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第26話:この地で共に生きたいです
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アペルピスィ王国の王宮を出て3日。やっとドミスティナ王国に帰って来た。長い間留守にしていた家を開け、中に入る。
「ただいま」
誰もいないのは分かっている。それでも、どうしても声を掛けずにはいられなかった。それにしても長い間留守にしていたから、埃っぽいわね。急いで窓を開け、家の掃除からスタートだ。
家じゅうを隅々まで掃除していく。その時、ふとアダム様が木彫りを行う時に使っていたナイフが目に入った。アダム様はこのナイフを使って、器用に木彫りの置物を作っていたわね。ここ半年以上、ずっとアダム様と一緒だったのだ。
それなのに、アダム様はもういない。自分でアダム様と決別したのに、どうしようもないほど寂しくて、涙が止まらない。
「私はどうしてこんなにも自己中心的なのかしら?自分でアダム様の側から離れたのに。それなのに、今は会いたくてたまらないなんて…」
その場でしばらく泣いた後、気を取り直して掃除をスタートさせた。掃除が終わった後は、買い物に行かないといけないのだが、どうしても街に行く気になれなかった。きっとアダム様の事を聞かれるだろう。その時、私は泣かずに話せるかしら?
自分の意志でアダム様とお別れしたのに、アダム様が悪者になったりしないかしら?そう考えたら、どうしても街に出る気にはなれなかった。
その後食事もとらずに自室に戻ると、そこには美しいウエディングドレスが目に入った。そう言えば、5日後にはアダム様と結婚式を挙げる予定だったのよね。でも、もう挙げる事は出来ない。やっぱり明日、街の皆に全てを話そう。ありのまま、全てを…
そう思い、その日は眠りに付いた。
翌日
朝から何もする気が起きない。この家にはアダム様との思い出が多すぎる。そのせいで、ついかつての楽しかった日々を思い出してしまうのだ。
「いつまでも泣いていても仕方ないわね…辛いけれど、自分で望んだ事だもの。しっかりしなきゃ!とにかく洗濯をしないと」
そう思い、洗濯物を持って外に出た。その時だった。
「…ローラ」
ふとアダム様の声が聞こえたのだ。まさかね…アダム様がここにいる訳がないわ。そう思いつつも、辺りを見渡してしまう。
「フローラ!フローラ!」
今度ははっきりとアダム様の声が聞こえた。さらに辺りを見渡すと、向こうからアダム様が走ってくる姿が目に付いた。
「アダム様!アダム様!」
無意識にアダム様の方に走り出し、そのまま飛びついた。あぁ…やっぱりアダム様だわ!本物だ!瞳から涙が次から次へと溢れ出す。
「フローラ、勝手に出て行くからびっくりしたよ。でも、俺も君の気持を考えずに王妃になれなんて言ってごめんね。俺は先日次期国王の座を降りたんだ。だから今まで通り、この地で一緒に暮らそう」
次期国王の座を下りたですって…
「そんな…それでは誰が国王になるのですか?陛下と王妃様の間には、アダム様とハリソン殿下しかいなかったはずです。まさか、ハリソン殿下が?」
「それは無いよ!あいつは犯罪者だからね。次の王には、従兄弟でもあるデーヴィドに頼んできた。母上や他の貴族も認めてくれたしね。それに、あいつなら立派な王になれるよ」
そう言うと、にっこり笑ったアダム様。
「アダム様、あなた様は次期国王になる為、大変な努力をして来たのではないのですか?それなのに私の為に…」
