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第15話:2年ぶりの夜会です
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「ティアラ、ジャクソン殿下からドレスと宝石が届いているわよ」
夜会前日、いつもの様に王宮でダンスレッスンを終えて家に帰ってくると、満面の笑みのお母様が待っていた。
そう言えば今日、ジャクソン様が
「明日の夜会用のドレスと宝石をお前の家に贈っておいた。いいか、俺がわざわざお前の為に選んでやったんだ。感謝しろ」
と、どや顔で言っていたわね。一体どんなドレスを贈ってくれたのかしら?早速ドレスを開けると、そこに入っていたのは、淡い緑色のドレスに、シルバーのイヤリングだ。これは…
「まあ、緑のドレスにシルバーのイヤリングだなんて、まさかにジャクソン殿下の色一色じゃない。ティアラ、あなたは随分ジャクソン殿下に愛されているのね」
嬉しそうに微笑むお母様。
我が国では自分の髪や瞳の色のドレスやアクセサリーを、パートナーに身に着けさせる習慣がある。確かに私とジャクソン様は、表向きは恋人同士だが、ここまで露骨にしなくても…
そう思ったが、せっかく私の為にドレスや宝石を贈ってくれたのだ。ありがたく頂いておこう。とにかく今日も疲れた。自室に戻り、湯あみを済ませて眠ろうと思った時だった。
通信機がヴーヴーとなった。
最近よくジャクソン様から通信機で連絡が入る。ほとんどが私に対する要望だったり、どうでもいい話だったりする。今日もきっとドレスの事だろう。そう思い、通信をONにした。
“おい、何をしていたんだ。すぐに出ろ!”
通信に出た瞬間、文句を言うジャクソン様。
「申し訳ございません。それで、何か御用ですか?」
“何か御用ですか?じゃない!お前、俺が贈ったドレスを見たのだろう?どうしてお礼の通信をしてこないんだ!」
あぁ、お礼の通信がなかったから、ご機嫌が斜めなのね。そもそも今日、散々お礼を言ったのに…でも、確かに高価なものを頂いたのだから、もう一度お礼は言った方がいいわね。
「お礼が遅くなり申し訳ございません。素敵なドレスとアクセサリーをありがとうございました」
“最初からそう言えばいいんだ!明日迎えに行くから、準備して待っていろよ。それから、俺に恥をかかせない様、しっかり振舞うんだぞ。わかったな?”
「ええ、大丈夫ですわ」
ダンスもしっかり練習したし、マナーも先生から太鼓判を貰っている。きっと大丈夫だろう。
“それならいい。俺はもう眠いから寝る”
そう言うと、通信が切れた。もう少し上手に切れないのかしら…まあいいわ。とにかく、私も寝よう。
翌日
いつもの様に学院で授業を受けた後、一旦屋敷に戻り準備を始める。まずはメイドたちにしっかり体を磨かれた。そして、ジャクソン様から頂いたドレスに袖を通す。髪をハーフアップにしてもらい、アクセサリーも付けた。
「お嬢様、このチョーカーは外していった方がよろしいかと」
私の首に付いているチョーカーを外そうとしたメイド。
「これはそのままにしておいて」
ジャクソン様が本性を現した時につけられたチョーカー。このチョーカーはジャクソン様し外す事が出来ないのだ。確かにこのドレスにこのチョーカーはあまり合わないが、訴えたところできっと外してなんてくれないだろう。
その後化粧をしてもらったら完成だ。2年ぶりに参加する夜会。久しぶりに着飾り、気分も上々だ。
「2年ぶりにお嬢様が着飾る姿を拝見いたしましたが、本当にお綺麗ですよ。これならきっと、殿下もイチコロですわ」
そう言って褒めてくれたメイドたち。うん、お世辞がとても上手ね。
「さあ、そろそろ殿下もいらっしゃる時間です。どうぞ玄関へ」
「そうね、そろそろ行くわ」
万が一ジャクソン様を待たせる様な事があれば、きっと怒られる。急いで玄関までやってくると、ちょうどジャクソン様が来たところだった。
「ジャクソン様、お待たせいたしました。それと、こちらのドレスとアクセサリー、ありがとうございました」
もう一度お礼を言う。きっとしつこいくらいお礼を言わないと、馬車の中で文句を言われるだろう。そう思ったのだ。
「ティアラ、そのドレス、よく似合っているよ。とても綺麗だ」
そう言って王子スマイルを決めるジャクソン様。こうやって紳士的に振舞っていれば、カッコいいのに…
「さあ、そろそろ行こう」
私の手を握り、馬車へと誘導してくれる。ちなみに両親とテオは既に夜会に出掛けた様で、姿はなかった。
しっかりエスコートされ、馬車へと乗り込み、腰を下ろした。なぜか隣に座ったジャクソン様。今度は何をされるのだろう。そんな思いから、つい身構えてしまう。
「おい、そんなに警戒するな。いいか、俺たちは愛し合っている恋人同士だ。今日は他の貴族どもにも、俺たちがいかに愛し合っているかを見せつけようと思っている。いいな、お前も今日は俺にベッタリくっついていろ!わかったな」
なぜか真剣な表情でそう言ったジャクソン様。そう言えば、元々は隣国の王女様に諦めてもらう為に、私が恋人役をやるという事になったのよね。もう既に恋人役を始めてから2ヶ月が経っている。そろそろ、本格的に恋人らしく振舞うという事なのだろう。
「わかりましたわ。今日は極力ジャクソン様に寄り添って、愛し合っているカップルを演じましょう」
「今日はやけに物分かりがいいな。とにかく、よろしく頼むぞ」
ニヤリと笑ったジャクソン様。その笑みが少し引っかかるが、王宮内は人も多い。表向きの顔でジャクソン様も過ごすだろうから、特に心配する事はないだろう。
夜会前日、いつもの様に王宮でダンスレッスンを終えて家に帰ってくると、満面の笑みのお母様が待っていた。
そう言えば今日、ジャクソン様が
「明日の夜会用のドレスと宝石をお前の家に贈っておいた。いいか、俺がわざわざお前の為に選んでやったんだ。感謝しろ」
と、どや顔で言っていたわね。一体どんなドレスを贈ってくれたのかしら?早速ドレスを開けると、そこに入っていたのは、淡い緑色のドレスに、シルバーのイヤリングだ。これは…
「まあ、緑のドレスにシルバーのイヤリングだなんて、まさかにジャクソン殿下の色一色じゃない。ティアラ、あなたは随分ジャクソン殿下に愛されているのね」
嬉しそうに微笑むお母様。
我が国では自分の髪や瞳の色のドレスやアクセサリーを、パートナーに身に着けさせる習慣がある。確かに私とジャクソン様は、表向きは恋人同士だが、ここまで露骨にしなくても…
そう思ったが、せっかく私の為にドレスや宝石を贈ってくれたのだ。ありがたく頂いておこう。とにかく今日も疲れた。自室に戻り、湯あみを済ませて眠ろうと思った時だった。
通信機がヴーヴーとなった。
最近よくジャクソン様から通信機で連絡が入る。ほとんどが私に対する要望だったり、どうでもいい話だったりする。今日もきっとドレスの事だろう。そう思い、通信をONにした。
“おい、何をしていたんだ。すぐに出ろ!”
