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第19話:お昼休みまで奪われました
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夜会翌日、いつもの様にテオと一緒に馬車に乗り込み、学院を目指す。
「ティアラ、昨日の夜会、随分殿下と仲睦まじかったね。昨日の様子を見て、周りは皆ティアラと殿下が近々婚約する事は確定だろうと言っているよ。それで、いつ婚約するの?」
物凄い笑顔でそう言ったテオ。ちょっと、どうして私があの鬼畜と婚約しないといけないのよ!そう言いたいが、ここは冷静に対応しないとね。
「そうね、色々と事情があってね。まだしばらく婚約はしないわ」
「そうなのかい?まさか僕が病気をして伯爵家が一時借金で首が回らなくなったからかい?そのお金も殿下に立て替えてもらっているし…それで陛下や王妃様が怒っているのかい?」
物凄く心配そうな顔で聞いてくるテオ。
「それだけは絶対ないわ!そもそも陛下も王妃様も王太子夫妻も、私の事を物凄く可愛がってくれているのよ。もし嫌われていたら、あんな風に王族と一緒に入場なんてする訳ないでしょう」
「確かにティアラの言う通りだね。まあ、王族の婚約となると、色々と面倒なのかもしれないね」
何とか納得してくれたテオ。そもそも私たちは、元々契約で結ばれた恋人同士なのだ。さっさと隣国の王女に諦めてもらって、お役目御免したいものだわ。
そんな話をしているうちに、学院に着いた。いつもの様に私を待っているジャクソン様。でも…
「僕の可愛いティアラ。会いたかったよ」
そう言うと、急に抱き着いてきたのだ。何なの、こいつは!あっ、そうだった。今日から王女様対策でラブラブを演じるのだったわね。ここは私も抱き着かないといけないのか…
「おはようございます。ジャクソン様。私も…会いたかったですわ」
途中詰まってしまったが、必死に演技をした。
「さあ、教室に行こう。そうだ、今日はお昼も一緒に生徒会長室で食べようね。これからは極力ずっと一緒に居よう」
えっ…お昼も…それは嫌だ。放課後だけでも辛いのに、私のお昼休みまでこの鬼畜の相手をしないといけないなんて…
「どうしたんだい?ティアラ。何か問題でもあったかい?」
にっこり笑っているが、目が明らかに笑っていない。“お前、何不満そうな顔をしているんだ。俺に逆らうつもりか?”と、きっとそう言っているのだろう。これはまずい…
「いいえ、とんでもありませんわ。お昼休みまでジャクソン様と過ごせるなんて、幸せ以外何物でもありません」
心にもない事を口走る。
「それはよかった。それじゃあ、お昼休みになったら教室に迎えに行くから、待っていてくれ」
私を教室まで送り届け、そう言って去っていったジャクソン様。あぁ…私のお昼休みが…
「ティアラ、さっきの話、聞いたよ。よかったね。お昼休みまで殿下と一緒に居られるなんて。それだけ殿下がティアラを大切に思ってくれているという事だよ。リリアナの事は心配しないで。こっちも婚約者同士で仲良く食べるから」
「そうよ、ティアラ。私たちの事は気にしないでね」
満面の笑みでそう言ったテオとリリアナ。悪かったわね、いつも邪魔者がいて。あぁ、それにしても、お昼休みまであの鬼畜の相手をさせられるなんて…苦痛でしかない。でも後4ヶ月の我慢だ。頑張れ、私!
そして迎えた昼休み。
「ティアラ、迎えに来たよ。さあ、行こうか」
王子スマイルで私に手を差し出すジャクソン様。あぁ、悪魔が地獄へと私を連れて行こうとしているわ…物凄く嫌だが、仕方なく手を取る。教室内から温かな視線を送られながら、廊下へと出た。私もあの教室に居たかったわ…
ニコニコしている王子に連れられ、生徒会長室に入る。入った途端
「なんだ、お前のあの態度は!名残惜しそうに教室を見つめやがって。まるで俺と一緒にいるのが嫌みたいだろうが」
嫌みたいではなくて、嫌なのだから仕方がない。どうやら私は、気持ちが顔に出てしまうタイプの様だ。
「とにかくお前は俺の恋人だ!もっと嬉しそうな顔をしろ。いいな、分かったな」
「はい、分かりました」
出来るかどうかわからないが、一応理解したと言う意味で返事をする。
「わかればいい。それじゃあ、まずは食事だ。お茶を入れろ」
ソファーにドカリと座るジャクソン様。急いで給湯室に向かい、お茶を入れ机の上に置く。
「よし、それじゃあ、食べさせろ」
やっぱりね…
王宮の料理人が作ったお弁当を広げた。さすが王族が食べるお弁当、かなり豪華だ。とにかく早くジャクソン様に食べさせて、教室に戻ろう。早速料理を口に入れていく。もちろん、間にお茶を挟むことも忘れない。
半分くらい食べ終わったところで
「次は俺がお前に食べさせてやる。早く弁当を広げろ」
そう言ったジャクソン様。
「私は自分で食べるので、大丈夫ですわ」
そう答えたのだが
「俺に口答えする気か?とにかく、すぐに弁当を出せ」
そう言って怒りだしたので、仕方なくお弁当を広げた。早速私の口に食事を放り込むジャクソン様。その後は、お互い食べさせあいながら、全てを食べ終わった。よし、お弁当も食べたし、もう私の任務は完了だろう。
「それでは私はこれで」
そう言って立ちあがった瞬間
バチィーン
「痛い」
今日は珍しく、素手でお尻を叩かれた。