まさかアダム様が次期国王の座を降りるなんて…
「確かに色々と努力をして来た。でも、俺にとって何より大切なのはフローラ、君なんだ。もう俺の人生に、フローラがいないなんて考えられない。だからどうか俺とこのままこの地で一緒に暮らして欲しい!今でもフローラを心から愛しているんだ!」
「アダム様…私もアダム様を心から愛しております!どうかこれからもずっと一緒にいて下さいませ」
「フローラ、ありがとう!そうだ、早速街の人に帰って来た事を伝えに行かないと。それにしても、何とか結婚式までに間に合ってよかった。それじゃあ、早速街に行こう」
「はい」
2人で手を繋ぎ、街へと向かった。久しぶりに帰って来た私たちを、歓迎してくれた街の人たち。有難い事に結婚式の準備もしてくれていた様で、既にいつ挙げても大丈夫との事。
それにしても、まさかアダム様が全てを捨てて私の元に来てくれるなんて思わなかった。正直申し訳ない気持ちもあるが、それでも私を選んでくれた事は嬉しくてたまらない。これからは、2人で生きて行こう!そう心に決めた。
4日後
「フローラ、そろそろ時間だよ」
「ええ、今行きます」
純白のウエディングドレスに身を包み、沢山の街の人が見守る中教会で結婚式を挙げる。ふと参列者を見ると、そこには王妃様の姿が。平民に扮して見に来てくれたのだろう。アダム様も王妃様に気がついた様で、嬉しそうに笑っている。
この10年、大変な事も多かった。でも、これからはアダム様とこの地で幸せな家庭を築いて行こう。
教会の外に出ると、そこには雲一つない美しい空が広がっていた。さらに、温かい風が私の頬を撫でる。お父様、お母様、お兄様、お姉様、私は幸せになります。皆の分まで必ず!真っ青な空を眺め、心の中でそっと呟いたフローラ。
今後ずっと訪れるであろう、アダムとの幸せな日々を夢見て…
おしまい
~あとがき~
これにて完結になります。
書き始めた時は、ハッピーエンドかバッドエンドかですごく迷いました。でも書いている途中で、感情移入してしまい、どうしても2人には幸せになって欲しくてハッピーエンドにしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【閲覧注意:以下バッドエンドの簡単な内容です】
ちなみにバッドエンドは、ドミスティナ王国に戻ってきたフローラ。家族が無性に恋しくなり、姉のお墓の前で自ら命を絶ちます。フローラを追って戻って来たアダムがフローラの亡骸を見つけ、絶望の中フローラの後を追うと言う内容でした。
「ただいま」
誰もいないのは分かっている。それでも、どうしても声を掛けずにはいられなかった。それにしても長い間留守にしていたから、埃っぽいわね。急いで窓を開け、家の掃除からスタートだ。
家じゅうを隅々まで掃除していく。その時、ふとアダム様が木彫りを行う時に使っていたナイフが目に入った。アダム様はこのナイフを使って、器用に木彫りの置物を作っていたわね。ここ半年以上、ずっとアダム様と一緒だったのだ。
それなのに、アダム様はもういない。自分でアダム様と決別したのに、どうしようもないほど寂しくて、涙が止まらない。
「私はどうしてこんなにも自己中心的なのかしら?自分でアダム様の側から離れたのに。それなのに、今は会いたくてたまらないなんて…」
その場でしばらく泣いた後、気を取り直して掃除をスタートさせた。掃除が終わった後は、買い物に行かないといけないのだが、どうしても街に行く気になれなかった。きっとアダム様の事を聞かれるだろう。その時、私は泣かずに話せるかしら?
