お金の為に優しい殿下の恋人役を引き受けたのですが…実は自己中俺様王子だなんて聞いていません

Karamimi

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第1話:その仕事、引き受けます

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今日も渋い顔で手紙に目を通す両親の横で、不安げに2人を見つめる。
私、ティアラ・フェースティンは貴族学院1年の伯爵令嬢だ。でも、伯爵令嬢とは名ばかり。2年前、双子の弟のテオが原因不明の高熱に襲われ、それ以降入退院を繰り返している。

テオの病気はこの国ではかなり珍しい難病の様で、毎回莫大な治療費が掛っている。その費用は、伯爵家の我が家でも支払いきれない程。それでも両親は何とかお金をかき集め、必死に治療費を払って来た。その為、この2年ですっかり我が家の財産は底をつき、今では家計は火の車だ。

正直このままでは、伯爵家が破産してしまう。だからと言って、テオを見殺しにする訳には行かない。今両親は、他国の病院に連絡を取り、必死でテオを治せる医師を探しているところだ。その返事が、今日来たとの事。

「それであなた、手紙にはなんと書かれているの?」

「隣国の名医と呼ばれる医師が、どうやらテオの病気を治すことが出来るかもしれないとの事だ。ただ、莫大な手術費が必要との事。今の我が家では、到底払える額ではない」

がっくり肩を落とすお父様。手紙を見ると、3億ゼニーと書かれている。さすがに我が家にはもう100万

「お父様、お母様、とにかくお金は私が何とかしますわ」

「何を言っているんだ。お金は私が何とかするから、ティアラは気にしなくてもいい」

「でもお父様、既に親せきや友人から多額の借金をしているはずです。大丈夫ですわ。当てならありますから」

憔悴しきっている両親にこれ以上負担は掛けたくない。とにかく、テオが助かるかもしれないのだ。何とかしてお金を集めないと!

向かった先は、闇のお仕事を紹介していると言われている組織だ。実は最近、貴族学院で闇のお仕事の話を聞いたのだ。正直怪しい組織に仕事を紹介してもらうのは怖い。でも、背に腹は代えられない。確かこのあたりだったわよね。

王都の裏路地にある、宝石店がアジトらしい。恐る恐るお店に入っていく。

「いらっしゃい。何かお探しですか?」

優しそうな男性が話しかけて来た。

「あの、ここで裏のお仕事を取り扱っていると聞いたのですが、私にお仕事を紹介してもらえませんか?」

恐る恐るお願いすると、一瞬怪訝そうな顔をしたが

「付いておいで」

そう言うと、奥へと案内された。そこでしばらく待たされる。一体いつまで待たされるのかしら?そう思った時だった。やっと部屋に通された。

中には、黒いローブを被った明らかに怪しそうな人間が座っていた。なんだかヤバそうだね。大丈夫かしら…

「あなたは伯爵令嬢の、ティアラ・フェースティン嬢ですね。伯爵令嬢がここにやってくるなんて、よほどお金に困っているのでしょう。弟のテオ殿、病状が思わしくないと聞きました」

何なの、この人。どうして私の事を知っているの?それも弟の事まで…声からして男性の様だけれど…

「どうして私の事を知っているのですか?と、顔に書いてありますね。私たち組織は、貴族の事なら何でも知っていますよ。さあ、本題に入りましょうか?それで、どんなお仕事をお求めですか?」

そうだったわ。私は仕事を紹介してもらいに来たのだった。しっかりしないとね。

「実は弟が今度手術を受けるのですが、そのお金が全然足りなくて…3億ゼニーくらい報酬を頂ける仕事を探しているのですが…」

さすがに3億ゼニーもの大金を頂ける仕事なんて、ないかもしれない。それでも、聞くだけ聞いてみないと。

「3億ですか。それは随分と大金だ。そうですね、それだと、いい仕事がありますよ」

「本当ですか?それは私にもできる仕事でしょうか?出来るのであれば、何でもいたします。どうかよろしくお願いします」

テオの為なら何でもするわ!そんな思いから、男に迫った。

「ええ、伯爵令嬢のあなたにもってこいの仕事です。実は今、第二王子でもある、ジャクソン殿下の恋人役をやってくれる人を探していましてね。しかも期間は半年。報酬はあなたの希望する金額をお支払いいたしますよ。どうです?悪い話ではないでしょう?」

第二王子の恋人役ですって。第二王子のジャクソン殿下と言えば、私の1つ年上、成績も優秀でそれでいて誰にでも優しい、さらにお美しい顔立ちという事もあり、令嬢たちの憧れの的。そんな人が恋人役を探しているなんて…

でも、半年恋人役をするだけで希望する金額を貰えるなら、有難いわ。よし、この仕事、引き受けよう。

「そのお仕事、ぜひ引き受けさせていただきます。ただ、出来れば報酬は先に頂きたいのですが…」

半年も待っていたら、テオの手術が出来ない。一刻も早く、手術を受けさせてあげたいのだ。

「わかりました、では後日、この通信機で連絡させていただきます。それからこの件は、内密でお願いいたします」

「わかりました。よろしくお願いいたします」

とりあえず契約は成立した様で、そのまま帰って来た。まず向かった先は、弟の部屋だ。

「テオ、大丈夫?」

ベッドに横になり、明らかに辛そうだ。

「ティアラ…大丈夫だよ。僕のせいで、ティアラにも苦労掛けてごめんね…」

悲しそうな顔でそう呟いたテオ。

「大丈夫よ、テオ。必ずあなたは元気になるわ!だから元気を出して。さあ、ゆっくり休んで」

テオの顔を見たら、何が何でも今回のお仕事を成功させないと!俄然やる気が出て来たティアラであった。

※1ゼニー=1円くらい?

~あとがき~
新連載始めました。
超自己中な王子のお話、ずっと書きたいと思っていました。
かなり王子が幼稚で我が儘ですが、よろしければよろしくお願いしますm(__)m
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