通信に出た瞬間、文句を言うジャクソン様。
「申し訳ございません。それで、何か御用ですか?」
“何か御用ですか?じゃない!お前、俺が贈ったドレスを見たのだろう?どうしてお礼の通信をしてこないんだ!」
あぁ、お礼の通信がなかったから、ご機嫌が斜めなのね。そもそも今日、散々お礼を言ったのに…でも、確かに高価なものを頂いたのだから、もう一度お礼は言った方がいいわね。
「お礼が遅くなり申し訳ございません。素敵なドレスとアクセサリーをありがとうございました」
“最初からそう言えばいいんだ!明日迎えに行くから、準備して待っていろよ。それから、俺に恥をかかせない様、しっかり振舞うんだぞ。わかったな?”
「ええ、大丈夫ですわ」
ダンスもしっかり練習したし、マナーも先生から太鼓判を貰っている。きっと大丈夫だろう。
“それならいい。俺はもう眠いから寝る”
そう言うと、通信が切れた。もう少し上手に切れないのかしら…まあいいわ。とにかく、私も寝よう。
翌日
いつもの様に学院で授業を受けた後、一旦屋敷に戻り準備を始める。まずはメイドたちにしっかり体を磨かれた。そして、ジャクソン様から頂いたドレスに袖を通す。髪をハーフアップにしてもらい、アクセサリーも付けた。
「お嬢様、このチョーカーは外していった方がよろしいかと」
私の首に付いているチョーカーを外そうとしたメイド。
「これはそのままにしておいて」
ジャクソン様が本性を現した時につけられたチョーカー。このチョーカーはジャクソン様し外す事が出来ないのだ。確かにこのドレスにこのチョーカーはあまり合わないが、訴えたところできっと外してなんてくれないだろう。
その後化粧をしてもらったら完成だ。2年ぶりに参加する夜会。久しぶりに着飾り、気分も上々だ。
「2年ぶりにお嬢様が着飾る姿を拝見いたしましたが、本当にお綺麗ですよ。これならきっと、殿下もイチコロですわ」
そう言って褒めてくれたメイドたち。うん、お世辞がとても上手ね。
「さあ、そろそろ殿下もいらっしゃる時間です。どうぞ玄関へ」
「そうね、そろそろ行くわ」
万が一ジャクソン様を待たせる様な事があれば、きっと怒られる。急いで玄関までやってくると、ちょうどジャクソン様が来たところだった。
「ジャクソン様、お待たせいたしました。それと、こちらのドレスとアクセサリー、ありがとうございました」
もう一度お礼を言う。きっとしつこいくらいお礼を言わないと、馬車の中で文句を言われるだろう。そう思ったのだ。
「ティアラ、そのドレス、よく似合っているよ。とても綺麗だ」
そう言って王子スマイルを決めるジャクソン様。こうやって紳士的に振舞っていれば、カッコいいのに…
「さあ、そろそろ行こう」
私の手を握り、馬車へと誘導してくれる。ちなみに両親とテオは既に夜会に出掛けた様で、姿はなかった。
しっかりエスコートされ、馬車へと乗り込み、腰を下ろした。なぜか隣に座ったジャクソン様。今度は何をされるのだろう。そんな思いから、つい身構えてしまう。
「おい、そんなに警戒するな。いいか、俺たちは愛し合っている恋人同士だ。今日は他の貴族どもにも、俺たちがいかに愛し合っているかを見せつけようと思っている。いいな、お前も今日は俺にベッタリくっついていろ!わかったな」
なぜか真剣な表情でそう言ったジャクソン様。そう言えば、元々は隣国の王女様に諦めてもらう為に、私が恋人役をやるという事になったのよね。もう既に恋人役を始めてから2ヶ月が経っている。そろそろ、本格的に恋人らしく振舞うという事なのだろう。
「わかりましたわ。今日は極力ジャクソン様に寄り添って、愛し合っているカップルを演じましょう」
「今日はやけに物分かりがいいな。とにかく、よろしく頼むぞ」
ニヤリと笑ったジャクソン様。その笑みが少し引っかかるが、王宮内は人も多い。表向きの顔でジャクソン様も過ごすだろうから、特に心配する事はないだろう。
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