お金の為に優しい殿下の恋人役を引き受けたのですが…実は自己中俺様王子だなんて聞いていません

Karamimi

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第27話:視察は疲れます【後編】

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しばらく走ると、物凄くおしゃれなお店の前に停まった。

「まずはここで食事にしよう。さあ、ティアラ嬢、足元に気を付けて」

再び先に馬車を降りたカエサル殿下が、手を差し伸べてくれる。ちらりとジャクソン様を見ると、“断れよ!”と言っているのがわかる。

「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですわ」

そう答え、ジャクソン様と一緒に馬車を降りる。チラリとジャクソン様を見ると、“最初からそうしろ”そう言っている様な気がするが、とりあえず怒りは少し落ち着いたようだ。

お店に入ると、一番奥の個室に通された。そして次々と料理が運ばれている。どれも物凄く美味しいそうだ。おっといけない、ここでもジャクソン様の機嫌を取っておかないとね。

「ジャクソン様、物凄く美味しそうですよ。さあ、お口を開けて下さい」

近くにあったお料理をジャクソン様の口に運ぶ。

「ティアラ、ありがとう。やっぱりティアラに食べさせてもらう料理は、物凄く美味しいよ。次はそっちのお肉も食べたいな」

リクエストに応えて、お肉を食べさせる。その後も間にお茶を飲ませながら、料理を食べさせていく。その時だった。

「ティアラ嬢、はい、アーン」

目の前に美味しそうなお肉が。つい口を開けて食べてしまった。しまった、ジャクソン様以外の男性に食べさせられるなんて…そう、私に食べさせてくれたのは、カエサル殿下だ。

「ずっとジャクソン殿下にばかり食べさせていたから、ティアラ嬢もお腹が空いているかと思ってね。俺ならまずは、好きな女性にお腹いっぱい食べてもらいたいと思うけれど、ジャクソン殿下はそうではないみたいだね」

そう言ってにっこり笑ったカエサル殿下。ちょっと、何て事をしてくれるのよ!

「カエサル殿下の言う通りだね。ごめんね、ついティアラが食べさせてくれるのが嬉しくて。さあ、今度は僕が食べさせてあげるね」

そう言って、私に食べ物を運んでくれたジャクソン様。これは増々良くない方向に向かっているわ。正直味なんてわからないまま、昼食は終了。午後からの視察も、色々とカエサル殿下が説明してくれたが、それどころではなかった。

王宮に戻って来た頃には、もうクタクタだ。今までさんざんジャクソン様にこき使われてきたが、今日はその比ではないくらい疲れた。でも、まだ夕飯が残っている。

疲れた体を何とか起こし、夕食を食べる。ここでも、私にガンガン話しかけてくるカエサル殿下。何とか作り笑いで乗り切る私。でも、何を思ったのか王妃様が

「カエサルは随分とティアラ嬢が気に入ったのね。ねえ、ティアラ嬢、カエサルもいい男よ。あなたさえよければ、この国に残らない?」

何ていいだしたのだ。ちょっと、言っていい冗談と悪い冗談があるわ。完全にパニックになる私に

「王妃殿下、ティアラは僕の大切な恋人ですので、それは無理ですよ」

そう笑顔で答えていた。ただ空気の読めない王妃様は

「あら、まだ婚約もしていないのでしょう?それに、ジャクソン殿下にはミディアムもいるし…」

「とにかく僕が愛しているのは、ティアラただ1人ですから。さあ、ティアラ、今日は視察で疲れただろう?もう失礼しよう。おいで」

王妃様の言葉を遮り、私の手を取ったジャクソン様。いつも表の顔は穏やかなジャクソン様が、こんな態度をとるなんて珍しい。でも、それだけ怒っているという事よね。これは増々まずいわ。とりあえず、カラッサ王国の王族たちに頭を下げて席を立ち、部屋に戻る。

「ティアラ、湯あみを済ませたら、また来るからね」

そう言うと、笑顔で出て行ったジャクソン様。その後、メイドたちに綺麗に体を洗ってもらい、髪も乾かしてもらった。ちょうどそのタイミングで、ジャクソン様が入って来た。

「ティアラ、そろそろ寝ようか。君たち、もう出て行ってもいいよ。後は僕がいるから」

「「「わかりました。失礼します」」」

お役目御免と言わんばかりに、嬉しそうに部屋を出ていくメイドたち。待って…お願い、この鬼畜変態野郎と2人きりにしないで…私の心の叫びもむなしく、皆出て行ってしまった。

「ティアラ、今日は随分とカエサル殿下と仲良しだったなぁ」

ひぃぃぃ!後ろから低い声で呟くジャクソン様。怖い…怖すぎるわ。

「あの、ジャクソン様。そのような事は…んんっ」

そのまま唇を塞がれ、舌まで入って来た。さらに太ももからお尻にかけて、触り出した。でも次の瞬間、何を思ったのか私から離れると、部屋から出て行ったジャクソン様。一体どうしたのかしら?しばらく待っていると、嬉しそうに部屋に戻って来た。

その手には、なんとハリセンが握られている。もしかして、ハリセンを取りに行っていたの?そもそもカラッサ王国にまであんなものを持ってくるだなんて…

「念のため持ってきてよかった。ティアラ、どうやらお前はもう一度徹底的にスキンシップの練習をしないといけない様だな。今日は俺が納得するまで、スキンシップの練習をするぞ。もちろん、失敗したらハリセンの刑だ!ほら、さっさと来い!まずは俺の膝に乗って口づけからだ」

ひぃぃぃ、とにかく早くしないとハリセンが飛んでくる。急いで膝に座ろうとしたのだが

「遅い!」

バチィーーン

「痛い!」

久しぶりに受けるハリセンの痛みに、涙目になる。結局その後、何発もハリセンを受けながら、夜遅くまでスキンシップの練習は続いたのであった。
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