17 / 26
第17話:バージレーション王国が攻めて来たそうです
しおりを挟む
王太子と話をした翌日、王太子が姿を現す事は無かった。もしかして、私の言葉を聞き入れてくれたのかしら?これでやっとあの男から解放されたのね。
そんな私の喜ぶ姿を見たマドレアおば様が
「サーラちゃん、1日来なかっただけで喜ぶのはまだ早いわよ。何か用事があったのかもしれないし。もしかして、サーラちゃんを無理やり攫って、王宮に連れ帰ってしまうかもしれないわ。とにかく、油断は禁物よ!」
そう言って警戒していた。でも1週間が過ぎても、王太子は来る事は無かった。
「ほら、マドレアおば様、きっと私の事は諦めたのですわ。これからは、平和に暮らせますわね」
「そうかねぇ。私は心配でたまらないのだけれど」
どうやらかなり心配症なマドレアおば様。でも、それだけ私を大切に思ってくれているという事だろう。とにかく、おば様の気持ちは物凄く嬉しい。そして平和な日々が過ぎていき、王太子が来なくなってから1ヶ月が過ぎた。
今日もお店は大繁盛だ。その時だった。
「おい、聞いたか?バージレーション王国が、この国に攻めて来たらしいぞ。今、国境付近で騎士たちが必死に戦っている様だが、相手はあのバージレーション王国だろう。負けるのも時間の問題だ」
何ですって、バージレーション王国ですって?バージレーション王国と言えば、かなりの大国だ。巧みな戦術と、圧倒的な戦力で一気に相手の国に攻め入ると有名な国。バージレーション王国に責められた国は、まず勝つことは出来ないと聞く。
「バージレーション王国がせめて来ただって!それは本当かい?」
物凄い勢いで厨房から出て来たマドレアおば様。右手には包丁が握られている。
「マドレアさん!危ないぞ!ああ、兵士の友人から話しを聞いたから、間違いない様だ。既にかなり押されている様で、近いうちに勝敗が決まると言っていたよ」
ため息を吐きながらそう言った常連さん。
「そうかい、ついに動き出したかい…」
「動き出した?」
「いいや、何でもないよ」
そう言うと、慌てて厨房に戻ったマドレアおば様。
「それで、バージレーション王国が勝利したら、この国はどうなるのですか?」
せっかく平和な平民ライフを手に入れたのに!とにかく、今の暮らしを奪われたくはない。
「基本的に攻め込まれた国は、バージレーション王国の王子が国を治めるのが一般的だ。とにかくバージレーション王国は子だくさんだからな。今回は第三王子が指揮を取っているらしい。その王子がどんな人物かで、その国の未来が決まるらしい」
「なるほど、その第三王子がいい人なら、私たちは平和に暮らせるのね」
第三王子がいい人だといいけれど。
「ただ、どっちにしろ、王族は皆殺しか奴隷行き、よくて平民落ちだろう。貴族たちも、どうなる事やら」
そうか…それで、王太子が最近訪ねてこなくなったのね。きっとそれどころではなくなったのだろう。
「皆、そんなに暗い顔をしなくても大丈夫だよ。平民の暮らしなんて、そんなに変わる事はないよ」
そう言ったのは、マドレアおば様だ。おば様が言った通りだといいのだけれど…
それから数日後、正式に我がカステカ王国が、バージレーション王国との戦いに敗れたとの知らせが入った。正直今後どうなるのか物凄く不安だったが、マドレアおば様が言った通り、今のところ私たちの生活に変化はない。
常連客の話では、今後王族や貴族はどうなるかわからないが、ひとまず私達の生活には影響がないとの事で、ホッとした。
今日もいつも通り、お店を開ける為準備をしていると、ドアが開いた。
ガランガラン
あら?もうお客さんが入って来たのかしら?