「おい、誰が勝手に戻っていいと言った!今からスキンシップの練習をするぞ」
そう言うと、ニヤリと笑ったジャクソン様。なんだか嫌な予感しかしないのだが…
「ティアラ、昨日の夜会、随分殿下と仲睦まじかったね。昨日の様子を見て、周りは皆ティアラと殿下が近々婚約する事は確定だろうと言っているよ。それで、いつ婚約するの?」
物凄い笑顔でそう言ったテオ。ちょっと、どうして私があの鬼畜と婚約しないといけないのよ!そう言いたいが、ここは冷静に対応しないとね。
「そうね、色々と事情があってね。まだしばらく婚約はしないわ」
「そうなのかい?まさか僕が病気をして伯爵家が一時借金で首が回らなくなったからかい?そのお金も殿下に立て替えてもらっているし…それで陛下や王妃様が怒っているのかい?」
物凄く心配そうな顔で聞いてくるテオ。
「それだけは絶対ないわ!そもそも陛下も王妃様も王太子夫妻も、私の事を物凄く可愛がってくれているのよ。もし嫌われていたら、あんな風に王族と一緒に入場なんてする訳ないでしょう」
「確かにティアラの言う通りだね。まあ、王族の婚約となると、色々と面倒なのかもしれないね」
何とか納得してくれたテオ。そもそも私たちは、元々契約で結ばれた恋人同士なのだ。さっさと隣国の王女に諦めてもらって、お役目御免したいものだわ。
そんな話をしているうちに、学院に着いた。いつもの様に私を待っているジャクソン様。でも…
「僕の可愛いティアラ。会いたかったよ」
そう言うと、急に抱き着いてきたのだ。何なの、こいつは!あっ、そうだった。今日から王女様対策でラブラブを演じるのだったわね。ここは私も抱き着かないといけないのか…
「おはようございます。ジャクソン様。私も…会いたかったですわ」
途中詰まってしまったが、必死に演技をした。
「さあ、教室に行こう。そうだ、今日はお昼も一緒に生徒会長室で食べようね。これからは極力ずっと一緒に居よう」
えっ…お昼も…それは嫌だ。放課後だけでも辛いのに、私のお昼休みまでこの鬼畜の相手をしないといけないなんて…
「どうしたんだい?ティアラ。何か問題でもあったかい?」
にっこり笑っているが、目が明らかに笑っていない。“お前、何不満そうな顔をしているんだ。俺に逆らうつもりか?”と、きっとそう言っているのだろう。これはまずい…
「いいえ、とんでもありませんわ。お昼休みまでジャクソン様と過ごせるなんて、幸せ以外何物でもありません」
心にもない事を口走る。
「それはよかった。それじゃあ、お昼休みになったら教室に迎えに行くから、待っていてくれ」
私を教室まで送り届け、そう言って去っていったジャクソン様。あぁ…私のお昼休みが…
「ティアラ、さっきの話、聞いたよ。よかったね。お昼休みまで殿下と一緒に居られるなんて。それだけ殿下がティアラを大切に思ってくれているという事だよ。リリアナの事は心配しないで。こっちも婚約者同士で仲良く食べるから」
「そうよ、ティアラ。私たちの事は気にしないでね」
満面の笑みでそう言ったテオとリリアナ。悪かったわね、いつも邪魔者がいて。あぁ、それにしても、お昼休みまであの鬼畜の相手をさせられるなんて…苦痛でしかない。でも後4ヶ月の我慢だ。頑張れ、私!
そして迎えた昼休み。
「ティアラ、迎えに来たよ。さあ、行こうか」
王子スマイルで私に手を差し出すジャクソン様。あぁ、悪魔が地獄へと私を連れて行こうとしているわ…物凄く嫌だが、仕方なく手を取る。教室内から温かな視線を送られながら、廊下へと出た。私もあの教室に居たかったわ…
ニコニコしている王子に連れられ、生徒会長室に入る。入った途端
「なんだ、お前のあの態度は!名残惜しそうに教室を見つめやがって。まるで俺と一緒にいるのが嫌みたいだろうが」
嫌みたいではなくて、嫌なのだから仕方がない。どうやら私は、気持ちが顔に出てしまうタイプの様だ。
「とにかくお前は俺の恋人だ!もっと嬉しそうな顔をしろ。いいな、分かったな」
「はい、分かりました」
出来るかどうかわからないが、一応理解したと言う意味で返事をする。
「わかればいい。それじゃあ、まずは食事だ。お茶を入れろ」
ソファーにドカリと座るジャクソン様。急いで給湯室に向かい、お茶を入れ机の上に置く。
「よし、それじゃあ、食べさせろ」
やっぱりね…
王宮の料理人が作ったお弁当を広げた。さすが王族が食べるお弁当、かなり豪華だ。とにかく早くジャクソン様に食べさせて、教室に戻ろう。早速料理を口に入れていく。もちろん、間にお茶を挟むことも忘れない。
半分くらい食べ終わったところで
「次は俺がお前に食べさせてやる。早く弁当を広げろ」
そう言ったジャクソン様。
「私は自分で食べるので、大丈夫ですわ」
そう答えたのだが
「俺に口答えする気か?とにかく、すぐに弁当を出せ」
そう言って怒りだしたので、仕方なくお弁当を広げた。早速私の口に食事を放り込むジャクソン様。その後は、お互い食べさせあいながら、全てを食べ終わった。よし、お弁当も食べたし、もう私の任務は完了だろう。
「それでは私はこれで」
そう言って立ちあがった瞬間
バチィーン
「痛い」
今日は珍しく、素手でお尻を叩かれた。
「おい、誰が勝手に戻っていいと言った!今からスキンシップの練習をするぞ」
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