自分の意志でアダム様とお別れしたのに、アダム様が悪者になったりしないかしら?そう考えたら、どうしても街に出る気にはなれなかった。
その後食事もとらずに自室に戻ると、そこには美しいウエディングドレスが目に入った。そう言えば、5日後にはアダム様と結婚式を挙げる予定だったのよね。でも、もう挙げる事は出来ない。やっぱり明日、街の皆に全てを話そう。ありのまま、全てを…
そう思い、その日は眠りに付いた。
翌日
朝から何もする気が起きない。この家にはアダム様との思い出が多すぎる。そのせいで、ついかつての楽しかった日々を思い出してしまうのだ。
「いつまでも泣いていても仕方ないわね…辛いけれど、自分で望んだ事だもの。しっかりしなきゃ!とにかく洗濯をしないと」
そう思い、洗濯物を持って外に出た。その時だった。
「…ローラ」
ふとアダム様の声が聞こえたのだ。まさかね…アダム様がここにいる訳がないわ。そう思いつつも、辺りを見渡してしまう。
「フローラ!フローラ!」
今度ははっきりとアダム様の声が聞こえた。さらに辺りを見渡すと、向こうからアダム様が走ってくる姿が目に付いた。
「アダム様!アダム様!」
無意識にアダム様の方に走り出し、そのまま飛びついた。あぁ…やっぱりアダム様だわ!本物だ!瞳から涙が次から次へと溢れ出す。
「フローラ、勝手に出て行くからびっくりしたよ。でも、俺も君の気持を考えずに王妃になれなんて言ってごめんね。俺は先日次期国王の座を降りたんだ。だから今まで通り、この地で一緒に暮らそう」
次期国王の座を下りたですって…
「そんな…それでは誰が国王になるのですか?陛下と王妃様の間には、アダム様とハリソン殿下しかいなかったはずです。まさか、ハリソン殿下が?」
「それは無いよ!あいつは犯罪者だからね。次の王には、従兄弟でもあるデーヴィドに頼んできた。母上や他の貴族も認めてくれたしね。それに、あいつなら立派な王になれるよ」
そう言うと、にっこり笑ったアダム様。
「アダム様、あなた様は次期国王になる為、大変な努力をして来たのではないのですか?それなのに私の為に…」
まさかアダム様が次期国王の座を降りるなんて…
「確かに色々と努力をして来た。でも、俺にとって何より大切なのはフローラ、君なんだ。もう俺の人生に、フローラがいないなんて考えられない。だからどうか俺とこのままこの地で一緒に暮らして欲しい!今でもフローラを心から愛しているんだ!」
「アダム様…私もアダム様を心から愛しております!どうかこれからもずっと一緒にいて下さいませ」
「フローラ、ありがとう!そうだ、早速街の人に帰って来た事を伝えに行かないと。それにしても、何とか結婚式までに間に合ってよかった。それじゃあ、早速街に行こう」
「はい」
2人で手を繋ぎ、街へと向かった。久しぶりに帰って来た私たちを、歓迎してくれた街の人たち。有難い事に結婚式の準備もしてくれていた様で、既にいつ挙げても大丈夫との事。
それにしても、まさかアダム様が全てを捨てて私の元に来てくれるなんて思わなかった。正直申し訳ない気持ちもあるが、それでも私を選んでくれた事は嬉しくてたまらない。これからは、2人で生きて行こう!そう心に決めた。
4日後
「フローラ、そろそろ時間だよ」
「ええ、今行きます」
純白のウエディングドレスに身を包み、沢山の街の人が見守る中教会で結婚式を挙げる。ふと参列者を見ると、そこには王妃様の姿が。平民に扮して見に来てくれたのだろう。アダム様も王妃様に気がついた様で、嬉しそうに笑っている。
この10年、大変な事も多かった。でも、これからはアダム様とこの地で幸せな家庭を築いて行こう。
教会の外に出ると、そこには雲一つない美しい空が広がっていた。さらに、温かい風が私の頬を撫でる。お父様、お母様、お兄様、お姉様、私は幸せになります。皆の分まで必ず!真っ青な空を眺め、心の中でそっと呟いたフローラ。
今後ずっと訪れるであろう、アダムとの幸せな日々を夢見て…
おしまい
~あとがき~
これにて完結になります。
書き始めた時は、ハッピーエンドかバッドエンドかですごく迷いました。でも書いている途中で、感情移入してしまい、どうしても2人には幸せになって欲しくてハッピーエンドにしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【閲覧注意:以下バッドエンドの簡単な内容です】
ちなみにバッドエンドは、ドミスティナ王国に戻ってきたフローラ。家族が無性に恋しくなり、姉のお墓の前で自ら命を絶ちます。フローラを追って戻って来たアダムがフローラの亡骸を見つけ、絶望の中フローラの後を追うと言う内容でした。
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