「ごめんなさい、まだお店は開いていないのですが」
お客様に断りを入れる為、ドアの方を向くと、そこに立っていたのは…
「ただいま、サーラ。アパートに行ったら姿が無かったから、ここかなって思って来てみたんだ。元気そうでよかった」
「オーフェン様!本当にオーフェン様なのですか?」
そう、目の前に立っていたのはオーフェン様だ。嬉しくてオーフェン様に飛びついた。
「サーラ、君が一番大変な時に、側にいられなくてごめんね。でも、これからはずっと一緒だ」
そう言うと、私から離れたオーフェン様。なぜかその場に跪いた。そして美しいオレンジ色の瞳が、真っすぐ私の方を見つめている。
「サーラ、僕は君を心から愛しています。どうか、僕と結婚してくれますか?」
そう言うと、美しい指輪を手渡してくれた。その指輪には、この国を出る時に預かったネックレスと同じ、七色に光る宝石が付いている。
「僕の国ではね。大切な女性に、指輪を贈る習慣があるんだよ。サーラ、愛している。どうか僕と共に生きて行って欲しい」
再びオーフェン様が、私に気持ちを伝えてくれた。これは夢かしら?夢ならどうか覚めないで欲しい。嬉しくて、瞳から涙が溢れでる。
「オーフェン様、私もあなた様を心から愛しているわ。こんな私でよければ、よろしくお願いいたします」
その瞬間、オーフェン様に抱きしめられた。そして、指輪を私の指にはめてくれた。
「ありがとう、サーラ。これからはこの国の王妃として、僕を支えて欲しい」
ん?王妃?オーフェン様の言った意味が分からず、聞き返そうとした時だった。
なぜか周りから大きな拍手が沸き上がる。
「オーフェン国王、おめでとうございます!」
「「「「おめでとうございます」」」」」
え?国王?
ふと周りを見渡すと、バージレーション王国の国旗を持った男性たちが何人もいた。そこには、オーフェン様のお父様のバザダフィ男爵の姿も。一体どういう事なの?
状況がのみ込めず、固まるしかない。
「サーラ、ずっと黙っていてごめん。僕の本当の名前は、オーフェン・サザル・バージレーション。バージレーション王国の第三王子で、先日この国の国王に、正式に就任したんだ」
そう言ってにっこり笑ったオーフェン様。
えぇぇぇぇぇぇぇ
あまりの衝撃に、そのまま私は気を失ってしまったのであった。
そんな私の喜ぶ姿を見たマドレアおば様が
「サーラちゃん、1日来なかっただけで喜ぶのはまだ早いわよ。何か用事があったのかもしれないし。もしかして、サーラちゃんを無理やり攫って、王宮に連れ帰ってしまうかもしれないわ。とにかく、油断は禁物よ!」
そう言って警戒していた。でも1週間が過ぎても、王太子は来る事は無かった。
「ほら、マドレアおば様、きっと私の事は諦めたのですわ。これからは、平和に暮らせますわね」
「そうかねぇ。私は心配でたまらないのだけれど」
どうやらかなり心配症なマドレアおば様。でも、それだけ私を大切に思ってくれているという事だろう。とにかく、おば様の気持ちは物凄く嬉しい。そして平和な日々が過ぎていき、王太子が来なくなってから1ヶ月が過ぎた。
今日もお店は大繁盛だ。その時だった。
「おい、聞いたか?バージレーション王国が、この国に攻めて来たらしいぞ。今、国境付近で騎士たちが必死に戦っている様だが、相手はあのバージレーション王国だろう。負けるのも時間の問題だ」
何ですって、バージレーション王国ですって?バージレーション王国と言えば、かなりの大国だ。巧みな戦術と、圧倒的な戦力で一気に相手の国に攻め入ると有名な国。バージレーション王国に責められた国は、まず勝つことは出来ないと聞く。
「バージレーション王国がせめて来ただって!それは本当かい?」
物凄い勢いで厨房から出て来たマドレアおば様。右手には包丁が握られている。
「マドレアさん!危ないぞ!ああ、兵士の友人から話しを聞いたから、間違いない様だ。既にかなり押されている様で、近いうちに勝敗が決まると言っていたよ」
ため息を吐きながらそう言った常連さん。
「そうかい、ついに動き出したかい…」
「動き出した?」
