お嬢様、随分と顔色が良くなられましたね。よかったですわ」
「昨日は心配をかけてごめんね。もう大丈夫よ。それじゃあ、行ってくるわね」
メイドたちに見送られ、馬車に乗り込んだ。今日はお父様も一緒だ。どうやらディーノは一足先に騎士団に向かった様だ。
「おはようございます。お父様」
「お…おはよう、ジャンヌ」
ん?なんだか様子がおかしい気がする。
「お父様、どうかされましたか?」
「い…いや、何でもない。その…最近グラディオンとはどうだ?」
「別に普通ですが。それが何か?」
「いや…何でもない。そう言えば今夜、ガルディス侯爵と夫人、グラディオンが我が家に来る予定になっているから、ジャンヌも早く帰って来いよ。一体何をしに来るのかは分からないがな…」
グラディオンが昨日、ご両親に私たちの事を話したのね。それでグラディオンのご両親が、お父様に今夜会えないか確認が来たのだわ。
窓の外を見ているお父様だが、チラチラとこちらを見ている。グラディオンがご両親を連れて、わざわざ家に来ることになって、色々と勘ぐっているのだろう。
「お父様、さっきからチラチラとこちらをご覧になって。私の顔に何か付いていますか?」
「いや、別にジャンヌを見ていた訳はないよ…今日はいい天気だなって思ってな」
「今にも雨が降りそうな天気ですが…」
「そうだったか。もう騎士団に着いたな。それじゃあ、俺は先に行くから」
そう言って勢いよく立ち上がり、馬車を降りようとした瞬間、思いっきり足をぶつけていた。すごい音がしたけれど、大丈夫かしら?
まさかあのお父様が、あそこまで動揺するだなんて。今日1日、大丈夫かしら?
お父様が少し心配になったが、あれでもあの人は騎士団長だ。多分大丈夫だろう。さあ、私も行かないと。
稽古場に行くと
「ジャンヌ、おはよう。今日も稽古、頑張ろうな」
「おはよう、ジャンヌ」
いつもの様に、笑顔で挨拶をしてくれる仲間たち。
「おはよう、今日も頑張りましょうね」
私も挨拶をする。昨日グラディオンが言っていた通り、皆私に根掘り葉掘り聞いてきたり、茶化したりする素振りはない。いつも通り接してくれる様だ。
「おはよう、ジャンヌ。今日は顔色がよさそうだな。でも、あまり無理はするなよ」
「おはよう、グラディオン。昨日は沢山眠ったから、もう大丈夫よ。心配をかけてごめんなさい」
「さあ、稽古を始めるぞ」
グラディオンがいつも通り接してくれるので、私もいつも通り接したのだが…
なぜか仲間たちがニヤニヤとしながらこちらを見ている。言葉は発しなくても、態度では表すのね。あの人たち。
…まあいいわ。
それでもいつも通り、皆で稽古に励んだ。
そしてお昼休み。
「ファビレス、昨日は色々とありがとう。あなたのお陰で私、グラディオンに自分の正直な気持ちを伝える事が出来たわ」
ちょうど食堂に向かおうとしていたファビレスを捕まえ、お礼を言った。
「僕は何もしてないよ。それでも大好きなグラディオン隊長とジャンヌが結ばれて本当によかった。ジャンヌ、僕が臆病なばかりに、真実を話すのが遅くなってごめん」
「あら、ファビレスは臆病なんかじゃないわ。だって昨日、私に真実を話してくれたじゃない。本当の臆病者ならきっと、話さずに逃げ出すと思うわ。それに騎士団にも残っているし。あの事件以降、騎士団にも居づらかったでしょうに。それでも辞めずに続けているファビレスは、とても立派で強い人間だと思うわ」
「僕が強い人間?」
「ジャンヌの言う通りだ。ファビレス、あの後あの事件に関わった人間は、ファビレス以外全員辞めて行った。そんな中、ファビレスは1人残り、必死に稽古を続けただろう?そんなファビレスの事を、凄いと思うぞ。それから、ジャンヌに真実を話してくれてありがとう。滅茶苦茶勇気がいっただろう。本当にお前の勇気はすごいよ」
いつの間にか私たちの元にやって来ていたグラディオンが、ファビレスに笑顔を向けている。
「グラディオン隊長、ジャンヌ。ありがとう。僕はあの時、先輩怖さに悪の道に手を染めてしまった。本当に恥ずかしくて情けなかった。そんな僕を許してくれた君たちを、僕は本当に尊敬するよ。2人ともこれからも、僕を仲間として認めてくれるかい?」
「当たり前でしょ。ファビレスは私達の大切な仲間よ」
「そうだぞ、ファビレス。人間は時に間違った道を進んでしまう事もある。その事を悔いて反省し、失敗を糧に出来る人間は少ない。でもファビレスは、過去の過ちを反省し、今に生かそうとしているだろう?そんなファビレスは、立派な騎士団員で俺たちの仲間だ。これからもよろしくな」
「2人とも、ありがとう。これからは2人に少しでも近づけるように頑張るよ」
ポロポロと涙を流すファビレス。そんな彼の背中を優しく撫でるグラディオン。きっともう、ファビレスが間違った道に進むことはない、そう強く思ったのだった。
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