「いいや、何でもないよ」
そう言うと、慌てて厨房に戻ったマドレアおば様。
「それで、バージレーション王国が勝利したら、この国はどうなるのですか?」
せっかく平和な平民ライフを手に入れたのに!とにかく、今の暮らしを奪われたくはない。
「基本的に攻め込まれた国は、バージレーション王国の王子が国を治めるのが一般的だ。とにかくバージレーション王国は子だくさんだからな。今回は第三王子が指揮を取っているらしい。その王子がどんな人物かで、その国の未来が決まるらしい」
「なるほど、その第三王子がいい人なら、私たちは平和に暮らせるのね」
第三王子がいい人だといいけれど。
「ただ、どっちにしろ、王族は皆殺しか奴隷行き、よくて平民落ちだろう。貴族たちも、どうなる事やら」
そうか…それで、王太子が最近訪ねてこなくなったのね。きっとそれどころではなくなったのだろう。
「皆、そんなに暗い顔をしなくても大丈夫だよ。平民の暮らしなんて、そんなに変わる事はないよ」
そう言ったのは、マドレアおば様だ。おば様が言った通りだといいのだけれど…
それから数日後、正式に我がカステカ王国が、バージレーション王国との戦いに敗れたとの知らせが入った。正直今後どうなるのか物凄く不安だったが、マドレアおば様が言った通り、今のところ私たちの生活に変化はない。
常連客の話では、今後王族や貴族はどうなるかわからないが、ひとまず私達の生活には影響がないとの事で、ホッとした。
今日もいつも通り、お店を開ける為準備をしていると、ドアが開いた。
ガランガラン
あら?もうお客さんが入って来たのかしら?
「ごめんなさい、まだお店は開いていないのですが」
お客様に断りを入れる為、ドアの方を向くと、そこに立っていたのは…
「ただいま、サーラ。アパートに行ったら姿が無かったから、ここかなって思って来てみたんだ。元気そうでよかった」
「オーフェン様!本当にオーフェン様なのですか?」
そう、目の前に立っていたのはオーフェン様だ。嬉しくてオーフェン様に飛びついた。
「サーラ、君が一番大変な時に、側にいられなくてごめんね。でも、これからはずっと一緒だ」
そう言うと、私から離れたオーフェン様。なぜかその場に跪いた。そして美しいオレンジ色の瞳が、真っすぐ私の方を見つめている。
「サーラ、僕は君を心から愛しています。どうか、僕と結婚してくれますか?」
そう言うと、美しい指輪を手渡してくれた。その指輪には、この国を出る時に預かったネックレスと同じ、七色に光る宝石が付いている。
「僕の国ではね。大切な女性に、指輪を贈る習慣があるんだよ。サーラ、愛している。どうか僕と共に生きて行って欲しい」
再びオーフェン様が、私に気持ちを伝えてくれた。これは夢かしら?夢ならどうか覚めないで欲しい。嬉しくて、瞳から涙が溢れでる。
「オーフェン様、私もあなた様を心から愛しているわ。こんな私でよければ、よろしくお願いいたします」
その瞬間、オーフェン様に抱きしめられた。そして、指輪を私の指にはめてくれた。
「ありがとう、サーラ。これからはこの国の王妃として、僕を支えて欲しい」
ん?王妃?オーフェン様の言った意味が分からず、聞き返そうとした時だった。
なぜか周りから大きな拍手が沸き上がる。
「オーフェン国王、おめでとうございます!」
「「「「おめでとうございます」」」」」
え?国王?
ふと周りを見渡すと、バージレーション王国の国旗を持った男性たちが何人もいた。そこには、オーフェン様のお父様のバザダフィ男爵の姿も。一体どういう事なの?
状況がのみ込めず、固まるしかない。
「サーラ、ずっと黙っていてごめん。僕の本当の名前は、オーフェン・サザル・バージレーション。バージレーション王国の第三王子で、先日この国の国王に、正式に就任したんだ」
そう言ってにっこり笑ったオーフェン様。
えぇぇぇぇぇぇぇ
あまりの衝撃に、そのまま私は気を失ってしまったのであった。
277
お気に入りに追加
9,323
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる